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運命力ゼロの悪役令嬢  作者: 黒米
第3章 王立ルミナス学院 2年目

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3. 責任と使命

前回のあらすじ

・特別選抜クラス

・セレナの自己紹介

・みんなでランチ

王立ルミナス学院・特別選抜クラスの教室。


朝の光が差し込む中、白金の装飾が施された机の上に、分厚い資料集が整然と並べられていた。


「本日の科目は『王国行政と政策設計』です」


教壇に立つのは、エリオ・シュタイン。

黒いローブに金の刺繍を施した制服を纏い、冷静な口調で教室を見渡す。


「この授業では、王国の制度運営、財政管理、教育政策、階級間調整など、内政の根幹を担う知識を学びます。皆さんは将来、王国の中枢に立つ者として、数字だけでなく“判断力”を持たねばなりません」


エリオは、教室の空気が整ったのを確認すると、ゆっくりと話を続けた。


「制度の根幹である“運命力理論”は、第三次北方戦争の混乱期に生まれました。

当時、偶然に見える生存と勝利の連続が、科学的に解析され、数値化された。

それが、運命力――個人の選択と成功の確率を示す指標です」


クラリスは、静かに筆記用具を整えながら耳を傾けた。

(制度の始まり……それは、混乱の中で勝利を求めた結果)


「王国はこの理論を制度に取り入れ、血統主義から選抜主義へと移行しました。

数字は秩序を生み、秩序は安定をもたらす。だが、制度は“運用”されることで真価を発揮せねばなりません」


エリオは黒板に文字を記す。


『運命力制度に基づく教育政策の設計案を立案せよ。対象は王都南区の低運者。目的は社会安定と人材育成。』


書かれた言葉に、クラリスは戸惑った

(低運者……制度の枠から外れた人たち。数字が全てのこの世界で、彼らは何を希望にして生きているのだろう。私が“選ばれた人”なら、彼らのために何ができるだろうか)


ルーク・ファルマスが腕を組みながら言った。

「そもそも、低運者どもに投資する意味あるのか?数字が低いってことは、得られる成果も低いってことだろ?」


クラリスは、静かに手を挙げた。

「制度は、あくまで指標だと思います。ですから、選ばれなかった者にも平等に“生きる価値”と“貢献の場”を与えることが、制度の安定につながると考えます」


ミレーユ・クローディアが微笑む。

「理想論ね。でも、そういう視点も必要かも。制度が冷たすぎると、反発も生まれるし」


そのとき、カイ・アストレアが静かに手を挙げた。

「制度が誰に対しても平等である必要はない。秩序とは、選ばれた者が導くものだ。それが王国の安定につながると私は思う」


クラリスは、彼の言葉に目を向けた。

(でもそれでは、あまりにも慈悲がなさすぎる)


レオニスが静かに口を開いた。

「君の視点は、制度の“顔”としては美しい。だが、王国はそれだけでは動かない。君が希望を語るなら、それを証明しなければいけない。結果が伴わなければ、君の言葉はただの飾りだ」


クラリスは、懐中時計の蓋をそっと開いた。

秒針の音が、静かに響いている。


「では、私は“結果”を出します。この制度の中で、どんな人にも平等に希望が持てることを示します」


エリオは満足げに頷いた。


「よろしい。では、次回までに各自の政策案を提出してください。特別選抜クラスの皆さんには、王宮への報告用として、実際の制度研究班に共有されます」


教室の空気は、静かに張り詰めていた。

そして、特別選抜クラスの授業は、静かに続いていった。


*


午後の鐘が鳴り、王立ルミナス学院の講堂には、2年生たちが整然と集まっていた。

高い天井に吊るされた銀の燭台が、冬の光を受けて静かに輝いている。


壇上には、学院長エルマー・グレイヴと副学院長マティルダ・クローネが並び、厳かな空気が漂っていた。


クラリスは、特別選抜クラスの一員として前列に座っていた。

隣にはレオニス、後方にはカイ、ミレーユ、ルーク、ゼノの姿も見える。


エルマーが一歩前に出ると、講堂が静まり返った。

「皆さん、今年度の課外演習について説明いたします」


彼の声は穏やかでありながら、重みを帯びていた。

「演習は、王都近郊の訓練区域にて、三日間にわたり実施されます。目的は、制度に基づく統率力・判断力・協調性の育成。皆さんには、模擬戦形式の演習を通じて、実践を体験していただきます」


ざわめきが広がる。


「模擬戦って、戦うの?」

「チーム分けみたいなことするの?」

「誰がリーダーやる?」


マティルダが前に出て、冷静な口調で続けた。

「特別選抜クラスの皆さんには、各班の指揮官役を務めていただきます。あなた方は制度の中核を担う者として、他の生徒を導く立場にあります。選ばれたものとしての役割を果たす、それが王国の伝統です。演習では、資源管理、地域防衛、遭遇戦対応、そして班の士気維持が求められます」


クラリスは、思わず背筋を伸ばした。

(選ばれた者として、責任を果たす。それが、私の役目)


マティルダが資料を掲げる。

「演習では、班ごとに異なる課題が与えられます。一部には、レクリエーション要素も含まれます。夜間の焚き火交流、班対抗の旗取り競技などを通じて、協調性と柔軟な判断力を養っていただきます」


ルークが小声で呟く。

「焚き火?遊びかよ……」


ミレーユは微笑みながら言った。

「でも、そういう場でこそ人間性が出るのよ。制度の外側も、見ておかないとね」


エルマーが締めくくる。

「課外演習は、指揮官となる方たちだけでなく、全員準備を怠らず、責任を持って臨んでください」


そうして、課外演習の説明会は終了した。生徒たちは胸に期待と不安を抱きながら、講堂を後にするのであった



読んでくださりありがとうございます。


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