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運命力ゼロの悪役令嬢  作者: 黒米
第3章 王立ルミナス学院 2年目

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9. 演習3日目 帰還

前回のあらすじ

・探索中に出くわした

・ここは任せて先に行け

・あなたはだれ?

朝霧がまだ森の地面を覆っている頃、クラリスはノクターンの背に乗り、ゆっくりと南の拠点へと戻っていた。


昨日の戦闘の傷はまだ癒えていないが、包帯の下にある痛みよりも、仲間の無事な姿を見たいという思いが勝っていた。


焚き火の跡が残る拠点に近づくと、ロジーナが最初にクラリスの姿に気づいた。

「クラリス様……!」


ロジーナは駆け寄り、涙をこらえながら笑顔を見せた。

「本当に……ご無事でよかった……!」


クラリスは馬から降り、ロジーナの手をそっと握る。

「心配かけてごめんなさい。でも、みんなが無事でいてくれて、私も安心したわ」


その後、トーマスが腕を組んだまま近づいてくる。

「……あんた、無茶しすぎだ。だが、見直したぜ。」

彼は照れくさそうに目を逸らす。


ナディアは、クラリスの包帯を見て眉をひそめながらも、明るく言った。

「クラリスさん、かっこよすぎ!でも、次は一人で無理しちゃだめだからね!」


エミールは資料を手にしながら、静かに言葉を添える。

「あなたの判断は、指揮官としての行動から外れていました。でも、賞賛されるべき行動です」


クラリスは、班員たちの言葉に胸が熱くなるのを感じながら、微笑んだ。

「ありがとう。みんなが無事でいてくれてよかったわ」


ノクターンが鼻を鳴らし、班員たちの輪の中にゆっくりと入ってくる。


ロジーナがノクターンのたてがみにそっと触れながら言う。

「あなたも……クラリス様を守ってくれたのね。ありがとう」


クラリスは、班員たちを見渡しながら、静かに言った。

「今日で演習は終わるけれど、私はこの班で過ごした時間を、ずっと誇りに思うわ」


その言葉に、誰もが頷いた。

そして、朝霧の中で第6班が一つになった瞬間だった。


*


フォルセの森の中央広場には、各班の生徒たちが続々と集まり始めていた。

演習最終日の集合地点――そこは、木々に囲まれた開けた場所で、学院の旗が掲げられている。


クラリスはノクターンの背に乗り、ゆっくりと広場へと歩みを進めた。

その姿を見つけた他班の生徒たちが、ざわめき始める。


「クラリス・ヴェルディア……無事だったんだ」

「昨日の獣の件、聞いた?一人で囮になったって……」

「制度の象徴って、ただのお飾りじゃなかったのかもな」


クラリスは、周囲の視線を感じながらも、表情を崩さずに馬を降りた。


第6班の仲間たちも後ろに続き、整列する。

そのとき、レオニスが歩み寄ってきた。

「無事でよかった。だが、無茶は禁物だ」

その声は柔らかかったが、瞳には冷静な光が宿っていた。


クラリスは一礼しながら答える。

「ご心配ありがとうございます、殿下。皆が無事でいられたことが何よりです」


ゼノ・ヴァルハルトは無言で頷き、クラリスの包帯に一瞬だけ視線を向けた。


ミレーユ・クローディアは腕を組みながら、少し皮肉めいた口調で言う。

「まるで英雄気取りね。でも、危険を顧みず逃げなかったのは……まあ、認めるわ」


ルーク・ファルマスは少し離れた場所から「無茶しすぎだろ」と呟いたが、どこか悔しそうな顔をしていた。


カイ・アストレアは静かに言葉を添える。

「制度の象徴としてだけでなく、指揮官としての資質も示した。見事です」


そのとき、学院の教官たちが到着し、演習の終了を告げる。


副学院長マティルダ・クローネが前に出て、厳格な口調で言う。

「これにて、王立ルミナス学院課外演習を終了とします。各班の行動記録は後日評価され、今後の指導方針に反映されます」


レイナ・ヴァルシュタインはクラリスのそばに立ち、静かに言った。

「よくやったわ。この経験を今後に活かしなさい」


クラリスは頷きながら、レイナの言葉を胸に刻んだ。


そして、生徒たちはそれぞれの馬車や騎乗に乗り込み、王都への帰路につく準備を始める。


クラリスはノクターンの背に再び乗り、振り返って広場を見渡した。

少しだけ、みんなから認められたような気がした。


そして、王都への帰路についた。


*


王都ルミナスの城門が見えてきた頃、クラリスはノクターンの背に揺られながら、いつもの街並みに目を細めていた。


演習地の静寂とは違い、王都の空気は活気に満ちている。

石畳の道、行き交う人々、遠くにそびえる王宮の塔――すべてが、彼女にとって“帰ってきた”という実感を与えていた。


学院の門が開かれると、馬車や騎乗の列がゆっくりと敷地内へと入っていく。


その中で、クラリスの姿を見つけた一人の少女が、制服の裾を翻しながら駆け出した。


「姉様っ!」

セレナだった。


銀髪をなびかせ、目に涙を浮かべながら、クラリスのもとへと走ってくる。


クラリスはすぐにノクターンから降り、両手を広げた。


セレナはその胸に飛び込み、しがみつくように抱きついた。

「姉様……怪我したって聞いて……でも、無事でよかった……!」


クラリスは、妹の背中をそっと撫でながら微笑んだ。

「ごめんなさい、心配かけたわ。」


セレナは顔を上げ、姉の包帯を見て、そっと手を添えた。

「痛くない……?無理してない?」


「大丈夫よ。ノクターンも一緒にいてくれたし、仲間も支えてくれたわ」

クラリスはノクターンのたてがみに手を添えながら言った。


ノクターンは、まるでセレナを安心させるように、優しく鼻を鳴らした。


その様子を見ていた周囲の生徒たちや教官たちも、どこか温かい目で二人を見守っていた。


ロジーナがそっと近づき、セレナに微笑みかける。

「セレナ様、クラリス様は本当にすごかったんですよ。それに、クラリス様は私たちを守ってくれたのです」


セレナはロジーナに向き直り、ぺこりと頭を下げた。

「ありがとうございます……姉様のこと、心配してくれて」


ロジーナは慌てて手を振る。

「いえいえ、私なんて……」


クラリスは照れくさそうに笑いながら、二人のやりとりを見守っていた。


そのとき、学院の鐘が鳴り響いた。


クラリスはセレナの手を取り、学院の門を見上げた。

「さあ、帰りましょう。私たちの場所へ」


セレナは頷き、姉の手をぎゅっと握り返した。


こうして、演習の三日間は幕を閉じた。


読んでくださりありがとうございます。


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