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起きた後の夢

作者: 久志木梓

 あの夢を見たのは、これで9回目だった。白い天井に広がる朝焼けの染みを見ながら、日の昇るのの早くなったのを感じ、鳴り出す時刻直前の目覚まし時計を止めて、天井を見上げて、朝焼けを間接的に観賞する。住宅街の一軒家、マンション、何とかハイツ、何とかコーポ、古いアパートのその先で、少し住宅街を離れた先の、畑まで行かないと直に見ることのできない朝日の、その欠片が、白く少し凸凹した加工のかかった、木造の骨組みの木が多少たわんでも大丈夫なように加工のしてある安く丈夫な天井クロスへ、赤く橙に広がるのを、眺める。あの夢を見たのは、これで2・7回目だった。日の、窓から入り動くのを目でたどりながら、刻々薄れ消えて意識の知らない場所へしまわれる夢の輪郭を、天井に投射する。あの夢を見たのは、これで5・8回目だった。


 布団から抜け出た先で、シリアルをボウルにあけながら、合成飼料、と思った・言ったのは、自分・あの人で、この夢を見たあの7・1・4回目だった。


 この夢を見たのは、これで11・8回目だった。玄関でいつもの靴を足に入れた途端、靴下のなかの足が濡れたのを感じて、昨日雨の中歩いたときの濡れがまだ残っているのだと気がついて、新聞紙を丸めて入れておくとか、そういうめんどうな、必要な動作も後回しにした自分のものぐささと、濡れてしまった足に、けれども靴下を履き替える時間も、手間も惜しくて、うんざりしながら、隣に出しっぱなしの、いつもの靴より少しだけ上等な革靴に・作業靴に・スニーカーに履き替えて家を出る。この夢を見たのは、あれで3・6・1回目だった。


 乗ろうとしていた電車は・バスは遅れていて、駅の・待合の壁に背中を預けて、腕を組み目を閉じて、少しでも体を休めようとしながら、ふとあたりを見渡せば、同じような格好でわずかな休息にありつこうとしている人が2・3・1・5人いて、木の枝に貼りつく蓑虫を思い出して、これで繝シ繧回見た夢の、その夢のことを、薄らぼんやり考える。


 バスがやっと・電車がやっと駅に・待合室にすべりこんできて、それに乗りこみ座り込みながら、通路に立つ人々の胴体の合間から、地平線から人の頭一つ分浮き上がった朝日を、直に見て、すでに間に合わないことを知っている。騾ァさんに・螟ゥ逕さんに・サ貅さんに遅れる連絡をして、まだあの・これの・そのことを、考えている。

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