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運命力ゼロの悪役令嬢  作者: 黒米
第6章 王立ルミナス学院 5年目

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68/75

8. 悪い噂

前回のあらすじ

・魔法の代償

・あんた誰やねん

夏の陽射しが、王立ルミナス学院の白い石壁を淡く照らしていた。


中庭では、濃い緑の木々が風に揺れ、遠くで蝉の声が響いている。

季節は巡り、クラリスは、静かな焦燥を胸に抱えたまま過ごしていた。


図書館の窓辺に座るクラリスの指先が、分厚い本のページをめくる。

革張りの背表紙は古びていて、何度も読み返した跡が残っている。


だが、そこに記された言葉は、何度読んでも同じだった。


「制度の基盤を築いた英雄」「王国を守った剣」――

どれも、授業で習ったことと変わらない。


肝心なこと――剣士が語った「魔法」「代償」「英雄の失踪」については、影も形もない。

クラリスは、ページを閉じ、深く息を吐いた。


(……やっぱり、何も出てこない)

胸の奥で、もどかしさが渦を巻く。


この話を、セレナやロジーナ、師匠に相談したい気持ちはある。

けれど――内容が内容なだけに、軽々しく口にできるものではない。

そもそも荒唐無稽な話過ぎて、信じてもらえないだろう。


窓の外では、夏の光がきらめき、青空がどこまでも広がっている。


「魔法、英雄、代償……どれも霧の中。でも――必ず突き止める」

小さな声が、静かな図書館に溶けて消える。


夏の光が差し込む窓辺で、銀髪が淡く揺れる。

(諦めない。絶対に)


*


生徒会室には、夏の光が斜めに差し込む。

円形の会議卓の上に整然と並べられた資料を淡く照らしていた。


窓の外では、青空に白い雲が浮かび、遠くで蝉の声が響いている。

クラリスは、副会長として定位置に座り、銀髪を整えながら資料に目を落とした。


「――来年は、三年に一度の学院祭だ」

会議卓の中央に立つレオニスの声が、静かな空気を切り裂いた。

「王族や貴族、学院OB、そして王都の人々が集まる。学院の威信を示す場になるだろう」

レオニスの言葉に、室内の空気がわずかに引き締まる。


ミレーユが、涼しい笑みを浮かべながら口を開いた。

「でも、最近王都で噂になっていること、知ってる?――治安が少し悪くなっているって話」

その声は軽やかだが、含みを帯びていた。


「確かに聞いた」

カイが資料をめくりながら頷く。

「制度の信頼を揺るがすような噂も出始めている。学院祭は、その不安を払拭する場にすべきだ」


「じゃあ、派手な模擬戦でもやるか?」

ルークが腕を組み、にやりと笑う。

「剣を振るって見せれば、みんな安心するだろ」


「それも悪くないけど――もっと分かりやすい方法があるわ」

ミレーユが、唇に指を添え、意味深な笑みを浮かべる。

「学院祭の場で、運命力の測定を公開でやるのよ。制度の正しさを、数字で示すの」

一瞬、室内に沈黙が落ちた。


だが、次の瞬間――


「面白い」

「確かに効果的だ」

賛同の声が次々と上がる。


クラリスは、静かにその言葉を聞いていた。

胸の奥で、別の思いが渦を巻く。

(運命力測定……装置を近くで見られる。王宮の管理下にある装置を、学院祭なら――)


「異論はないな?」

レオニスの視線が、会議卓を一巡する。


クラリスは、わずかに微笑み、頷いた。

「ありません」

その声は、落ち着いていたが、胸の奥には小さな炎が灯っていた。

(この機会を逃すわけにはいかない)


「では、各自準備は少しずつ進めていけ。今日はここまでだ」

レオニスの言葉で、会議は締めくくられた。


クラリスは、資料を閉じながら、心の奥で静かに決意を固めていた。

(学院祭まであと半年――必ず、装置の秘密を掴む)


*


生徒会室の重厚な扉が静かに閉じられた。


会議を終えたクラリスは、資料を抱えたまま、長い回廊をゆっくりと歩いていた。

先ほどの会議で耳にした言葉が脳裏をよぎる。

「治安が悪くなっている」――その噂。


(最近、学業と生徒会で忙しくて、王都を見ていなかったな)

学院の外の世界――制度がどう受け止められているのか、王都の空気を肌で感じたい。


クラリスは、足を止め、窓辺に視線を向けた。

青空の下、遠くに王都の塔が霞んで見える。


(セレナやロジーナを誘うのは……危ないかもしれない)

二人を危険にさらすわけにはいかない。

なら――

クラリスの唇に、わずかな笑みが浮かんだ。


(カイとルークなら、頼りになる)

(学院祭の準備もあるけれど……今のうちに、王都を見ておきたい)


クラリスは、静かに歩き出す。

石畳に響く足音が、決意のリズムを刻んでいた。


(二人なら、きっと断らない――はず)

夏の光が、銀髪を淡く揺らしながら、クラリスの背を押していた。

読んでくださりありがとうございます。


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