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運命力ゼロの悪役令嬢  作者: 黒米
第6章 王立ルミナス学院 5年目

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65/75

5. 重大な秘密

前回のあらすじ

・英雄について聞きに来た

・君は英雄の剣

「英雄の剣を…継ぎし者…?」

湿った土の匂いが漂う森の奥で、クラリスは剣を構えたまま立ち尽くしていた。


目の前には、獣を一撃で屠った謎の剣士。

その影は木漏れ日の隙間で揺れ、深い沈黙をまとっている。

鳥の声すら遠ざかり、森は異様な静けさに包まれていた。


剣士が、低く静かな声で口を開く。

「――いや、まずは場所を変えよう」

その声は冷徹でありながら、どこか重い決意を帯びていた。


クラリスは、わずかに眉をひそめる。

「……場所を変える?」

問いかける声は、緊張と警戒を含んでいた。


剣士は、クラリスの視線を受け止めることなく、背を向ける。

「ついてこい」

その言葉だけを残し、森の奥へと歩き出した。


クラリスは、剣を収め、深く息を吐く。

(……危険かもしれない。でも、ここで引き下がるわけにはいかない)

胸の奥で決意を固め、剣士の背を追う。


二人の足音が、湿った土を静かに踏みしめる。

木々の間を抜ける風が、冷たい囁きを運んでくる。


だが――言葉はない。


剣士は終始無言、クラリスも声をかけられないまま、ただ沈黙が二人を包んでいた。


*


やがて、森の奥に古びた屋敷が姿を現す。

苔むした壁、崩れかけた石畳、まるで時が止まったような空気。


クラリスは、胸の奥にざわめきを覚えながら、その扉を見つめた。

(……ここは、一体?)


剣士は、無言のまま屋敷の庭へと進み、古い木製のテーブルを指し示す。

「座れ」

その声は、冷たくも、避けられない力を帯びていた。


クラリスは、静かに頷き、椅子に腰を下ろす。


苔むした石畳と枯れかけた草花が、時の止まった空気を漂わせている。

胸の鼓動が、わずかに速くなる。

(この沈黙の先に、何が待っているの?)


剣士は、対面に座り、深紅のマントを整えると、無言のまま視線を落とした。

その沈黙は、森よりも重く、冷たい。


クラリスは、耐えきれず、口を開いた。

「……ここは、一体?」

声はわずかに震えていたが、瞳には決意が宿っていた。


剣士は、ゆっくりと顔を上げる。

その瞳は、深い影を湛えながらも、どこか遠い記憶を映していた。

「――ここは、かつて英雄と呼ばれた者が暮らしていた場所だ」


クラリスの胸に、鋭いざわめきが走る。

「英雄……」


その言葉を、静かに繰り返す。

「私……その英雄について、知りたくて来ました」


剣士は、しばらくクラリスを見つめ、低く答えた。

「知っていることは、あまりない。だが――他の者よりは、覚えていることが多いはずだ」


クラリスは、眉をひそめる。

「覚えている……?じゃあ、他の人も知っていたけど、今はもう忘れてしまったと?」

声には、戸惑いと焦りが混ざっていた。


剣士は、静かに頷く。

「ああ、おそらくそうだ」

その言葉は、重く、不可解な響きを帯びていた。


クラリスの胸に、冷たい疑問が広がる。

「どういうこと……?なぜ、そんなことが……」


剣士は、視線を庭の奥に向け、低く告げた。

「その疑問を解くには、まず――この世界に関する重大な秘密を知る必要がある」

その声は、まるで封印を解く呪文のように、空気を震わせた。


クラリスは、息を呑む。

「重大な秘密……?」


剣士は続ける。

「国王なら知っているかもしれない。だが、他は誰一人として知らないだろう」


クラリスの瞳が揺れる。

「なぜ……そんな秘密を、あなたは知っているの?」


剣士は、ゆっくりとクラリスを見つめ、低く答えた。

「――英雄から託されたからだ。その秘密は、あの人の一族に代々伝わるものだった」


クラリスは、言葉を飲み込み、胸の奥で何かが崩れる音を聞いた気がした。

(英雄の一族……代々伝わる秘密……)


「じゃあ、その秘密って……何?」

声は、わずかに震えていた。


剣士は、長い沈黙の後、ゆっくりと口を開いた。

その瞬間、庭の空気が張り詰め、世界の呼吸が止まったかのように感じられた。


「――かつて、この世界には……魔法が存在した」


読んでくださりありがとうございます。


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