第-5 ポジティブな雷神
俺は雷神、勝者だ。
初仕事が終わり数日、今日は新人歓迎会ついでに隊員全体の模擬戦闘が行われるそうだ。
ここで新技を編み出す必要があるらしい。確かに俺は技もクソも無い。雷神に相応しい立派な技を編み出し、活躍してやるぞ!
と言う事で、俺が実技試験で行った場所へ行くことになった。
どうやらあそこは実技試験ではなく、模擬戦闘用だったらしい。
1戦目はケテちゃんとの戦闘なのだが、勝てる気がしない。
どうにも強そう。
「電知、始めるぞ」「おう!ケテちゃん!」俺は河馬と戦った時の武装に少し改良を施し、俺用にセットした。
内容は細胞崩壊ウイルスがたくさん入った注射器2本と活性化剤入りの注射器1本、毒付きナイフ、拳銃、それとワイヤー。それぞれ役割があり、大切な武器だ。
一方ケテちゃんは、ランタン1個だけ……?前に見た暑くする能力の補助か?これなら俺でも勝てそ……
「霧技能イグニス・アシッド。」なんだ?暑い……?違う、ケテちゃんのランタンから何か出ている。
「俺が河馬との戦いで最近作った技だ。どうだ?」おそらく、あのランタンから出ているのは神経ガス、またはあの河馬から抽出した血液を霧状にした物、近寄ると危ない。
「それじゃ、遠くからっと!」拳銃と、ワイヤーにナイフを付けたものを装備し、毒煙の範囲外から戦う、つもりだったのだが、やっぱり煙だけでは無かったようだ。
「面倒くせぇな……炎技能イグニス・タイフーン」青い炎の渦が俺に向かって飛んでくる。
回避するが、髪が少し焼けた。俺の、大切な髪が……拳銃をぶっ放し、ケテちゃんに少しダメージを与える。しかし、イグニス・タイフーンなるものが面倒くさ過ぎて近寄れない。近寄れたとしても毒煙で危ない。
もう一か八か突進するか?
いや、俺も危ない。どうすれば勝てるのだろうか。
ん……?「ケテちゃん!お前の能力って暑くするだけなのか?」逃げたり撃ったりしながら聞くと、ケテちゃんは俺に近づきながら話す。
「……いや、厳密には違うな、触れた物の温度を上げる。熱くする場所はどこでもOKで、特定の場所のみを熱くする事もできる。このランタンの中には筒がいくつかあり、特定の温度のみで融ける物質でできた膜が付いている。それより高すぎても低すぎてもダメだ。それを融かし筒の中の粉末を炎に……」いや、もう聞くのも嫌になってきた。とりあえず言ってる事は分かったから、対処法を考えることにする。「もういいぞケテちゃん!分かったから!」「燃やした粉末には……ん?なんだもういいのか」ケテちゃんっておかしな人だったんだな……
つまりはランタンを撃ち、炎を消せばいいのだが、炎の渦は勢いが強く、温度も高い。
銃弾なんてすぐに避けられてしまいそうだ。なら、ワイヤーナイフで消す?いや、あいつもそんなにヤワじゃない、すぐに避けられそうだ。
「うらぁぁぁ!」何か技が出ないか必死に掌を出すが、やはり何も出な……「何か出た!」
俺の掌からパチパチと静電気みたいなのが出ている、雷神に相応しい技だ。「うわっ!」冗談抜きで3億Vくらいの雷がランタンに向かい飛ぶ。「やべぇ!すげぇ!」そう喜んでいると、ケテちゃんが口を開く。
「……ランタンが消えた、俺の負けだ。」本当だ、消えてる。「でもランタンが無くたって戦えるんじゃ?」「あぁ、戦えるさ。だが俺はほぼランタン頼りだ、お前みたいなゴリラパワー相手じゃすぐ負ける。」
ケテちゃんの話を無視して俺の掌から出る電気を見て子供のようにはしゃぐ……なんか俺の電気からエネルギーが俺に吸収された気が……だから火が消えたのか?
「じゃあこの能力は、【感電池】と呼ぶ事にする!」
「……ATMみたいだな」ATMって……そんな事言わないでくれよケテちゃん……――
数分後の2戦目。
相手は、誰だ?白いスーツにペストマスクを付けた男が居る。「えーっと……誰?」「俺?俺は白。掃除屋?だっけ?そんな感じ」
3人目の色だ。絶対勝てないです。ごめんなさい。
「お前みたいな新人ごときに負ける訳無いが、さっき新しい技を編み出したみたいだな、電気を使うんだって?」何故ここまで情報が早いんだ?
「じゃ、始めるか」とりあえず様子見で拳銃を撃ちながら距離を取り続ける。「【換気扇】」放った銃弾が次々に腐食し破壊される。
「【霧吹き】」彼の体から霧のような物が広範囲に噴出される。「善意で伝えてやる、これでお前は銃を撃てない。」
何?つまりは、【換気扇】の腐らせる能力と似たものと考えると、あの霧は腐食剤か?だが拳銃は錆びていない。
射撃すれば俺がダメージを受けるような技のはず……ニトログリセリンか?
確かに俺が銃を撃てば発火し爆発する。
ならばナイフか注射器、いや、無理だ……俺の雷を使って霧ごと吸収するか?
……やってみるだけ価値はある。
「くたばれ!【感電池】!」雷が霧を吸収しながら彼に向かい発射されるが、作り始めた技だ。霧を全て吸収仕切れず雷の熱と勢いで大きな爆発が起こる。「ぐっ……!」「……【遺体処理】」
なんだ……?体の痛みが余計響く。爆発により受けたダメージで骨が軋み、立つことすら難しい。
「はぁ……俺の負けだよ、掃除屋!」「解除」体が一瞬にして治った。さすが掃除屋だぜ……――
十数分後、俺は負けて、次は別の試合で負けた人と対戦だ。掃除屋ってやつ、嫌な感じだったが、いつもあんな感じなのか?そう考えていると、1人隊員さんがやってきた。溺泉さんのようだ。
「あ〜、雷ちゃん〜?負けたんだ〜!あおちゃんも紅崎ちゃんに負けたんだよね〜、あの子強くて〜」
紅崎さんそんなに強いのか……?だが彼女も実力者だ。
俺なんかが勝てる相手じゃない。「じゃ、始めちゃおうか〜」速攻で仕掛けてみる。「【感電池】!」
「【沈没船の大船長】」俺の頭や手足へ水が大量に纏わりつく。動けない。窒息させるのか……女性にしては荒い戦法だ。しかも、
「あおちゃんの作る水はたくさん質量を持ってるんだよ〜」原理は分からないが、不思議な能力を持っているようだ。
しかし、俺の【感電池】も掌からしか出せない訳じゃない。体全体から出すことだってできる。そして耐電体質相手には主に感電ではなく熱で制圧させる。バチバチと電気が彼女に向かい走る。
「あつっ!も〜怒ったよ!【純粋な溺愛】!」水は消えたが、何かすごい技が来そう……
彼女の周りに水の塊がいくつか出現した。
水が細い針状になりすごい速度で飛ぶ。
必死に防御行動を取るが、
「ん……?」気付いたら俺の胴体に小さな風穴が空いている。「大丈夫だよ〜、致命傷は避けたから〜」
掃除屋よりも強いんじゃないか……?
そう思うと俺はショックか何かで気を失う。――
――「はっ!」俺はどこかで気がついた。
ここはどこだ?多少暗いが生活感のある場所だ、誰かの家のように見える。つまり東京支部では無い。
だったら誰の家だ?そう思っていると、扉が開く
「あ、起きたの〜?元気してる〜?」「あ、あぁ……なんとか」溺泉さんの家、?じゃあここは溺泉さんのベッド……
「えっ!?あっ、えっと」「大丈夫だよ〜、ここは彼女の部屋〜」彼女?溺泉さんは女性、だよな?
……いや、俺は紳士な人間だ。人の恋愛に手出しはしない。
「雷ちゃんが気を失ってから大変だったんだよ〜、止血とかめんどくさかったんだから〜」
お前がやったんじゃ、と言いたいところだが、助けてくれただけ感謝しよう。「ありがとな」「いいんだよ〜」――
――数日後、俺は傷が完治し、技の練習に励んだ。
今こうしてこれができているのは溺泉さんのおかげ
だ。
「う〜ん……なんとかこの雷を活用できねぇかな〜……」ずっと考えているのだが、今できたのは俺の体や武器に雷を纏わせて攻撃する【帯電体】という技のみだ。この技は熱と感電を同時に与えれる。【感電池】は隙が大きいから銃弾に電気を纏わせ発射、とかできるかも
「お、電知じゃねぇか、何やってんだ」紅崎さんだ。「あぁ、技作ってんだ」「へぇ〜」
紅崎さんは敵を殺害するのに特化した技が多いらしいが、生け捕りとか考えないんだろうか
「技を作るときのコツとかってあるか?」少し気になり紅崎さんに聞いてみると、「なんだろうな、まぁ試行錯誤じゃないか?」
やっぱりそうか、まぁ習うより慣れろだ。「おぅ、ありがとな、1回やってみる」
「う〜ん……」ずっと掌の上でバチバチ鳴っていて、もうこの音を聞きたくないレベルだ。
「なぁ電知」「ん?」紅崎さんが話しかけてくる。もしかして……いや、もうネガティブに考えるのはやめよう。じゃあ、アドバイスか?
「さっきやってた体に電気纏わせるやつあるだろ?あれを使いながら足に電気を溜めてそれを一気に放出してみろ」どういうことか分からないが、とりあえずやってみるか。【帯電体】を使いながら、足に電気を集中させて……放出!
「うわぁ!ぐっ!」すごい速度で移動したが、そのまま壁にぶつかってしまう。「痛ぇ……だが、これは大発見だぜ……」――
――数分後、俺はこの技を【光雷】と名付け、使いこなす事に成功した。
これを応用して、高速移動し攻撃する【帯電閃光】等も編み出せた。
これで俺も最強……いや、強者の仲間入りだぜ!――
こんにちは。
時間かかってごめんなさい…
ここまでこんなの見てくれるなんて優しいですね。
なんか作ってたら思ったより文字数増えちゃったので読むのに時間かかったと思います。
4000字くらいあるのになんでこんなに行が少ないんでしょうか…
じゃ、またね