無限回廊
電話が鳴った…。彼女からの電話だ……。何を話せばいいんだろう………。
「………もしもし。」
「もしもし、元気かな?この前はごめんね、久しぶりに逢わない?」
私と違って彼女の声は元気でイキイキとしていた。
「………別にいいけど逢って何するの?する事あるならいいけど、ないなら別に今度でもいいよ。」
私は何故か「今度」という言葉を使っていた。吹っ切れたいと思っていても、私の脳は、そうは思ってないみたいだ。
「とりあえず逢おうよ。私、あなたに逢いたいの。理由はそれじゃ駄目?」
私は彼女とこの先、どうなりたいんだろうか?
「わかった。いいよ、これから迎えに行けばいいんですかね?」
「うん。じゃあ、いつものところで待ってるね。」
私はとりあえず行ってみる事にした。もしかしたら、行けば答えがあるかもしれないからだ。何の希望も期待もせず私は向かった。
「久しぶりだね。元気してた?逢えなくて、私寂しかったよ。」
「うん…まぁそこそこ元気でやってます。」
今度は私が敬語になってしまう。
「この間は本当にごめんね………。私はあの後なんとかなったから心配しないでいいよ。とりあえず私の方は、また元通りになったからさ。色々ありがとうね」
この人は何を言ってるんだろう?自分の事はなんとかなったから心配しないでって言われても私には訳がわからない。私が聞きたいのはそんな事ではない…。
私の事はどうでもいいのであろうか?
「なんかさ、いつもと雰囲気違くない?きのせい?」
私はその言葉でプチンと頭の中の何かがが切れた。
「何なの?何様のつもり?あの時俺がどれだけ決心してお前の事一生守っていくつもりでいたかわかってんの?お前のために何もかも捨てて、必ず幸せにしてみようって、ゼロからスタートしようって思ってた俺の気持ちはどうでもいいわけなの?その事すらもう覚えてないわけ?ふざけんなよ!俺はお前の人形じゃないよ!」
私は完全に頭に血がのぼっている。錯乱している。でもそれが当然だと思った。
「怒るよね、そりゃ怒られても当然だね…。あなたは相当の覚悟して、こんな私なんかを受け入れてくれようとしていた。それなのに私は家庭に戻った…。ごめんね…、ごめんさい…。あなたの想いを裏切ってしまって本当にごめんさい…」
そう言うと、彼女はいつもみたいにまた泣き出した…。もう何度目だろう…この茶番劇は。もう涙なんかに騙されない!私はある覚悟を決めた。
「別れよう。うちら、このままじゃどうしようもないよ。終わりにしよ。今までありがとう…本当に姫ちゃんといれる時間は楽しかったよ!ありがとう…。」
私は自ら別れの言葉を彼女に言い放った。
これで終わりだ…。これでいいんだ…。もう辛い思いはしたくない。
だが彼女の返答は……、私の想像とちがうものが返ってくる事になる。
「嫌だ。別れたくないよ。私にはあなたが必要なの。今までの事は全部謝るからこの間の事は、どうか許してください。お願いします。あなたを本当に失いたくないの!まだ好きなの!離れたくないよ!お願い…」
彼女は瞳いっぱいに涙をためて必死に想いを私に語りかけてきた。
私は………………………。彼女を許した…。自分でもよくわからないが、彼女を許してしまった…………。何故なんだろう…。その時の私は彼女を許せてしまうのだ。客観的にみると自分が本当に馬鹿に思えてくる。
「わかった。わかったから…また付き合う事にする。 だから泣くなよ。」
「本当にあなたの事、裏切ってごめんさい。またいままで通り、私とお付き合いしてください。」
「…うん 。いいよ!。これからまたお互い頑張っていこう!」
「そう言ってくれると思ってた。ありがとう!私はあなた以外は駄目なの。あなたなら私を幸せにしてくれる。また、エッチしてくれるでしょ?」
「もちろん!今すぐにでもしたいぐらいだよ。本音を言うと、俺もまだ大好きで仕方ないんだ。」
こうして、別れられるはずだった彼女との恋愛が、また息を吹き返す事になったのである。なんであんな事までされたのに別れられないのであろうか?それは未だに謎だ。ただ言えるのは、手に入らないからこそ欲しくてたまらなくなり、どんな事をされても最終的には許してしまうのだ。
私は、そんな女々しくて弱い自分が大嫌いだ。誰でもいい……………誰か私を救ってください……………。
色々とあったが、彼女との二年目、三年目は終わりをつげようとしていた。
そして…