彼女の答え
「重くない?大丈夫?」
「全然!軽い軽い。今日は凄く楽しかったね。また来たいなぁ。………あのさ、俺、聞きたい事あるんだけど?」
「何、何?」
「ずばり、なんで急にリスク背負ってこういう普通のデートとかするようになったの?なんだか俺、凄いビックリしちゃってさ。」
「ああ、その事ね…。」
彼女は少し間をとって話しだした。
「あのね、私も考えたんだ。もしね、これが逆の立場だったらどうかな?ってさ。そう考えたら私だって何処か行きたいと思うだろうし、そうじゃなきゃ私は嫌だし。私はワガママだからあんな風に思わせてしまったけど多分普通の人だったらそうはしないと思ったの。旦那に嘘ついてさ、旅行でも遊びでも何処でもいけるじゃん。他の不倫してる人なら、そういう事してると思う……でもね、あなたは私が一回嫌だって言ったら、その後そういう事全く言わなくなったし、それでも私の前から居なくならないで、前と変わらずずっと傍に居てくれた。その事考えたら申し訳なくって、私のせいでツライ思いさせてるのに何も言わずに……。このままじゃ、あなたが居なくなってしまいそうだった。だから、私が変わらなきゃって思ったの。それで短い時間かもしれないけど買い物とかに付き合ってもらったりしたの。そのうち人目も思ってた程気にならないし、普通のデートもいいかなって思えてきた。だから誘ってみたんだ。恩返しじゃないけど、多分あなたは普通のデートもしたいのに、私の
ために我慢してる事に気付いたからさ。今までごめんね。こんなワガママで自分勝手な私だけどいいの?私じゃなければ、もっともっと楽しいデートも出来るんだよ?」
珍しく彼女は真剣に話していた。自信がないのだろうか、どことなくか細い声だった。
「ふーん。成る程ね。でも、別にこれからもしたい様にやればいいんじゃない。俺はどんな形であれ、姫と一緒に居られるならそれだけで満足だよ。だから、無理してデートとかするならしない方がいいんじゃない?俺と一緒にいる時ぐらいストレスとか貯めさせたくないしね。俺の役目は一緒にいる時だけでも日常から解放させてあげて、嫌な事忘れさせる役目だもん。」
私達は車に着いた。
「大事な事言ってなかったね。俺は姫ちゃんのワガママな所とか、生意気な所とかさ、全部知ってて好きなんだよ。顔も性格もぜーんぶ好きなの。だからさ、俺の事は考えなくていいから素直に全身でぶつかってきなよ。俺が全部受け止めてあげるよ!」
「こんな人……今まで初めてだよ……多分これから先も現れない。………なんでそんなに優しいの?……」
さっきも泣いたのに、また大泣きしてしまっている。
「わかんないの?じゃあわかるまで宿題ね。ちなみに答えは超シンプルで簡単だよ。」
さすがに今回は私は泣かなかった。
「意地悪…」
「え?何?俺、優しいんじゃなかったっけ?」
「答えはわかってるもん…だから意地悪だよ。」
答えは凄く簡単だ。私がただ単純に誰よりも姫の事が好きなだけ。ただそれを私から言うのではなく彼女の口から言わせたかったから少し意地悪してみたくなったのである。
「お!答えわかってる感じだね。さぁどうぞ!」
「グスンっ…だからぁ、あれでしょ、私の事が大好きだからなんでしょ!」
「せいか〜い!良く出来ました〜!そうだよ。大好きだから。今それ以上の答えいる?俺が好きなんだからそれでいいって事だよ」
彼女は泣きながら恥ずかしそうな顔をしている。私はちょっと、してやったりで楽しんでいた。
「恥ずかしい?ごめんね。でも言って欲しかったからさ。こんな俺嫌いかな?」
「好きだよ!私も大好き!あーーー恥ずかしい…でも、もうしばらくは言わないからね!馬鹿ぁ」
「そういう所も可愛いくて好きだよ。」
私はそっと頬にキスした。
「よし!飯行こう!飯!」
私は車を走らせた。今日の事は多分忘れないな…そう思っていたから現在も鮮明に心に刻まれていた。