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生まれ転じて、花が咲く  作者: 舞々
第二章 再会…?
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再会…?②


 渉が在籍するのは、成績上位数%の生徒しか選ばれることのない『特別進学コース』だ。成績だけではない、運動もできなくてはならないし、生徒会活動等にも積極的に参加する必要がある。このクラスの生徒達は、超有名大学へと進学していき、医者や弁護士と言った職業で活躍する者がほとんどだ。

 渉は入学前に受けた試験でこのクラスの在籍が決定したのだが、幸か不幸か特別進学コースには正悟もいる。近くにいる分、彼を観察することはできるのだが、彼が仁の生まれ変わりではなく他人の空似だった場合、一緒にいて気持ちのいいものではない。

 あんなに楽しみしていた高校生活だったにも拘らず、最悪なスタートを切ってしまったことが渉は悲しかった。


 初めての教室に案内された渉は、少人数ではあるがクラスメイトの前で自己紹介をした。名前を言って丁寧に頭を下げると女子生徒たちから溜息が漏れる。

「桐谷君ってめっちゃかっこいい。芸能人みたい」

「かっこいいっていうより可愛い系だよ。あたし、超タイプ」

「あれで桐谷財閥の令息でαでしょう? お付き合いしたいなぁ」

 女生徒が瞳をキラキラと輝かせる中、男子生徒は品定めをするような視線を渉に向けた。αの割に中性的な雰囲気をもつ渉は、同性からも恋愛対象として見られることも度々ある。そのため、同性からの舐めるような視線も慣れている渉は、視線の色が様々に色めく中も、顔色ひとつ変えずに立っていられる。

「じゃあ、桐谷はあそこの席だ。西野、色々面倒を見てやってくれ」

 担任の教師が指さしたのは窓際の一番後ろの席。温かな春の日差しがさんさんと降り注ぐ席だ。クラスメイトから向けられる好奇の視線から逃げるように、渉は一番後ろの席に腰を下ろした。


 ――あぁ、これだけで疲れた。

 そう胸を撫で下ろしたのも束の間、隣の席にいた生徒に肩を叩かれる。「はぁ……」と心の中で大きな溜息をつきながら視線を向ければ、にっこり微笑む正悟がいた。

「改めてよろしくね、桐谷君。わからないことがあったら遠慮なく聞いてね?」

「う、うん。ありがとう」

 渉はそう言ってから俯いた。

 ――君は仁さんの生まれ変わりなの?

 無邪気な笑顔を向けてくる正悟に問いかけてみたかったが……そんなことを聞いたら頭のおかしいやつだと思われてしまうことだろう。

「こっちはわからないことだらけだよ……」

 渉は膝の上で拳をギュッと握り締める。

 こうして夢にまで見た渉の高校生活は、妙な形で幕を開けたのだった。


 午前中の授業が終わり、渉は逃げるように教室を後にした。授業そのものは家庭教師が既に教えてくれていた範囲だったものだから特に問題はなかった。

 ただ、隣の席にいる正悟が気になって仕方がない。チロチロと横目で正悟を観察してみるのだが、やはり仁と瓜二つのなのだ。

 授業が退屈なのかシャーペンをクルクル回すほっそりとした指も、触れると柔らかそうな唇も、無造作に組まれた長い足に、眠い時に唇を尖らせる癖まで……。正悟を構成する全てのパーツが仁そのものに思えてならない。


 どこか静かな所で朝持たせてもらった弁当を食べようと、良さそうな場所を見つけて歩く。

 まだ半日しか経っていなかったが、正悟がどれだけ皆に好かれているのかを見せつけられてしまった、というのも心臓に悪い。休み時間になると、クラスメイトの男子が彼を取り囲んで何やら盛り上がっている。何も人気なのは男子生徒だけではない。女子生徒も代わる代わる正悟の席を訪れては、楽しそうな時間を過ごしていった。

 廊下に出れば、違うクラスの生徒から声をかけられてなかなかトイレにもたどり着けないようだ。それでも嫌な顔一つせず、皆と楽しそうに話をしている。きっとこんな風に優しい正悟だから、誰からも好かれるのだろう。

 何となく話しかけにくい雰囲気に圧倒されてしまい、朝の自己紹介以来、渉が声を発することなくあっという間に時間だけが過ぎて行った。






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