表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
運命力ゼロの悪役令嬢  作者: 黒米
第1部 ■■■■■■■ 第1章 運命
2/10

2. 運命に愛された少女

前回のあらすじ

・『運命力』発表。

・街ざわざわ

・王族ひそひそ

・クラリスわかんない

・いざ、測定へ!

ヴェルディア邸の朝は、いつもより静かだった。


銀の燭台にはまだ火が灯されておらず、窓から差し込む光が食卓を淡く照らしていた。


クラリスは鏡の前に立ち、銀髪を丁寧に編み込んでいた。傍には、彼女がいつも大切にしている懐中時計が留められている。


時計の針が動く音が、微かに響いていた。


朝食をとるために食卓に向かうと家族が揃っていた。

父ヴァルターは、クラリスを見つめながら言った。

「今日は我が一族にとって、重要な日になる。」

その声には誇りと期待が滲んでいた。


リヴィアは微笑みながらも、どこか不安げだった。

「緊張しなくていいのよ。あなたはあなた。数値がどうであれ、それは変わらないわ」


だが、その言葉がクラリスに届いているかは分からなかった。


セレナは、明るい声で言った。

「姉様、きっとすっごい数字が出るよ」


無邪気な妹だなと思いながら、朝食をすました。


*


玄関前には、黒塗りの馬車が待っていた。

王都ルミナスの紋章が刻まれた扉が、朝の光を受けて鈍く輝いている。


ヴァルターとクラリスが馬車に乗り込む前に、クラリスは家族を振り返った。


母は静かに手を振り、妹は少しだけ唇を噛んでいた。


馬車が動き出す。


しばらくすると窓の外には、王都の街並みが広がっていた。


石畳の通り、開店準備をする店主たち、広場の掲示板には昨日の講演の見出しが貼られている。


「運命力理論、王国制度に導入か」

「本日、一部貴族が試験的に測定か」

「低運者は未来を選べるのか?」

「誰でも簡単!運命力の鍛え方」


クラリスは窓の外を見つめながら、遠くにそびえる王立ルミナス学院の塔を見つけた。その塔は、まるで運命そのもののように、空高く、そびえたっていた。


馬車の中は静かだった。静かに、確実に進んでいった。


*


王都ルミナスの中心にそびえる王立ルミナス学院。


その石造りの塔の前に、クラリスを乗せた馬車が静かに停まった。朝の光が塔の尖端に反射し、空気は張り詰めていた。


玄関前には、測定官と技術者たちが待機していた。

黒衣に銀の紋章をつけた男が、無言でクラリスに一礼する。


父ヴァルターが先に降り、クラリスの手を取って馬車から導いた。


「緊張することはない。お前は私の娘だ。」

父の声には誇りと確信が滲んでいた。


アカデミーの内部は静かだった。廊下の壁には脳波グラフと量子場の解析図が並び、空気は冷たく、無機質だった。


クラリスは測定室へと案内される。その部屋の中央には、球体型の測定装置が鎮座していた。


淡い光を放つその装置の前に、白髪を後ろに束ねた男が立っていた。


Dr.エルンスト・ヴァルム。運命力理論の提唱者であり、王族直属の科学顧問。


「ヴェルディア家の娘か」

ヴァルムはクラリスを一瞥し、無表情のまま装置に視線を戻した。


「すぐに終わる。座りなさい」

クラリスは椅子に座り、装置の中心に頭を預けた。銀髪が光に照らされ、淡く揺れる。


技術官が淡々と準備を始める。


「脳波安定。量子揺らぎ、同期開始」


無機質な声が響く。


装置が起動すると、空間に光の波が広がった。脳波と量子場が共鳴し、空気が震える。

数秒の沈黙の後、装置の上部に数値が浮かび上がる。


「運命力:94」


室内の空気が一瞬で変わった。助手がメモを取り始め、技術官がざわめく。


「94…王族は95以上でしたが、これは王族並の数値です」

「ここまでとは…」


父ヴァルターは目を見開き、クラリスの肩に手を置いた。

「見たか。やはりお前は私の自慢の娘だ」


ヴァルムは一歩前に出て、数値を見つめた。

「興味深い。ただの貴族でここまで高い数値とは。それになかなか面白い波形だな」

クラリスは周りの反応にただ呆気に取られていた。


*


その頃、測定室の上階では、速報が通信局に送られていた。

「速報:クラリス・ヴェルディア嬢、運命力94を記録」


クラリスの名前は、瞬く間に王都を駆け巡った。

読んでくださりありがとうございます。

第3話は9/11(木)6時に更新予定です。


また、この作品はカクヨムでも投稿しています。

そちらでも見ていただけると投稿の励みになります。

どうぞよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ