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十六章 †駆けつけし重鎮†

「"刻銘(ネームド)"……?よく分からねえが、勿体ねえことしちまったか。俺もアイツと()りたかったぜ」

 "三牙鬼(トライデント)"を名乗る魔族の剣士──マリスはそう言って舌打ちする。

「それは残念だったね。あなたはここで僕が仕留める」

 ウルマロはマリスへと向けた杖の先に光を宿す。

 が、その魔法を放つ前に、マリスはその杖ごと斬り落とした。

「!!」

 ウルマロは反応できず、思わず目を見開く。

「アホか。向こうに出てきた二人は魔獄最強刃物使い"三牙鬼(トライデント)"にして、大幹部"七落閻(ドミネイトセヴン)"でもある。俺より格上なんだぜ。お前の師匠がいくら強かろうが、アイツら二人相手じゃ勝てるわきゃあねえよ」

「そりゃ……こっちのセリフさ」

 ウルマロは強がって笑みを浮かべる。

 ──くっ……たぶん本当に先生は心配いらないだろうけど、普通に僕自身が限界近い……!

「……けっ、もう息切れてんじゃねえかよお前。魔力もほとんど残ってねえだろ」

 マリスもウルマロの限界を見抜いていた。

「……気のせいだよ……」

「ケケッ、まあいいや、とりあえず壊れるまで遊んでやるよ」

 未だほとんど消耗が見えないマリスに、ウルマロはうっすらと恐怖を感じ始める。

 ──……くそっ!冗談じゃない!並の魔人なら即死級の魔法を五回は撃ったぞ……!侮ってたわけじゃない……けど、想定を上回られた……!……っていうかこの人、耳の形からしてエルフ族……で剣士ってことは……セレーネの末裔じゃないかどう考えても……!道理でさっきから簡単に"甲空(エアシールド)"をスパスパと……!

 正体に気付いた時にはもうマリスは踏み込み、ウルマロを剣の間合いに収めていた。

 マリスはそのまま弧を描くように大きく横に薙いだが、ウルマロはギリギリで"召喚(サモン)"を発動して瞬間移動し、距離を取った。

「ヒャハッ、よく避けた!さあ、いつまで()つかな!?」

 魔力を感知したのだろう、移動した先へとすぐに視線を移すと、再び素早く踏み込む。

 ウルマロは魔力残量を考慮して"召喚"を使わずに飛び退き、なんとか間合いを確保する──が、剣の間合いの外に出ても油断はできない。

 その太刀筋には風の刃を飛ばす能力が備わっているのだ。

「くっ!」

 と、これもギリギリで体を反らしてかわす。

「そらそら!次はどうする!」

 休む間もなく次々と飛んでくる刃を、ウルマロはなんとか魔法を使わずに乗り切ろうとするも。

 まるでゲームの難易度を上げるかのごとくマリスは徐々に刃の連射速度を上げていき、たまらず杖をかざして前方に"甲空(エアシールド)"を展開。

 が、次の瞬間マリスは高く跳躍し、ウルマロの頭上十メートルほどの空中から、無数の風の刃を放った。


 ──()……ダメだ間に合わ……!


「"召喚(サモン)"」


 それを唱えたのは、老人の声。

 ウルマロは一瞬死を覚悟したが、そうはならなかった。

 気付けば正門の内側に移動しており、すぐ横には長身のエルフの老人が立っていた。

 古き良き魔導士らしい黒のとんがり帽子を被り、黒のローブに身を包む。左眼にはモノクルを着用し、胸の辺りにまで伸ばした白髭と白髪がサラサラと風に靡いている。

 この老人が"召喚"によってウルマロを移動させたのだ。

「が……学園長……!」

 老人を見てそう言ったウルマロは、安堵よりも驚愕が勝っているようだ。

「サク先生、ここまでよくぞ持ち堪えた」

 学園長と呼ばれた老人はウルマロに優しく声を掛け、マリスへ視線を移す。

「ほぉ、まだ戦えるのがいたか」

 マリスはその老人を睨め付けてニヤリと笑う。


「儂はマジポリア魔法学園学園長、ノウズ・ノームである。即刻退去されよ、魔獄の者よ」


 老人はそう名乗り、威圧するように古びた木製の杖を地面に突き付けた。

 だがそれで怯む魔族ではない。

「学園長っつうと、さっきの"刻銘(ネームド)"より偉えってことだよなァ?んじゃあまさかテメエも──」

「無論、"刻銘(ネームド)"じゃ」

「ヒャハハッ!そりゃありがてえ!どれ程のモンか見せてもらおうか!」

 言いながら、マリスは剣を構えて踏み込んだ。

 が。


「この儂に挑むか。ならば容赦はせぬ」


 ノウズはマリスが剣を振り抜く前にその手を杖で押さえつけた。

 ──コイツ……!魔法無しで俺の動きに対応しやがった……!?

「剣技が恐ろしければ剣を振るう前に出所を潰すべし。トップスピードに乗らせなければ、いかに十勇の末裔と言えども無力に等しい」

「ヒャハッ!ジジイの反応速度とは思えねえな!面白え!だがこれならどうだ!?」

 と、マリスは後ろへ跳んで距離を取ると、風の刃を放った。

 それに対しノウズは杖頭を掲げ、前方に大きな魔法陣を展開。


「"反転大鏡(アンチミラー)"」


「!?」

 魔法名の詠唱とともに、魔法陣は巨大な鏡を作り出した。

 鏡に吸い込まれた刃は即座に反射され、マリスに襲い掛かる。

 間一髪、マリスは再び風の刃を飛ばして相殺したが、その顔は驚愕に満ちていた。

「テメエ……インフェルノの技を真似やがったのか……!」


 "反転大鏡(アンチミラー)"──鏡で反射した攻撃を自分のものにする魔法。

 昨晩世界中に拡散された宣戦布告映像の中で、七落閻(ドミネイトセヴン)であるインフェルノが使用していたものだ。


 ──すごい……!映像を見ただけで魔族の魔法を再現したのか……!あれから丸一日も経ってないのに……!

 ウルマロも驚きつつ、畏敬の念を抱く。

 ウルマロからの眼差しに気付いたノウズはマリスへと注意を向けたまま、どちらにも聞こえるくらいの声で泰然として説いた。

「驚くことはない。(ぬし)も学徒だった頃に習ったじゃろう──"魔法"とは即ち、"魔力の法則"。法則さえ冷静に見極めれば、基礎的な魔法の組み合わせだけでも大抵の魔法は再現できるのじゃよ。 "反射(ミラー)"、"拡大(エクスパンド)"、"複製(コピー)"、"選定(セレクト)"、"遮断(アイソレイト)"、"動力維持(パワーキープ)"、そして"追尾(トラック)"。これらの魔法を適切な魔力配分で織り交ぜることがこの"反転大鏡(アンチミラー)"の発動方法じゃ。……あの魔人が同じ方法で編み出したかまでは分からぬがな」

 それを聞いたウルマロは思った。

 ──ムレファ先生が最後にこんなふうに教えてくれたのはいつだったか……僕は……ついていく人を間違えたのかもしれない……。

 ムレファに師事してきた数年間を思い返すと何故か自分の方がムレファの世話をさせられるシーンばかりが脳裏に浮かんできて絶望するウルマロを他所に、マリスは。

「ヒャハハッ、なるほどねえ。距離を取れば跳ね返され、近付けば抑えられる。さてどうしたもんかなぁ」

 乾いた笑いを浮かべて言いながら、剣の鋒をノウズの足元へ向ける。

「…………むっ!」

 ノウズもそれに気付いて下を見ると、ノーモーションで素早く空中浮上した。

 次の瞬間、今までノウズの立っていた地面に巨大な亀裂が入り、そこから風の刃が勢いよく噴き出した。

「なっ……!剣を振らずに、地面から!?」

 ウルマロは動揺する。

「振らなきゃ撃てねえなんて言った覚えはねえぜ?」

 とマリスは照準を合わせるかのように、鋒を宙に浮かぶノウズへと向ける。

「!!」

 するとその周囲に風が吹き荒れ始め、竜巻のようになって取り囲んだ。

「ヒャハハッ!その風全てが"鎌鼬(デスゲイル)"だ!このままミンチにしてやんぜ!」

 得意げに笑うマリス。

 "鎌鼬(デスゲイル)"というのがどうやら風の刃の技名のようだ。

 ──そうか、剣は彼にとっての"杖"なんだ……!これまでわざわざ剣を振っていたのは、太刀筋からしか撃てないと油断させるための罠……!そしてそれを初見でかわした学園長もやっぱり凄い……!なんてレベルの戦いだ……!

 ウルマロは二人の強さと自分の弱さを実感し、奥歯を噛み締める。

 そうしているうちにも少しずつ竜巻の円は小さくなっていき、内側に閉じ込めたノウズを追い詰めていく。

 ノウズは刃の動きを冷静に観察し。

「ふむ……"召喚(サモン)"は使えぬか。強い魔力が渦を巻いて"召喚先"の捕捉を阻害しておるな。この気流の中では"甲空(エアシールド)"も作れぬ……ならば……」

 と、突然杖を天へ掲げた。

「"上昇気流(アップドラフト)"」

 唱えた瞬間、下から突き上げるような突風が起こった。

 竜巻はその突風に乗って上空へと高く昇っていき──やがて消滅する。

「ヒャハハッ、オイオイ、マジでこれも切り抜けるのかよクソジジイ」

「……クソジジイか……そうじゃな。儂ももう千五百歳を超えた……衰えを感じずにはおれぬよ」

 ノウズはそう言って自嘲するように笑う。

「千五百歳だぁ……?ヒャハッ、ポンダーよりジジイじゃねえかよ……」

 ポンダー──魔獄王ライザーの側に控え、参謀のような役割をこなす"七落閻(ドミネイトセヴン)"の一角の顔が頭に浮かび、マリスは苦笑する。

 ──マジで言ってんのか……?

 ──確かに魔力の緻密な操作ができりゃあ寿命を伸ばせる……実際、魔族は地上の人類より遥かに長く生きる。しかもコイツは元々寿命の長えエルフ族だ……とは言え……千五百年も生きてるヤツなんて、聞いたこともねえぞ……!

 マリスの頬を嫌な汗が伝う。


 カラン!


 と、ノウズは再び威圧するように木製の杖を地面に突き付けた。

「今一度名乗っておこう、魔獄の者よ。儂はマジポリア魔法学園創設者にして学園長、ノウズ・ノーム。魔力は衰えたが、儂の頭には千年以上の経験と知識が詰まっておる。(ぬし)は今──魔法の歴史そのものと戦っておるのじゃよ」


 † † †


 学園西方。

 ここでは"分裂(ダブル)"によって分裂した片割れである"もう一人のムレファ"が、現れた巨漢の魔族と戦闘を繰り広げていた。

 黒い短髪にもっさりと黒髭を蓄えており、古びた胴着のような服を着た、いかにも武人といった風貌だが、やはりその額には二本のツノを持つ。

「その見た目で随分と緻密な魔力操作ができるんだな」

 投げつけられた斧を甲空(エアシールド)で防ぎながら、ムレファは魔族に話しかける。

「この斧、お前の魔力で作り出したものだろう?トマホークとやら。手元から離れた武器なんて"浮遊移動フロートムーヴ"で取り上げてしまえば終わりだと思ったのに、まさか無効化されるとはね」

 ムレファの周囲にはたった今防いだ斧以外にも、数十本の斧が弾かれて地面や壁面に突き刺さっていた。

 よく見ればその斧たちは持ち手の先の方から少しずつ、塵となって消滅しているようだ。


「いかにも。これはワシの魔力を押し固めて作っている」


 と巨漢の魔族──トマホークは重々しい声で素直に答えると、その右手に再び、無から斧が出現する。

「昔は本物の斧を使っていたのだがどうにも、持ち歩くのも投げた後に回収するのも面倒でな。魔力操作は得意ではなかったが、これを習得するために修練を積んでいたら、魔獄でも五本の指に入る精密操作とまで言われるようになってしまった」

「はは、天才ってやつか」

「才能などない。何十年も繰り返し試しただけだ。ワシは昔から鈍臭くてな、一つのことに集中するとそれ以外が何も見えなくなるタチなのだ。気付けばチェイン、マリスと並んで"三牙鬼(トライデント)"などと呼ばれるようになり、今では"七落閻(ドミネイトセヴン)"を任されている。まったく、面倒なことだ」

 溜め息を吐くトマホークに対し。


「うわぁめっちゃわかる~!」


 ムレファは目を輝かせ、心から共感の声を上げた。

「私もただ魔道具作ってたいだけなのに、気付いたら"刻銘(ネームド)"とか呼ばれ出しちゃってさぁ!ホント勘弁してほしいよ!もしかしたら私たち、似た者同士なのかもな!」

「……現役最強の魔導士殿にそう言われるとは光栄だが……我々は敵同士。分身体とは言え容赦はせんぞ」

 トマホークはムレファの軽いノリには付き合わず表情を変えないまま、斧を投げる構えをとった。

「ちぇっ、マジメだなぁ……」

 ムレファは口を尖らせるがそんな反応には一切興味を示さず、トマホークは斧を持つ手を振り抜いた。

 手から離れた斧はムレファの顔面へと真っ直ぐに高速で飛んでいく。

 当然"甲空(エアシールド)"を張り防御するが──防いだ斧の後ろに、さらにもう一本の斧が飛んできていた。

 一撃目で砕かれた甲空の穴に、即座に次の斧が捩じ込まれる。

 ムレファは間一髪のところでかわすが、さらにもう一本の斧が飛来。

 なんとか甲空を再展開しそれも防ぐが、すでにトマホークの手元には次の斧が握られていた。

 ──斧の生成速度が上がった……!今まで手を抜いてたのか……?

「悪いが速攻で蹴りをつける。どうやら仲間の二人が思った以上に苦戦している」

 トマホークはそう言って斧を次々と投擲する。

 言われてから、斧を防ぎつつムレファも状況の変化に気付いた。

「なるほど、確かに……学園長が動いたか」

 ウルマロの元へと加勢に来た学園長ノウズの魔力を察知する。

 そして"もう一人の自分"が、鎖鎌使いの白ネコ魔族との戦いを優位に進めていることも。

「離れた場所の魔力の変化に私より早く気付くとは、やっぱり流石だね……ていうか今までホントに手ぇ抜いてたんだ」

「言っただろう……面倒なのだ。ワシは元々命の取り合いなどに興味はない」

「だったらやめろよ……」

「出来ない相談だ」

 トマホークの攻撃はさらに激化する。

 そこかしこに突き刺さった斧に投げた斧をぶつけて反射させ、さまざまな軌道からムレファを襲い始めた。

 ムレファは自身を囲うようにドーム状の甲空(エアシールド)を張り対応するが、その凄まじい威力の前にあっけなく剥がされていく。

 ──とんでもない技術だ。軌道が読めない……斧そのものは魔力で作ってるのに、斧のコントロールには一切魔法を使ってないんだ。長年の鍛錬の賜物か……。

 あらゆる方向から怒涛の勢いで飛んでくる斧を、それでもムレファは何度も甲空を張り直し、辛うじて凌ぎ続ける。

 しかしその表情には僅かに疲れが見え始めていた。

 ──はーしんど…… ただ魔力を押し固めて作っただけの斧が、これほどの脅威になるとはね。でも消費は相当激しいはず……魔力を押し固めて物質を作り出すのは魔法で操るのとはわけが違う。そもそも魔法は魔力をより効率的に使うために生み出されたものなんだし。……このまま耐え切れば、私の勝ちだ。

 勝利への道筋は見えていた。

 が。


「かはっ……!?」


 投げられた斧の一つが、割れた甲空(エアシールド)の隙間を抜けて入り込み、ムレファの胸に突き刺さった。

「終わりだな、最強の魔導士」

 トマホークは少し残念そうに言う。

 刃が臓器にまで達したのか、ムレファは鼻と口から血を噴き出しながら、力なく膝から崩れ落ちた。

 ──何が……起きた……?この斧……魔力がない……?

 愕然とした顔で、ぺたぺたと自身の胸に突き立てられた斧の持ち手を触る。

「それは"ただの斧"だ、本物のな。持ち歩くのが面倒だとは言ったが、魔力が尽きた時のために一本だけは持ち歩くことにしている」

「……な……」

「お前はワシの斧をほとんど目で追っていなかったな。それでもここまで完全に防ぎ切っていたのは、斧の魔力を正確に感知することで防御していたからだ。だから魔力で作った斧の中に、魔力のないただの斧を紛れ込ませた」

 そう言ってトマホークはムレファに歩み寄ると、胸に刺さった斧の持ち手を掴み。

「目視すればすぐに気付き"浮遊移動(フロートムーヴ)"とやらで防げていただろうが……油断したな」

 と、ムレファの肩に足を置いて、斧を引き抜く。

 ムレファの上半身はバランスを崩し、そのまま仰向けに倒れ込んだ。

 完全に意識が途絶えたか、ムレファは沈黙している。

 そして少しずつその体が塵となって消え始めた。

「"分裂(ダブル)"とやらの効果が切れたのか……死ぬと消えるのか、それとも時間経過か……まあ今はどうでもいい。さて──チェインの方は……まだ無事か。まずはマリスの加勢に行くとしよう」

 トマホークはその体格からは考えられないほど身軽に校舎の上を跳び越えながら、マリスのいる正門の方向へと一直線に向かった。


 † † †


「が、学園長!何か来ます……!」

 その魔力を感知したウルマロが、ノウズへと声を掛ける。

「ふむ……ベルジェーン先生の分身体がやられたか……相当な使い手じゃな」

 ノウズは魔力を確認すると、西方へと意識を向ける。

「ヒャハハッ!俺と戦ってる最中に余所見とは随分余裕だな!」

 マリスはその隙を突いて斬りかかる。

 が、マリスの踏み込んだ地面に突如魔法陣が浮かび上がり。

「ぐあああっ!?」

 魔法陣から発生した電撃によってマリスの動きが封じられた。

 ノウズはちらりとマリスの方へ視線を向ける。

「"雷地雷(サンダーマイン)"。もう諦めよ(わっぱ)(ぬし)は不用意に"鎌鼬(デスゲイル)"を撃ちすぎた。最早魔力はほとんど残っておるまい」

「クソ……が……!」

 痙攣する体から煙を上げながらも、マリスは鬼の形相でノウズを睨みながら足を動かす。

「"光縄(ライトロープ)"」

 と、その根性も虚しく、ノウズが杖をかざしてそう唱えた瞬間、文字通り光の縄が現れ、蛇のようにマリスの体にグルグルと巻き付いて絞め上げた。

「ぐっ……!離しやがれ……!」

「その程度の魔法を解く力も残っておらぬのなら、そのままじっとしておれ」

 そう言って、途轍もない速度で接近してくる魔力の方へと再び注意を向けた。

 次の瞬間にはその魔力の元がノウズたちの視界に捉えられる。

 校舎の屋根の上から、斧を肩に担いだトマホークが大きく跳躍して三人の前に降り立った。


「無様だなマリス」

「チッ、助けに来た第一声がそれかよオッサン……」


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