十九章 †混ざりし気配†
† † †
ニント村中央部・ニント村総合病院。
あくまでこの田舎村の中ではだが最も大きな病院の、重症患者用の高度治療室。
そのベッドの上で、カガリの弟であるレイジ・スパイラルは目を覚ました。
「先生!スパイラルさんが目を覚まされました!」
看護師の女性が叫ぶ。
「おお!やはり流石の回復力だ……!あの傷から意識を取り戻すとは……!」
眼鏡を掛けた外科医の男性が駆けつけ、レイジの元へ歩み寄る。
「スパイラルさん、分かりますか?何本に見えますか?」
と人差し指と中指を立てた手をレイジの眼前に差し出す。
「……二本」
レイジは虚ろな目で答え、周囲を見回す。
「ここは……」
「ニント村総合病院です。ウートゥラーで魔族と戦って、カガリさんとともにこの村まで飛ばされ──」
「カガリ……カガリは無事なんですか!?」
カガリの名を聞いた途端にレイジは目に光を宿し、外科医の肩を掴んだ。
「お、落ち着いて。無事ですよ。あなたのお姉さんなら三日前に目を覚まして、今は軍の元でリハビリを行っているはずです」
それを聞いたレイジは、ほっと安堵の溜め息を溢す。
「そのことなんですが……」
と言いづらそうに、看護師が口を挟む。
「カガリさんから先ほど連絡があって、魔族を倒すために旅に出ると……」
「旅!?もう戦う気なのかあのバカ姉は!?……っ……」
つい感情が昂り怒声を上げたレイジは、その反動で眩暈を覚え頭を抱える。
外科医は素早くその肩を支えると、ゆっくり枕へ頭を下ろさせた。
「……医者としてはあまり言いたくありませんが、戦闘については問題なく行えるでしょう。昨日の時点で軍の施設で再検査が行われ、データがこちらにも送られたのですが……体に全く異常はなく、傷も完全に塞がっていました。驚異的な回復力です……」
外科医はレイジの背をさすりながら言うが。
「……違うんです……僕らは負けた……どうしようもない程、完膚なきまでに……!何の策もなくヤツらに挑んでも、勝てるわけがない……!」
自身の無力さをひしひしと感じシーツを握り締めながらレイジは言う。
しかし、カガリが一度負けた程度で諦めるような性格でないことも誰より理解している。
すでに歩み始めた姉を、自分では止めることなどできないことも。
全て分かった上で、悲痛な声で絞り出したのは。
「カガリ……死ぬな……!」
そんな願いの言葉だった。
† † †
天域・神の塔。
神とその神官ファイブルは"千里鏡"に下界の状況を映し出していた。
「ピレッタはあのガルンビカイナ人とともに各地に現れた魔獣を掃討しているようです。魔獣を操る魔人もすでに六人倒しています」
ファイブルは神に報告する。
「ふむぅ、最初に戦ったあのバレットという男が規格外過ぎただけで、やはりピレッタは大多数の魔人には負けないほどの実力を持っておるのう」
髭を触りながら、神はピレッタの才能を改めて高く評価する。
ファイブルは神が左手に携えた杖に視線を移し。
「神様、未だ天力は戻られませんか?」
心配そうに尋ねる。
「うむ……本来ならもう回復しておるはずじゃが……これでは増援が送れぬ……」
三日前の夜、神は下界への門を開き神兵隊を送り込んだ。
その際に神の杖に宿る天力を使い尽くし、次に門を開けるのは二十四時間後のはずだった──が、未だその力は戻っていないようだ。
「やはり……"創星神"様のご容態が関係しておるのかのう」
そう言って神は天上を見上げる。
「"神域"のミゼロル様からのご報告によれば、創星神様はもはや数ヶ月の命……回復どころか、日々そのお力は失われていっています……創星神様と繋がる神の杖の天力が戻らないのも道理でしょう……」
ファイブルも同じく天を見上げながら、悲哀に満ちた顔で言う。
「下界には魔族が溢れ、天域もこの有様……なんたる無力か……これではとても神などと名乗れたものではないわ……」
神は嘆くことしかできない自分を恥じるように、奥歯を噛み締めた。
「天域の結界もいつ破られるとも限りません。神様、天域は神兵隊に任せて神域へ避難を──」
「侮るなファイブル。儂が指揮を取らずしてどうする。万が一魔族が天域へ侵入したならば、儂が命を賭してでも食い止め神域を護らねばならん。そのために儂は神の塔におるのだ」
「しかし……かねてよりお伝えしていますが、私は貴方こそが次なる創星神に相応しいと思っております、グノウ神様。貴方にもし何かあったら、一体誰が世界を導くのです?」
ファイブルは仕える神を護りたい一心で僅かに語気を強めるが。
「他の五柱の誰かでも、大神官ミゼロルでも、儂の代わりはいくらでもおろう。まあ儂はおぬしでも良いと思っておるがのう、ファイブル」
神──もとい、グノウの考えは変わらない。
「ご冗談を……ですが、神様がそう仰るのであれば、私も最後までお供いたします」
「……すまぬな」
† † †
ヴァリアール王国北東部・ピグダス。
「はあああああっ!!」
降り頻る雨の中で、掛け声とともに純白の剣を振り下ろし、ピンク髪の天使・ピレッタは魔族を両断する。
その傍にはガルンビカイナ人のリオも立っていた。
二人の表情は暗い。
ピレッタは"神兵隊"の仲間であるロットたちを、リオは"オルデナ"の仲間であるマルテを、それぞれバレットに殺された。
あれから僅かに四日──その喪失感は未だ癒えるはずもない。
ピレッタ、リオ、イラルギの三人の活躍によってここピグダスを襲った魔族は倒され、辺り一面に残骸が散らばっているが、中には助けが間に合わず怪我を負った住民や、命を落とした住民の姿もあった。
「ふぅ……ここらの魔族は片付いたみたいだね。怪我はないかい二人とも」
傘のようなバリアを頭上に張って雨を凌ぎながら、イラルギが二人に優しく声を掛ける。
「うん、大丈夫。イラルギさんこそ平気?」
ピレッタは作り笑いを浮かべながら訊き返した。
「はは、僕は問題ないよ。ほとんど二人がやってくれたし。お陰で次の街へはエネルギー補給なしでも飛べそうだ」
「エネルギーはともかく、脳みそは大丈夫?その装備もUFOも、脳波で操るんでしょ?」
「UFOじゃなくて"星船"。大丈夫大丈夫。オジさん意外と体力あるの」
行動をともにし始めてから四日目、二人は程よく打ち解けていた。
当然、ガルンビカイナの装備についても情報を共有している。
頭に着けているヘッドホンのような機械が脳波を読み取り、全身の装甲へと命令を伝達する。
これを"星船"に繋ぐことでその操縦も可能になる。
ここまでならば便利に聞こえるが──いや、実際に使いこなせば便利に違いないのだが、僅かにでも雑念が混じれば脳波は容易く乱れ、装甲の機能の発動が遅れたり発動しなかったりするため、意外と扱いは難しいという。
ゆえにその補助として、ゴーグルによる視線での操作が可能となっており、リオのような未熟な戦士はこちらを主に使うことが多い。
「リオちゃんも平気?」
ピレッタは明るく振る舞いながらリオに声を掛けるが、こくり、と頷くだけで返事もせず、そのまま空き地に停泊させてある星船へと歩いていった。
リオとは未だまともに口も聞けず、戦っている時以外はずっと船内のカプセルで眠るマルテの前で項垂れている。余程リオにとってマルテの存在は大きかったのだろう。
──無理もないよ……マルテって人、幼馴染のリオちゃんにとっては弟みたいな存在だったんだもんね……。
ピレッタは装備のこと以外にも色々なことをイラルギから聞いたようだ。
リオと直接会話した回数は少ないものの、すでにリオのことも大切な仲間として認識していた。
二人がリオを心配そうに目で追っていると。
「た、助かりました!ありがとうございます……!」
ピレッタたちに命を救われたであろう若い女性が、ピレッタに駆け寄ってきた。
と。
「危ない!!」
何かを察知し、咄嗟にピレッタはその女性の前に立って剣を構える。
そして高速で飛んできた"何か"を斬って弾いた。
真っ二つになってピレッタの背後へ飛んでいったのは、何やら青いボールのようなものだ。
そしてそれを放ったであろう男がピレッタたちの前に姿を現した。
「わお、素晴らしい!よく反応しましたねえ!」
わざとらしく不敵な笑みを浮かべ拍手をする、道化師のような恰好の華奢な男。
茶髪を肩の辺りまで伸ばし、垂れ目の目尻には泣きボクロが二つ。そして額の左右からは、短めのツノが地面と平行に突き出している。
「私はクラウン。キミたちを殺しに参りました」
飄々と名乗る男をピレッタは警戒しつつ、背後に近付く気配にも気付く。
二つに裂いたはずのボールが、二匹の巨大な蜂のような姿に変形して尻の針を突き出し、後ろの女性へと突撃してきたのだ。
ピレッタは素早く後ろへ宙返りし、その蜂を斬り伏せた。
「へえ……それにも反応できるんですか。聞いてた以上……いや、あのバレットの腕を斬り落としたんです。これくらいできて当然ですか」
クラウンの笑みが僅かに崩れる。
「逃げて」
「は、はい!」
ピレッタに言われ、女性はすぐに退避する。
同じく周囲の生き残った住民たちもその場をそそくさと離れた。
「逃がすと思うのですか?」
クラウンは両手の指に八つのボールを挟んで取り出すと、一斉に放り投げる。
ボールは空中で様々な種類の魔族へと変化して住民を追う。
「"結界"」
その瞬間イラルギによってバリアが展開され、魔族たちはその中に閉じ込められた。
「まったく、僕らの前で民間人に手を出そうなんて、行儀が悪いねえ。まさかキミも七落閻ってヤツかい?」
イラルギが呆れた様子で尋ねる。
「ふふ……そうだと言ったら?」
「……嘘だね」
「はい?」
クラウンは首を傾げる。
「だってキミ、戦い方が気持ち悪いんだもん」
イラルギは侮蔑の目を向けながら言った。
「……は?」
「さっきもそうだ。拍手や言葉で気を引いて民間人狙いの不意打ち。強さに自信のある幹部がそんな無様なことするとは思えないよね。民間人を殺すことで動揺を誘って、僕らにも得意の不意打ちを仕掛けようって腹かな?」
逆撫でするようにイラルギは言葉を並べ。
対するクラウンは、口角を上げたままにしつつも眉間には皺を寄せ、額には青筋を浮かべていた。
「……どうやら正解みたいだねえ」
反応を見たイラルギは確信する。
「で?だから?私が幹部じゃなかったとして、勝てるとでも思ってるのですか?」
「思ってないさ。僕一人じゃあ、とてもね」
イラルギはニヤリと悪い笑みを浮かべ。
「"箱"」
「!」
突如現れた格子状の光の立方体がクラウンを囲んだ。
発動したのはリオだ。
「ナイス、リオちゃん。迂闊だねえクラウンとやら。こんな初歩的な挑発に乗って視界を狭めてくれるなんてさ」
「この……!」
その光の檻に触れようとした瞬間、クラウンの体に電撃が走る。
そして"箱"の中で痙攣するクラウンの前にピレッタが立ち、両手で剣を構える。
「あんたたちは人を傷付けすぎた。容赦はしない!」
精悍な顔で告げると同時に、その剣が輝く──それは光の反射などではなく、刀身そのものから放たれた光だ。
光に包まれた刀身にピレッタが手を当て、スウ、と剣先へ向かって滑らせるとともに、その光の刀身は倍以上の長さにまで伸びた。
「"全てを断ち切る聖剣"」
ピレッタは技名を口にするとともにそのまま剣を横に薙ぐ。
長い刀身は文字通り"箱"ごと、クラウンの体を上下に両断した。
「がはっ……!」
クラウンは目を見開いて口から真っ青な血液を吐き出し。
斬られた両腕がぼとりと落ち、続いて上半身がずり落ちる。
程なくして下半身も倒れ、その断面から溢れた血がアスファルトを青く染めていく。
剣の光が消え刀身が元の長さに戻ると、ピレッタは付着した青い血を振り落として鞘に収めた。
「あっはは!迂闊ですねえ!」
「!」
その声に素早く振り返ると、斬り落としたはずのクラウンの右腕がピレッタの剣を収めた鞘を掴んでいた。
そして強い力で鞘を掛けたベルトごと引きちぎり、剣を奪い取った。
「な、何コレ!?まだ生きてんの!?」
側から見ていたイラルギは気味悪がって身を竦ませる。
「死んでないんですよコレが!いやぁいつ見てもこの瞬間は面白い!」
クラウンは心底楽しそうに言うと、落ちた上半身と左手が浮き上がり、続いて下半身も立ち上がった。
バラバラになったパーツは青い血で糸のように繋がれている。
──あの青い血……妙だとは思ったけど、アレで体を操ってるのか……?あの状態で死なないとなると、十勇"シナン"の末裔って線もあるか……。
驚きつつも、イラルギは敵の性質を見極めるべくしっかりと観察する。
が。
「ごはっ!?」
次の瞬間、クラウンの浮き上がった上半身の腹部に、鋭いパンチが叩き込まれた。
「言ったよね、容赦はしないって」
叩き込んだ拳を引いてピレッタは言うと、さらに跳躍すると同時に片脚を高く上げ。
「な……!」
その首筋に向けて蹴り落とす。
地面に叩きつけられたクラウンは白目を剥いて再び血反吐をぶち撒ける。
「剣が無きゃ戦えないとでも思った?あんたの魔力が異常なのは気付いてた。魔人っていうより魔獣に近い気配……それも一つの体の内側に魔獣が何匹もいるような、気味が悪い感覚だよ」
言いながら奪われた剣を取り返すと、鞘から剣を抜きクラウンの頭に突きつける。
すると倒れたクラウンの眼球だけがぎょろりとピレッタの方を見て、表情を変えないまま。
「はははっ!流石です!そこまで見抜かれているとは、見事という他ありませんよ!」
口すら動かすことなくクラウンは喋り出した。
「ど、どうなってるのそれ……」
とイラルギはドン引きする。
「耳を貸す必要ないよイラルギさん。確かに魔獣の気配はあるけど、やっぱり根っこは魔人だ。頭を潰せば死ぬ!」
そう言ってピレッタはこめかみの辺りに突きつけた剣をそのまま突き刺した。
頭部を串刺しにされ、反射的にクラウンの体がどくんと跳ねる。
が。
「御名答っ!」
「!!」
それでもクラウンの声は止まらず、ピレッタも流石に身を固くした。
「君の言う通りです!これで僕は死ぬ……それは間違いありませんよ、おめでとうございます!ですが同時に、君はやってはいけないことをしてしまった」
「はあ……?」
「ふふ……最期に教えておいてあげましょう。"魔獣農場管理人"──それが魔獄での僕の役割でした。確かに幹部じゃあありませんが、重要な役割です。各地を侵攻している魔獣の多くは、僕が生み出したのですから!そして──」
その瞬間、クラウンの体の内側から肉を食い破りながら、不気味な一つ目の蛇のような魔族や、ホホジロザメに獣脚類の脚を生やしたかのような魔族、タンポポの花弁のように並んだ大量の牙を持つ四足歩行型の魔族など、明らかにクラウンの体内には収まるはずのない数十体の魔族が勢いよく飛び出した。
クラウンの肉体はまるで風船のように一瞬で爆散する。
「くっ!」
ピレッタは咄嗟に剣で身を守り、向かってくる魔族を弾いた。
「"結界"!」
とイラルギ、リオは直径数十メートルに及ぶ大きなドーム状の結界で魔族を取り囲み拡散を防ぐ。
「この子たちは僕の体内で飼い僕自身の魔力を餌にして育て上げた、特別製の魔獣たちです!いつしか僕の体もその影響で融合に近い状態になってしまいましたが……それでも脳だけは死守してきました……つまり!僕が死ねば制御を失い、目に映る全てを喰らい尽くす!さあさあ、精々足掻いて見せてください生き餌の皆さん!あっはははは──」
クラウンの高らかな笑い声は、出現したワニのような魔族に頭部の上半分を噛みちぎられたことでぷつりと途絶えた。
「くそっ、とんでもないもん残して逝ってくれちゃって!量が多すぎる!結界が保たないよ!」
イラルギは冷や汗をかきつつ憤慨する。
「くっ……!」
沈黙していたリオも思わず歯を食いしばりながら、ひび割れていく結界に手をかざし、その修復に意識を集中しているようだ。
結界の内側で蠢く魔族たちをピレッタは次々に斬り裂いていくものの、その一体一体が硬く巨大なため、剣一本で全てに対応するには限界があった。
「みんな逃げて!!私たちが食い止めてるうちに、全力でっ!!」
周囲の住民たちに聞こえるように、ピレッタは必死な声で叫ぶ。
無論クラウンが現れた時点で皆避難しているため、見える範囲にはほとんど人は残っていないのだが、それでも足りないと判断したのだろう。
見えなくなっても音が聞こえなくなってもまだ遠くへ逃げなければ、この魔族の群勢からは逃れられないと。
「く……ごめんっ……何も考えず私がトドメを刺したせいで……!」
「反省は後!今はコイツらに集中して!」
「うん……!」
ピレッタは頷くと、ふうっと深呼吸し。
「"全てを断ち切る聖剣"!」
巨大な魔族たちを斬るため、再び剣に光を纏わせて刀身を伸ばした。
「はあああああっ!!」
叫びながら、ライオンのような姿の魔族へ剣を振り下ろす。
頭から尻まで真っ二つに斬り裂かれた魔族の体が、左右に分かれて倒れる。
さらにピレッタは翼を羽ばたかせて巨大な蛇型魔族の背に飛び乗り、その上を駆け抜けながら素早く何度も斬りつけると、魔族は輪切りになって崩れ落ちた。
続けて前方の魔族を斬ろうと顔を上げた瞬間、横から獣脚類型魔族による尻尾の薙ぎ払いを受け、ピレッタは吹き飛ばされる。
「ぐっ!」
ビルの壁にぶつかりダメージを負うも、すぐに翼を広げ体勢を立て直す──が、衝撃で剣を落としてしまったことに気付く。
剣を拾う間もなく獣脚類型は大きく口を広げてピレッタへ突進する。
ピレッタは咄嗟に左手のひらをその口へかざし。
「"咬み千切る光輪"!」
唱えると同時に、手のひらから十センチ程の光の輪が出現。
光の輪は高速回転しながら拡大し、向かってくる魔族の首に首輪のごとく嵌められたかと思うと、一気に元の大きさに戻る。
次の瞬間、魔族の首がぼとりと落ちた。
ピレッタは息を整えつつ右手を伸ばすと、独りでに剣が浮遊し手元へと帰ってきた。
「ピレッタ!上っ!」
リオが叫んだ。
ピレッタの頭上から滑空しながら突撃する猛禽類型魔族に気付き、反射的に声が出たのだろう。
リオの声に助けられピレッタは突撃をかわし、反撃の剣をその腹に突き立てると、魔族は突撃の勢いのまま大きく斬り裂かれて絶命した。
「ありがとリオちゃ──」
礼を言おうと僅かに意識をリオへ向けた隙に。
背後からオーク型魔族による力任せのパンチがピレッタを襲った。
「ピレッタ!」「ピレッタちゃん!」
強く地面に叩きつけられたピレッタに二人は動揺し。
その瞬間、結界を作ることから僅かに意識が逸れたのか、魔族たちが一斉に結界を叩き割り外へ飛び出す。
「しまっ──」
そして。
「"壊乱紅蓮拳"!!」
真っ赤な炎が、上空から降り注いだ。




