表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
運命力ゼロの悪役令嬢  作者: 黒米
第2章 王立ルミナス学院 1年目

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/62

12. 試験本番

前回のあらすじ

・先生、剣を教えて

・ノクターンは優秀

冬の気配が王立ルミナス学院に静かに忍び寄っていた。

朝の空気は冷たく澄み渡り、校舎の窓にはうっすらと霜が降りている。


クラリス・ヴェルディアは、寮の個室で制服の襟を整えながら鏡の前に立っていた。

「今日から後期試験……」


あれから、クラリスは毎日剣を握り、放課後は欠かさずノクターンに会いに行っていた。学力試験の科目についても、前回よりも良い結果がとるために、毎晩遅くまで勉強をしていた。


その瞳は、春の入学式の頃よりもずっと強く、そして静かに燃えていた。


*


食堂では、試験前の緊張が漂っていた。


生徒たちは静かに朝食をとりながら、ノートを見返したり、友人と小声で確認し合ったりしている。


クラリスは、ロジーナ・エルスと向かい合って席に座っていた。

ロジーナはパンをちぎりながら、少し不安げな顔をしていた。

「クラリス様……今回、実技もあるんですよね。剣術、馬術、サバイバル術……」


「ええ。でも、準備はしてきたわ。あなたも弓術、頑張っていたじゃない」

クラリスは微笑みながら言った。


ロジーナは少しだけ笑った。

「はい。クラリス様のおかげです。学力試験の科目も、前よりは自信あります」


*


学力試験は1日目、2日目に分かれて行われる。

教室には、試験官が静かに用紙を配っている。

クラリスは、鉛筆を並べ、深呼吸をひとつして、試験開始の合図を待った。

「では、始めてください」


*


1日目 王国史。

クラリスは、レイモンド・カスティールの名を記した問題に目を留めた。

(制度の始まり……英雄の名は、今も語られ続けている)


運命力理論。

「数値は絶対か?」という問いに、クラリスは迷わず答えた。

(絶対ではない。人の意志が、数字を超えることもある)


2日目 論理的思考。

「制度における公平性とは何か」

クラリスは、制度の限界と可能性を冷静に分析した。


一般教養。

語彙、計算、歴史的文献の読解――すべて、彼女の努力の成果が表れていた。


*


3日目は、実技試験。


まずは剣術。


クラリスは、訓練用の軽装に着替え、演習場に立った。

演習場に集まると、レイナ教官は前に出てきた。

「今回のテストは、1人ずつ私と模擬戦を行ってもらう。10秒間、私の攻撃を防ぎきれば、90点。また、反撃して、私に一太刀浴びせることができれば、100点とする。」


生徒は、皆驚きの表情をしていたが、ゼノだけは微かに笑っていた。


「さあ、準備のできたものから、かかってきなさい。」

そうレイナ教官に言われ、ゼノ一人だけ前に出る。


木剣を構え、互いに礼をして、試合が始まった。


先にレイナが動き、ゼノがそれを防ぐ形となった。

それはクラリスが放課後に見た、あの動きだった。


対するゼノはお手本のような守りの型で、それを防ぐ。

そのまま何度か打ち合い、残り時間がわずかとなったとき、ゼノが動く。


その動きはおそらく、王国騎士団が使う“攻めの型”なのだろうとクラリスは感じた。


そして、ゼノの剣がレイナに届きかけたとき、時間切れとなった。


両者はまた向かい合い、互いに礼をして、試合が終わった。


「いい動きだ。私の攻撃をしのぎ、もう少しで一太刀入るところだった。ゼノ・ヴァルハルト、お前は98点だ」

レイナがそういうと、生徒はざわついた。


「次の者、前に出ろ」

そう言われ、誰もがためらう中、クラリスが前に出る。


そして、両者礼をし、剣を構え、試合が始まる。


レイナがクラリスとの間合いを詰めた。

なんとか最初の攻撃をしのぐ。息をする間もなく、次々にレイナの剣がクラリスに迫る。


(放課後に剣を見てもらっていたけど、打ち合ってはくれなかった。それに、見ていた時よりも、実際に間近で見るほうが何倍も速い。それに…)

クラリスは思考をめぐらす。


(結局、先生は授業で習ったことしか教えてくれなかったから、私には攻撃手段がない。でもだからこそ、やることははっきりしてる。10秒は耐えきってみせる。)


そして、クラリスにとって、とても長い10秒が経過した。

クラリスは息を整え、レイナに向かい合い、礼をした。


「見事だ、クラリス・ヴェルディア。数カ月前に初めて剣を握ったとは思えないほどの上達だ。90点だ。」

レイナの言葉に、その場にいた生徒たちが歓声をあげた。ゼノは少し驚いたような表情をしていた。


クラリスは達成感に満ちた表情をしながら、クラスの輪に入っていった。


「見事だ」

レイナが静かに頷いた。


*


次は馬術。

クラリスは、ノクターンの前に立ち、そっと手を伸ばした。

「今日もよろしくね」


ノクターンは自信満々に鼻を鳴らし、クラリスの手に頬を寄せた。


障害物走。


クラリスは、ノクターンと息を合わせ、見事にコースを走り抜けた。


観覧席では、教官たちが驚きの声を漏らしていた。

「気性の荒いノクターンを、ここまで手懐けるとは……」


*


最後はサバイバル術。


クラリスは、ロジーナと同じグループになった。


課題は「負傷者を抱えた状態で、山岳地帯から脱出する方法を選べ」


クラリスは、冷静に地図を確認し、最短かつ安全なルートを提案した。

ロジーナは、彼女の判断に頷いた。


*


こうして、クラリスの1年目の後期試験は終了した。

寮に帰ったクラリスは、確かな手ごたえと少しだけ周りに認めてもらえたような気がして、満足した表情で気絶するようにベットで横になった。


読んでくださりありがとうございます。


もし続きが気になると思っていただけたら、ブックマークや評価で応援していただけると励みになります!


また、この小説はカクヨム、アルファポリスでも投稿しています。

そちらでも見ていただけると投稿の励みになります。

どうぞよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ