表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/41

読んでいただいてありがとうございます。頭の中で、ずっとラフィーネさんが泣いていました。

 ヴァッシュの言葉の意味を理解したラフィーネは、大混乱に陥っていた。

 だって、言い逃げ、ではなくて、気持ちだけ知って、拒否されること前提で旅行に行こうと考えていたのだ。

 それが、ヴァッシュから先に告白されて……。

 ヴァッシュはきっと、ラフィーネみたいにちょっと卑怯なことなんか考えていない。

 逃げることもなく、どんな言葉も真正面から受け止める気満々だ。

 たとえそれが拒絶の言葉でも、ヴァッシュはきっときちんと受け止めてくれる。

 あぁ、何て、私と違う人なの……!


「そうじゃなくて、違うけど違わなくて!あぁ、どうしよう。私が先に告白するはずだったのに!ヴァッシュ様に先に言われて!私から約束をしたかったのに……!言い逃げが……!」


 混乱したラフィーネの言葉に、ヴァッシュは軽く目を見開いた。

 聞き間違いでなければ、ラフィーネはヴァッシュに告白するつもりだったようだ。

 告白、ということは、ラフィーネもヴァッシュのことを好きでいてくれるということ。

 ラフィーネが、どんな約束をして、何を言い逃げするつもりだったのかは知らないが、ヴァッシュはふっと笑った。


()()()()()、落ち着け」

「落ち着けないです。だって、だって」

()()()()()


 ヴァッシュは、ソファーに座るラフィーネの前に片膝を突いて、両手を優しく握った。

 混乱する頭でラフィーネは、その行動がまるで物語の主人公みたいだな、とぼんやりと思った。

 こういう姿がとても様になるのが、ちょっとうらやましい。


「俺の身分とかラフィーネの過去とか、そういうことは、一度、全て忘れてくれ。今ここにいるラフィーネの本当の心を知りたい。俺に対する想いを知りたいんだ」

「全部……?」

「そうだ」

「……でも、私から約束しないと……」

「ラフィーネ、すまないが、俺はどうしてラフィーネがそんなに約束という言葉にこだわるのか分からない。けれど、そのこだわりも全部、忘れてくれ」

「……忘れていいの……?」

「あぁ、真っ白なラフィーネの心に残る、俺への気持ちを聞かせてくれ」


 ヴァッシュの言葉に、ラフィーネの瞳から涙がこぼれた。

 約束をしたら絶対に守られないから、せめて自分から言いたかった。

 だって、そこにこだわらなかったら、自分の心が不安で壊れしまいそうになるから。

 けれどヴァッシュは、それさえも全部忘れろと言う。

 忘れたら、残るのは一つの感情だけだと自分でも分かっていたから、意地でこだわっていたのに。

 でも、もうどうなってもいい。

 また自分が傷つくことになっても、それでも、この瞬間に言わなくちゃ、絶対に後悔する。

 そしてラフィーネは、ヴァッシュにがばりと抱きついた。


「好き」


 抱きついてきたラフィーネを受け止めたヴァッシュの耳に、その言葉はしっかりと届いた。

 ちょっと涙声で、飾ることもなく真っ直ぐに言われたその言葉が、とても彼女らしくて愛おしい。


「好きなんです。ヴァッシュ様が一番、好き」

「俺もラフィーネが一番好きだよ」

「愛してます」

「あぁ、俺も愛してる」


 ラフィーネの言葉をそのまま彼女に返している状態になってしまったが、同じ言葉だけにラフィーネにも間違いなく伝わる言葉だ。

 

「ラフィーネ」


 名前を呼んでぎゅっと抱きしめると、ラフィーネもヴァッシュを強く抱きしめた。


「ヴァッシュさま……すき」

「あぁ」


 涙を流すラフィーネの頭を優しく撫でながら、ヴァッシュは彼女がここにいてくれる奇跡に感謝した。

 ラフィーネの今までの人生は、父と兄に振り回されてばかりだった。

 だが、その過去があったからこそ、ラフィーネは皇宮で働いていたのだ。

 そしてあの時、ラフィーネは後輩を助けるためにヴァッシュの腕を掴んだ。

 けれど、掴まれたのは腕だけではなかった。

 震えながらラフィーネは、ヴァッシュの心ごと掴んでいった。

 

「ラフィーネ」

「……ヴァッシュさま……」


 花がたくさん咲いているような場所でもなく、ロマンティックの欠片さえもない仕事場の応接間で、しかもソファーがあるのに床に直で座って抱きしめ合っていて、何処で何をしているんだとヴァッシュは一瞬思ったが、これもまた、自分たちらしくていい。

 ラフィーネと初めて交わしたキスは、予想通り涙の味がした。

 


大人なのでこれくらいは……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ラフィーネがどんどん「おもしれー女」路線になっていくので、正統派なヴァッシュに受け止められてよかった!!
ラフィーネおめでとう。 いろいろ拗らせてたけど、初めて約束を守ってもらえそうで良かったねぇ。 あとは、「えーでも、ほら、よくあるじゃないですか。捨てた女がもっといい男に拾われて、結果、気になってより…
ラフィーネさん…良かったね?今まで苦労させられたぶん幸せになって下さいね?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ