第-6 1人、また1人……
俺は電知 葬太郎。
最近たくさん技を使えるようになり浮かれている。
その時、俺の無線機が鳴った「ザザッ……電知、久しぶりだな。また仕事なんだが、やるか?」「担ちゃん?久しぶり!仕事なら大歓迎だぜ!」「今回のは長いし動くし遠いんだが、大丈夫か?」「おう!大丈夫に決まってるだろ!【帯電閃光】でバッタバッタ薙ぎ倒してやる!」「分かった。場所は……」ブツッ
勢いで無線機を切ってしまった。担当員さん怒っていないか……?まぁいいだろう。
「あ、担ちゃんもしもし?さっき切ってごめんな!で、場所ってどこだ?」「……広島の」「広島か!分かった!」【光雷】を使っても十数分はかかるし、めっちゃ疲れる。
まぁ、行ってみてから考えよう。――
――ここは広島の廿日市。
クイーン級数体の討伐ついでに市民約20名の救出をしてほしいそうだ。前にあんな状態でも河馬を倒せたんだ。そんなの余裕だろう。
「さてと……また河馬と戦うのかなぁ……」あんなのばっかなのは逆に気持ち悪いな……そう考えていると人が何人か居る。何かから逃げてるように見えるが、怪物でも居たのか?すると、角から高さ2m程のワニ、そして1.5m程の蟻さんが出てきた。
これが恐らくクイーン級数体の内2体だ。
「【帯電閃光】!」高速移動で怪物に近づき1匹ずつ倒すつもりだったが、蟻の方だけ回避してきた。さすが虫さんなだけあって反射神経がすごい。ワニの方は手足を破壊し無力化には成功した、あとはトドメを刺すだけ。
だが蟻は速い。俺の【光雷】でも避けられる。蟻は俺へ向かって走ってくる。一か八かの賭けで注射器を刺してみようか、それか安定を取って【感電池】か?
……注射器を刺してみよう。その方がリターンが高い。「ほらよっと!蟻野郎!」【光雷】で近寄り注射器を構える。たとえあの蟻だろうと全速力で走ってる、しかもあの巨体だ。重量も相当あるはず、蟻は避けられず注射器を喰らい、動きを止める。蟻の外骨格って固いんじゃなかったかなぁ……そうだ、市民の救出を、あの人達が走って行った方向へ向かう。
「市民の方ー!居ますかー!救助しに来ましたー!」何も無い町に向かい人を呼ぶ。
ん?建物の角に誰か居る。俺を呼んでる?
「隊員さん、助けて……」3人組の男女だ。
「動けないんですか?」「はい……ちょっと……」
「あぁ、それなら」……何か変だ。あの人達の後ろに何か居る。すごい気配だ。
ざっとクイーン、いや、キング級にも相当するだろう、人が居るのに何故襲わない?目が見えないのか?口を閉じながらじっと暗闇を見つめてみる
怪物なのだろうが、頭蓋骨の顎から上の部分が見えない。いや、無いのだ。そのため聴覚と視覚を切断され、触覚のみで動いているようだ。
暗くて見た目はよく見えないがとても大きい。
「じゃあちょっとこっちまで来てください」「これであの怪物から逃げられる……」
とりあえず市民の人達を遠くまで逃がしてからさっき怪物が居た所まで戻ってきたが、居ない。
すると自身の後ろから声がする。「ツヨイ、ニンゲン……」「なんだ!」俺は即刻【光雷】距離を取る。どうやらさっきの怪物のようだ
「ワタクシハヒューマノイド。アナタタチニンゲンノイウ、怪物?デス。」人型だが、腕がいくつか変形したり、人とは思えない姿をしている。
聴覚が無いはず、だが喋れている。聞こえないなら発音は難しいはず、しかも人間の言葉を喋れていると言うことは、知能もある。
「何故わざと市民の人達を逃がした?」聞こえないはずだが、聞いてみる。「アナタヲコロシタラ、カレラヲコロシニイクトイウ、タノシミカタデス。」振動を伝い俺の声を聞いているのか……しかしなんとも性格の悪い怪物だな……
「じゃあ、死にやがれ!」注射器を構え【帯電閃光】で怪物に向かう。
「……ソレ、オモシロイデスネ」俺の体が金縛りに遭ったように動かなくなる。「ヒトツ、イタダキマスネ?」俺の注射器が奪われる。「返せ……!」
「ナカミハ、ナンデスカ?……アナタデタメシテミテモヨロシイデスカ?」俺から奪った注射器が俺の脚へと針を向け、突き刺さる。
「ゔっ……!早く、解毒剤を……」しかし金縛りのせいでポケットに手が届かない。俺は死の恐怖を何回か感じた事はあるが、今回は死ぬのが怖いじゃない。生きる事自体を諦めそうだ、死にたくない。
「コレハアブナイデスネ……ソレデハサヨウナラ」
金縛りが解ける。俺の脚は解毒剤でももう機能しなさそうだが、電気を通して動かす事はできそうだ。
帰ってどっかで治療を受けるのが最適だが、人が死ぬ姿は見たくない。「あいつは俺が殺す。」――
――解毒剤を足に打ち込み、しっかりリハビリ?をしてから急いで人モドキが向かった方向へと走る。【光雷】は足が負傷していて難しい。「クソッ……俺がもっと強かったら……」そう思っていようが何も解決しない。
怪物を見つけた。「見つけたぞ人モドキ!……え?」
既に2人死んでいる。
胸部が開かれ心臓等の重要な臓器が潰されていたり、四肢を切断されていたり……これがグロいってやつか……?下手なスプラッターより怖い。2度と悲劇は起こさないって、誓ったのにな……なんでこんな事が、全部怪物のせいだ。
「アレェ?イキテタンデスカ、ナラサイゴノヒトリハタノシミニシテオキショウカ」
「死ね!」俺のあらゆる力を総動員させ怪物に巨大な雷を放射する。怪物の胸部が貫かれ、次に四肢、頭を破壊し、相手の行動を制限。
「お前があの人達にやった事だ。お前なんかが知恵を持っているからこうなるんだ。」
「づあこやあむてんぢさに……」意味不明な言語を話しながら再生していく。なんで生きているんだ?
「喉です!喉にこいつのコアがあります!」市民の人が話す。コアを潰さないと死なないなんてかませの中ボスのようだ。
まだ再生中の怪物の喉を掴む。「……てわぢさえ?」
混乱しているようだが、2度と喋らせない。
喉へ向かい雷を何十、何百と放射する。
そして、息絶えたと思った……が、俺の体が怪物に侵食されていた。「は……?」
怪物の喉から腕へ巨大な針が突き刺さっている。
「オドロキマシタ……サスガデス。」「【感電池】……使えない、?」「ソレ、バッテリーとヨブノデスカ……ツカワセテモライマスヨ」
俺は耐電体質だ。電気なんて効かな……効いた!?
俺の体内が痺れ、刺さるように痛い。まるで針山に電気を流した物みたいだ。
「なんで、だ……?」「ワタクシ、モトモトハノウリョクナンテナカッタンデス。イヤ、ゲンミツニハアリマシタ。ワタクシハコピースルノウリョクヲモッテイルンデス。コレヲワタシハ【操り人形劇】トナヅケマシタ。」気持ち悪い声で俺に説明してくる、鬱陶しい。
「デハシンデモラッテモヨロシ、ハ……?」
怪物の喉にあるコアが誰かに掴まれている。
「はぁ、お前は色になれると思ったんだが、やっぱまだ鍛錬が必要だな」紅崎さんの声だ。だが紅崎さんの手では無い。ロボアーマーのような、赤く光る、かっこいい何かだ。「紅崎、お前がやれやれうるさいからやってやったんだ。金は出せよ」
「ワタクシ、ハ、ツヨカッタハズ……」「お前は雑魚だ。キング級のくせに調子乗るな」
俺は助かったのか……?だが、右腕から半身の一部へかけて壊死しかけてる。
死にかけの状態だ。「なぁ零壱、こいつを治療場まで持っていってくれないか?」「あぁ、分かった。追加料金だな」――
――ここは東京支部付近の病院。
「はぁ……まだ腕が治らねぇぜ……」そうなのだ。
あのクズが死んでから1週間と少し。時間をかけて【感電池】とかを使い最適……いや、むしろ回復に重きを置いた治療法で腕を治しているはずなのにまったく治らない。
「……獣とか両生類って治癒力が高いって聞いたなぁ……試してみよっかな」「やめとけ。獣は傷を塞ぐのが早いだけだし、どちらかというと人の方が肉体の回復は早い」誰だっけ?確か、前に紅崎さんと居た零壱、だっけ?「零いっち!」「零壱か獅子本 克也と呼べ」「獅子もっちでいい?」「もうそれでいい」
と言う事で彼は獅子もっちと呼ぶ事になった。
「そういやお前何でここに来たんだ?」「紅崎にお見舞いをしにいけって、これで俺も儲かる。」
この人は前といい金と仕事にしか興味が無いのか?そう思っていると獅子もっちはポケットから何かを出した。なんだ?液体が入ったフラスコ……俺を殺す気なのか?「これは俺の所で作った活性化剤みたいな奴だ。」「俺、獣になるぞ?」「安心しろ。これは――」話が長いので割愛する。
どうやら肉体の治癒力を急速に発達させ、少し工夫すれば如何なる部位だろうと破壊や再生ができるとのこと。
「その【感電池】ってやつでそれを吸収してみろ」「お、おう……」何を言っているのか分からないが、成分を吸収しろって事か?……【感電池】を使い電気を通して体内に成分を吸収してみる。
「……お、おぉ?おぉ!すげぇ!」腕が治っていくのを感じる。腕がしっかりと動く。正直言って原理がまったく分からないが、治ったからよし。
「ありがとな!獅子もっち!」「じゃあ2万だ」「……え、2万?」「払え」
……俺は仕方なく2万円払った。
まぁ、治ったんだから次から訓練に励もう。――
遅れてしまい申し訳ありません。
失踪したかと思った方も勘違いさせてしまったのならごめんなさい。
アイデアが思いつかず勉強等で忙しかったので…
では、皆さん次話に期待してください。