海にて…
そうだ!確か車のトランクに夜中に行為をいつでも出来るようにと毛布を二枚積んでいた事を思い出した。
「姫ちゃん、ちょっと待っててね。いいもの取って来るから。」
私は急いで砂浜の上を走り、車まで毛布を取りに行った。想像以上に夜の海辺は寒く、このままではとてもじゃないが座ってゆっくり話しなど出来ない。私は平気だが、もし彼女が風邪でもひいたら大変な事だ。
急いで戻ると彼女は、やはり寒いみたいでブルブル震えながら立っていた。
「おまたせ。毛布あるの忘れてたよ。でも良かったよつんどいて。」
一枚を砂浜の上に敷いて、もう一枚は彼女を包みこむように掛けてあげる事にした。
「あったかい!ありがとう。でも、なんで毛布なんて持ってたの?前からあったっの?」
「実はさ、シート倒しただけじゃ、アレするとき痛いかなと前々から思ってて、毛布をシーツ代わりにすれば姫ちゃんも喜ぶかなと思って、今度する時用にと積んでたの。でも意外な形で役立って良かった。」
「もう、本当にエッチなんだから。でもそういうところ、好きだよ。常に私に気使ってくれてるんだね。ホント優しい………私、嬉しいよ……。」
また彼女の目がウルウルしてきた。しかし今回の涙はいつもと違う涙っぽく感じる。ホントに嬉しくて泣いてるみたいだ。その事が私の心に伝わってきた。
「あなたは寒くないの?一緒にくるまろう。寒くなくても一緒にくるまって。」
なんだか今の彼女は、いつもより小さく、そして弱々しささえ感じる。今日は本当につらかったんだろう…
私達は寄り添い、毛布に包まって静かに流れる波音に耳を傾けていた。ザザー…ザザー…と、心地好い波音が私達を包み込んだ……。
夜の砂浜に座って、暗闇の中を静かに流れる波、そして海辺を優しい光で照らす月、その回りを時に強く、時に弱く、様々な輝きを見せてくれる星達。その場所は、まるで私達二人だけの空間かと想えてしまう程、素晴らしい世界だった。何もかも、時間すら忘れてしまう。
そしてそれは彼女にも何かしら影響が出たのか、ここまで頑なに話そうとしなかった今日の出来事をついに私に話してきた………。