友人
あれからは少しずつだが、お互いの関係も良好になりもう少しで三年目の記念日を迎えようとしていた私達に、ある出来事が起こる。
これは7月のあくる日の出来事だ。いつもの様に仕事を終わらせ、彼女と買い物に出掛け、キスしてお互い帰路に着く。そして一日が終わってくかの様に思えたその日の晩。彼女から、いつもの様にメールが届いた。
[まだ起きてる?]
[起きてるよ〜メール待ってたよ。]
[お願い、すぐ迎えに来て。もうそっち向かって歩いてるから。]
いつものワガママ病だろうか…私の返信の前に行動をしてしまってる。まぁいつもの事かと思い、私は車を出す。
[了解、すぐ行くね!]
私が車を出して数分後、彼女が…何故か走って向かって来る。どういう事だ!?私は悪い予感がしていた…
「どうしたの?走ってくるなんてさ。何かやらかしたの?とりあえず乗って。」
「とにかくすぐ出して!早く!早く!」
私は訳もわからず車を出した。
「そこ右行って!あそこで止まって!」
慌ただしく彼女は言った。着いたのは近くの駐車場。それと同時に助手席の彼女は身を隠した。何事だ?
彼女は小声で、
「今、旦那に追われてたの。だから助けて欲しくて。多分そこいらへんに、まだ居ると思うの。バット持ってるから、すぐわかると思う。お願い、助けて!」
!!!なんという事だ…。よくよく彼女をよく見ると髪は乱れて、顔が少し赤く腫れている。旦那にやられたにちがいない。私は怒り狂いそうだった。その時だ、車の斜め方向にバットをもった男が歩いている。あいつが彼女の事を。男は周りをキョロキョロと伺っていた。
「今そこの道通ってるからまだ隠れててね。。俺がいるから大丈夫だから!」
男はしばらく探していたが諦めたのか帰って行ったみたいである。
「行ったよ…姫ちゃん家の方に向かって帰って行ったよ。大丈夫?怪我してるじゃん!何があったの!?」
「海…海、連れてって。」
私はそれ以上その話題には触れなかった…彼女から言ってくれるのを待つ事にした。
「よーし!海だね!連れてくよ。すぐ出発しよう!」
私達は海に向かって走り出した。…明日休みで良かった…心の中でそう思った。しかし、私の車には当時まだナビというものがなく、私は海に行った事がなかった…。どうしよう…。そんな時、ある一人の人物が私の頭をよぎった!そうだ!あの人ならきっと力になってくれる。
「姫、俺さ、海行った事ないから友人に力借りていいかな?電話で道聞きながらでもいい?どうしても海に連れてってあげたいの。」
「うん。大丈夫。私も海見たい…」
「よし!決まり。電話繋がってくださいよぉ。」
[もしもし、夜分遅くすいません。力貸して頂けませんか?海に行きたいんですけど道がわからなくて…]
その人は快く私の力になってくれた。私の年上の友人で、ずば抜けて道の知識が物凄い。ここではSさんと呼ばせてもらいます。
その後、Sさんの驚くべき記憶力で最初から最後までの道を的確に教えて頂いた私達は海に着く事が出来た。
「Sさん、今無事に海に到着できました。本当に感謝しています!こんな夜遅くに無理言って、すいませんでした。」
「全然大丈夫だよ。とにかく無事ついて良かったよ。彼女さんの事、うまくやれよ!なんかあったら何時でもいいから電話してきな。それじゃ。」
なんとも有り難い。Sさんは数少ない私達の関係を知っている人で、アドバイスをしてもらったりと、何かとお世話になっている大変貴重な年上の友人である。そのSさんの彼女のYさんも同等で、私が悩んでる時などに親身になって考えてくれる、とても貴重な存在である。この二人とは今でも信頼できる相談相手で、現在も私の支えになってくれてる………。人の優しさというのは、他に何も変える事が出来ない凄い宝物である。私はこの二人にそれを教わったと思っている。
「さぁ、着いたね!っ、寒いね。夜の海は。姫ちゃん寒さ大丈夫?」
「寒い…凄く寒いけど、あなたが隣にいれば大丈夫だよ。」
正直嬉しかった………。
なんだか今日の彼女は、いつもと違う雰囲気である。どことなく遠くを見ているようだ。私はある事を思いだした。