異世界転移したら魔王様に恋してしまいました〜幼馴染の束縛にうんざりします。私だって自由に恋したい!〜
よろしくお願いします。
幼馴染の定義ってなんだろう?私の考える幼馴染はあくまでも昔から付き合いのある友達という認識だ。
少なくとも束縛したり、将来絶対結婚しなきゃいけないという法律はない筈である。
なんて前置きは置いておいてまずは自己紹介します。私の名前は"黒崎 玲奈"。何処にでもいる平凡な女子高生だ。
まぁ…少し目つき悪いし、喋るのも苦手という欠点があるが、普通それぐらいなら怖がられるぐらいで済む筈だし、変に喧嘩を売られるなんて事はないだろう。
だが…
「黒崎さん!あんた、白雪君と付き合ってんの?」
「い…いやあの…た…ただの友達ですけど?」
また始まった。目立つ可愛い女子グループの絡み。毎日嫌になってくる。私はしどろもどろに彼とは唯の友人だと答えた。
すると女子グループはバカにしたように笑い始めた。学校は私にとって憂鬱でしかない。
「当たり前だよね?ほらぁ言ったじゃん!黒崎さんみたいな地味でキツい顔した女子が白雪君と付き合ってる訳ないって」
「つーか釣り合ってないしw」
「ちょっw本人の目の前でw」
あぁ…キツい…ウザい。釣り合ってるとか釣り合ってないとか知らない。私はそもそもアイツとは付き合ってないし好きでもない。でも怖くてそんな事言い返せる訳がない。すると…
「お前ら何やってんの?」
アイツ…"白雪 誠"が教室に入ってきた。すると女子達がビクッと震えた。
「白雪君!?」
「違うの!これは…」
そうやって言い訳しようとする女子達を無視し、彼はツカツカと私の机まで来て、私の腕を掴んだ。
「ちょっと!?」
私は振り解こうするが相手は男子。力が強い。
「帰るよ?玲奈」
彼は私の話を聞かずに腕をグイグイ引っ張る。痛い。引っ張られてる腕も女子達の恨めし気な視線も…。
そして帰り道。
「全く、俺がいなかったらどうなってた事か…。」
彼…白雪はやれやれと呆れた様子で言ってくる。私は
「それならアンタが私に構わなければいいでしょ?あの子達もアンタと私がこうやって話したり、一緒に帰ったりするからやっかみで言ってくるんだから!」
白雪は私の幼馴染である。幼稚園からの付き合いであり、親同士が仲良いのもあって自然と私達も仲良くなった。
白雪は色素の薄い髪に甘い顔立ちをした美形。運動神経も抜群。少女漫画に出てきそうな男性だ。
私も小学校低学年辺りまでは彼に好意を抱いていた。自慢の幼馴染だった。けど小学校高学年。恋愛に興味を持ち始める時期に差し掛かると私達の環境は変化した。
「ねぇねぇ玲奈ちゃん!なんでいつも誠君と一緒にいるの?私達だって誠君とお話ししたいのに!独り占めしないで!」
「〇〇ちゃん!誠君の事が好きなのに玲奈ちゃんとばかりいるからって嫌がってたよ」
なんて苦情が舞い込んでくるようになった。それにこの時期になると少し男女が仲良くすると変に仲を揶揄う人達も出てくる。私は段々女子達に避けられるようになって、白雪と距離を置こうとした。しかし奴は
「別に気にしなくていいだろ?それに玲奈は俺が居ないと何もできないじゃん?」
聞き入れてくれなかった。だから今度は黙ってそれとなく距離を置く作戦を行った。けど
「なんで最近俺のこと避けんの?俺なんか悪いことした?」
いや理由、前説明したやんと思いながらももう一回説明したが駄目だった。寧ろまた言ってくる奴がいたら代わりに文句言ってやるとか言い出した。
そしたら余計に私は女子に避けられるようになった。
そしてそれは中学まで続いた。その時私は一度仲良くなった男子がいた。彼はとても優しくて私の話も聞いてくれた。
白雪に対する好意が薄れた私は彼に恋をした。しかし、段々彼は私によそよそしい態度をとり始めた。
なんでそんな態度を取るのか、彼を捕まえて話を聞いた。
「白雪に…俺の幼馴染は何も出来ないから俺が居ないと駄目だし、お前に迷惑掛かると思うから離れた方がいいって…毎回言われて…」
最初の方ではそんな話は無視していたらしいが、毎日の様に繰り返し言われてキツい。だから距離を置きたいと言われた。
私はキレた。幾ら何でもやりすぎだ。私は白雪に直談判しに行った。だが彼から帰ってきたのは謝罪の言葉じゃなかった。
「なんでそんな怒ってんの?お前は俺が居ないと駄目だろ?つーか他の奴と付き合ったところでそいつに迷惑かけるだけじゃん。それでお前が相手に傷つけられる可能性を潰してやってんのにさ…。全く…」
駄目だ。こいつは…私を完全に見下している。確かに昔は、白雪は勉強もスポーツも出来るから彼に色んな事を教わってきた。だけど今では、彼から誘われても私が適当に理由つけて断ってきたので、そんな事は少なくなった。
私はこのまま白雪といると友人も彼氏も出来ない。そう思い進学先もワンランク落とした。白雪は頭が良いからランク上の高校に行く。そう思っていたのに…。
「もう良い加減にしてよ!私達は唯の幼馴染!解放してよ!何度も言ったよね?私とアンタが一緒にいる限り、私は彼氏も友達も出来ないの!」
「はぁ?俺はお前の為に言ってやってんのに!なんだよその態度!お前は俺がいないと…」
「何にも出来ないでしょ?もう聞き飽きた。私たちもう高校生だよ?アンタだって彼女作りにくいでしょーし、離れようよ。もう…」
私は白雪に今までの不満をぶつけた。だが
「いや?俺彼女いるよ?」
「は?」
「あれ?驚いた?でも安心しろよ。今まで通り俺がお前の世話焼いてやるから。」
何を言ってるんだ?こいつは。
「たく、他の奴に迷惑掛けると思って…わざわざお前と同じ高校?お前のお母さんに聞いて変えてやったんだぞ?」
こいつお母さんにも聞いたの?それで私を追いかけてきた。
私は冷や汗が流れた。怖い。
「んで?俺に彼女出来たのに対して何とも思わねえの?」
「お…思わないよ!私たちは唯の幼馴染!そんな拘束力なんかないし!アンタにだって私を拘束する力なんてない!
お願いだから放っておいてよ!」
私は走り出した。怖かった。なんでもいいからこの幼馴染と離れたかった。
すると白雪も追いかけてきた。
「待てよ!」
白雪はそう言って私の腕を掴んだ。するとその瞬間、眩い光が私たちを包み込んだ。
「きゃあああ!」
「うわぁぁぉ!」
私たちは光に吸い込まれた。
光に飲み込まれ目を開けると、そこは見知らぬ部屋だった。
部屋は暗く、周りには松明が輝いていて、何やら黒いローブを着た人達がいた。
「玲奈?大丈夫か?」
隣には白雪がいる。暫くすると王冠を被ったおじさんが現れた。
「おぉ!勇者様!我らの国をお救い下さい!」
おじさんが急に叫び出した。私はつい肩をビクッと跳ねさせた。白雪はそれを見て私の肩に触れようとするが、嫌悪感しか感じずつい避けてしまった。
するとおじさんは何やら考え込み始めた。
「….しかし二人か…。鑑定人を呼べ!」
そして暫くすると鑑定人と呼ばれた黒いローブの人が何やら私達二人を凝視し、おじさんに耳打ちした。
「そっちの女は森にでも捨てておけ!」
え? すると驚く間もなく、甲冑を着た人達が現れ私は拘束された。それを見た白雪が激昂した。
「おい!玲奈に触るな!玲奈に手を出すな!」
すると突然白い雷の様な光が甲冑の人達に浴びせられた。すると王冠のおじさんが感嘆の声を上げる。
「これぞ!勇者の力!しかし…失礼しますぞ?勇者殿。」
おじさんが合図すると黒ローブの人達がなにやら呪文を唱えた。すると白雪の動きが止まった。
「な…なんだよ…これ…」
「悪いが我々に必要なのは勇者のみ!古より二人の転移者が現れた場合、片方は国に災いを引き起こすとされている!
この国で処理すれば何が起こるか分からんからな?そっちの女は森にでも捨てておけ!」
するとまたもや同じ甲冑を着た人達が現れ私は連れて行かれた。
「は…離して!やめて!」
「玲奈!クソ…玲奈…玲奈!」
私の抵抗も白雪の叫び声も虚しく私は無理矢理外に連れ出された。
「キャ!」
私は森の入り口に馬車で連れてこられ、そのまま突き落とされた。
「ちっ!国に災いをもたらす魔女め!」
そう暴言を吐かれ、馬車はさっさと行ってしまった。
「私が何したってんのよ…」
私の人生は私の物なのに…。唯でさえ束縛してくる幼馴染に絡まれて、親からは将来は白雪と結婚しろとか言われて、訳わかんないところに着いたら、何もしてないのに森に捨てられて
「でも…良いか…。もう疲れた…」
正直どうでも良い。拘束されてるし動けない。そういえば最後白雪は私を守ろうとしてたっけ?
でも私はアイツを好きになれない。アイツを最後に名前で呼んだのは何年前だろう?
「いいや…どうでも…」
私は目を閉じて、考えを放棄した。…その様子を誰かに観察されてる事を知らずに…
いつの間にか寝てしまったようだ。
「あれ?ここ何処?」
そこは大きなベッドの上だった。拘束も解けている。そして服も制服ではなく、サラサラとしたネグリジェだ。
周りもピカピカで豪華な部屋なのは分かる。するとドアを開く音がした。
「目が覚めたか…」
そこには頭に山羊のような角を生やした男性が立っていた。
体格はがっしりしていて、長身。顔立ちは男らしく凛々しい黒髪に金色の目が特徴的な美丈夫だ。
「え…えっとここは?あ…あなたは誰?」
「ここは魔王城。そして俺はメビウス。魔王だ。」
魔王?魔王ってあの魔王か?
私が目を丸くして凝視しているとメビウスは眉間に皺を寄せた。
「貴様…人に名を尋ねておいて、自分は名乗らんのか?」
「ひ…す…すみません!私は玲奈と言います!」
「ほぉレナか…。何故貴様はあの森にいたのだ?」
私は取り敢えず今までの経緯を説明した。
「成程な?奴ら…まだ諦めておらぬのか…。異世界転移にまで手を出しおって…」
と、なにやらブツブツと呟いた。
「おい。貴様は異世界から来たのであろう?ならば異世界の話を聞かせろ?」
「ふえ?い…異世界って私のいた場所ですか?」
「それ以外あるまい。さあ!話せ!」
私は当たり障りなく自分のいた世界について話した。アニメという動く紙芝居のようなものがある事。車という鉄でできた人を乗せる乗り物がある事。
どうやら今いる世界は私や白雪がいた世界とは違うらしく、魔法と剣の世界らしい。
だからこそ科学的な物に興味をもったのだろう。ふむふむと興味深そうに聞いてくれてる。
なんか新鮮だ。私の話なんて元の世界では誰も聞いてくれない。やっと友達できても、白雪の事ばかり聞いてきて私を白雪との橋渡しとしか思ってない人ばかりだし。
好きな人が出来て、仲良くなっても白雪がある事ない事吹き込んできて結局距離を置かれる。
白雪は白雪で私のお願いなんか聞いてくれない。親も白雪の事を相談しても、
「誠君がそんな事する訳ないでしょ?きっと玲奈の気を引きたいのよ?そんな事ばかり言ってると誠君に嫌われるわよ?」
白雪に解放されるなら嫌われた方がいい。私はボロボロと涙が溢れた。
「な…何故泣く!?」
「すみません…私…人に真剣に話を聞いてもらったの…久しぶりで…嬉しくて。」
メビウスが泣いてる私を見て慌て出した。嬉しかったのだ。単純に話を聞いてくれる事が。
「そ….そうなのか…。いきなり泣き出してびっくりしたであろう?ほらこれ使え!」
メビウスがハンカチを出して差し出した。意外と女子力あるなぁと場違いに思いながらも…そうやって慌てるメビウスがなんか可愛くてつい笑ってしまった。
「今度は何だ?笑い出して。」
「ふふ…何でもないですよ?魔王って聞いて怖い人だと思ってたけどメビウスさんは優しいんですね?」
そう私が言うと、メビウスが顔を背けてしまった。しかし耳がほんのり赤い。
「俺は優しくなどない!今はゆっくり休め!…また来る。」
「はい!ありがとう御座います。メビウスさん!」
「…メビウスでいい。じゃあな」
メビウスは部屋から出ていった。
そして数日
私はメビウスの元でお世話になっている。流石に無料で居座る訳にいかないのでメビウスに仕事が欲しいとお願いするが、
「お前は俺の話し相手になってくれれば良い。」
と言われる。
しかも扱いも破格である。メイドさんもついていてお世話されている。お陰で城のメイドさんと仲良くなってしまった。
なんか今まで同性の友人がいない事を話すと、マジで?という顔をされ、何故か甘やかされる。
この城の人達は皆私の話を聞いてくれる。元の世界と大違いだ。
「レナ…お前はよく笑う様になったな?」
「そうですか?だとしたら、この城の人たちのお陰です。」
そう私が言うと、そうかとメビウスがふわっと微笑んだ。
その微笑みを見た時、私の心臓が跳ねた。顔に熱が集まるのが分かる。
「どうした!?まさか風邪か?今直ぐ休め!」
「わぁぁ!違いますよ!風邪なんて引いてないです!」
メビウスは過保護だ。
…白雪も過保護だがアイツは必ず、俺がいないとお前は駄目と言ってきて、嫌味ばかり言ってくる。
早退する時は一緒に帰ると言い出したり、欠席すれば家に必ず来る。それが面白くない女子に後日悪口を言われる無限ループ。
「白雪と大違い…」
「む?シラユキとな?」
つい言葉に出てしまった。そしてそれを聞き取ったメビウスは白雪は誰かというのをしつこく聞いてきた。
私は諦めて白雪について説明した。…メビウスに嫌われたくないから悪口っぽくならない様に気をつけながら…。
しかし私が気をつけて話した甲斐もなくメビウスは不機嫌な顔になった。
「レナはシラユキの事を好いてるのか?」
「え?いやいや違いますよ?私と白雪は唯の幼馴染ですし。私は白雪にそんな感情を持ってないですよ?」
私がそう断言するとメビウスは何故かほっとした顔になり、
「そうか…ならばレナ…俺と」
メビウスが何か話そうとするとドゴーンと大きい音がなった。すると外から聞きたくもない声が聞こえた。
「玲奈!俺だ!誠だ!迎えに来たぞ!」
白雪である。…なんでここに来た。やっと解放されたと思っていたのに…。私は震えが止まらなかった。
するとメビウスが優しく私を抱きしめた。
「レナ…安心しろ。俺がお前を守るから。」
「メビウス…」
するとメビウスが背中から蝙蝠のような翼を広げて白雪の元へ飛んでいった。
-side白雪
俺には幼稚園の頃からの幼馴染がいる。幼馴染の玲奈は昔から引っ込み思案で人と話すのが苦手。いつも一人でいた。
しかし俺の母と玲奈の母が仲良しでよく会ってたから必然的によく遊ぶ仲になり、玲奈も俺には心を開いてくれた。
それが俺には優越感を感じられるところである。
しかし小学校高学年から玲奈は俺を避ける様になった。玲奈が言うには俺といると他の女子に文句言われるとか。
ならば俺が玲奈を守ればいいと提案し、玲奈に文句を言ってきた女子にガツンと言ってやった。けれど玲奈の表情は晴れなかった。
中学で玲奈は同級生の男子と仲良くなった。見ていて分かる二人はお互い両思い。俺は何故か面白くなかった。
玲奈は俺がいないと一人になる。なにも出来ないのだ。だから彼氏ができても直ぐ振られるに決まってるし、それで泣きつかれるのも俺だ。
だから俺は男子の方に玲奈は止めた方がいいと忠告して自然消滅した。
親からはよく
「玲奈ちゃんみたいな子と結婚できるといいね。」
と言われてきた。
あの玲奈だ。どうせ売れ残る。俺が貰ってやるか…。俺は仕方ないと諦めた。
そして高校。俺は何も出来ない玲奈に合わせて進学先も変更した。親に文句言われたが、俺の幼馴染が人様に迷惑を掛けるなど俺の評判も落ちかねない。
俺は引き続き玲奈の世話を焼く事にした。
しかし玲奈から何故か拒絶された。試しに彼女いると嘘ついてみるが反応なし。なんで?俺が取られるって不安にならないのか?
すると俺たちは光に吸い込まれ異世界に飛ばされた。
俺は勇者として転移したらしい。しかし城の連中は何故か玲奈を城から追い出した。ふざけるな。玲奈は俺がいないと何もできないんだぞ!
魔王を倒して領地を増やす?魔物を根絶やし?知るか!そんなもの!自称国王が俺を呼んだ理由を説明するが頭に入ってこない。
俺は自分を動けなくしていた魔法が解除された後直ぐに、あの白い雷で周りに攻撃した。特に俺の動きを止めてた奴を重点的に攻撃した。動かなくなったが知った事ではない。
俺は勇者の力で脅迫して玲奈の居場所を探させた。すると、玲奈は魔王城にいると発覚して俺は急いで魔王城へ向かった。
良かったな?魔王成り行きで倒せそうだぞ?
-side玲奈
メビウスと白雪が対峙する。
「おい?俺はお前に用はない。玲奈を出せ!」
「レナ?知らんな。何か勘違いしているのではないか?早々に立ち去れ人間。」
すると白雪が白い雷を出現させる。
「嘘つくな!ここにいんのは分かってんだよ!アイツには俺がいないと駄目なんだよ!アイツだって俺と会う事を望んでる筈だ!」
するとメビウスの眉がピクッと動いた。
「本当にそう思ってるのか?」
「はぁ?」
「レナがお前に会いたがってる?本当にそう思うのか?」
すると白雪が鼻で笑った。
「当たり前だろ?あいつは俺がいないと一人なんだよ?アイツだって寂しがってるに決まってるだろ?」
「それはお前の決めつけだろ?玲奈本人から聞いた事あるのか?」
「ない…けど!俺達は幼馴染だ!俺が玲奈の事を一番理解している!」
白雪が吠える。滑稽だ。誰よりも私を理解してないのに…。
「ほう?だがレナは城のメイドや城下に住む魔族達と仲良くやってるぞ?寧ろ一人の所なんて見たことがない。」
「は?」
「確かにレナは不器用だな?手伝おうとして皿を割った事もある。だがきちんと謝り、片付けも直ぐにする。まぁ…素手で拾おうとするのは危なっかしいがな?
だがそんな一生懸命な所が愛おしい。」
私の顔に熱が集まる。きっと今顔は真っ赤だ。愛おしい?
それはどう言う意味だろうか?
「俺はレナを愛している。表情をコロコロ変えるところも、一生懸命なところも…話を聞いてやるだけで嬉し涙を溢すくらい涙脆いところも全て…。お前がレナを一番理解している?
巫山戯るな!玲奈はお前に人間関係も壊され、支配され、ずっと悩んでいたのだ!それすらも理解しておらんくせに…レナの事を偉そうに語るな!」
…嬉しかった。私の事をそんな風に思ってくれていた事が。そして改めて思った。私はメビウスに恋してしまっていた。
白雪は下を向きプルプルと震えた。すると
「….ふざけんな…。おい、玲奈はどこだよ!出せ!出しやがれ!」
すると白雪は片手に白い光を集めだした。何となく危険な感じがする。
「白雪君!」
私は窓から顔を出して、白雪に声を掛ける。すると白雪が笑顔になった。
「玲奈!助けに来たぞ!」
だったら放っておいて欲しかった。私はメビウスに視線を送る。するとメビウスは察したのか私を迎えに来てくれた。
「大丈夫なのか?レナ?」
「はい…一度話しておきたいし…ふふ…視線だけで来てくれるんだもの、メビウスは私の一番の理解者ですね?」
するとメビウスはふわっと笑う。
「…俺もそばに居る。決着が着いたらお前に伝えたい事がある。いいか?」
「はい!勿論!」
なんて会話してると白雪が声を荒げた。
「何モタモタしてんだ!玲奈早く俺のところに来い!」
空気読め!KYめ!
私はメビウスに連れられ、白雪と対峙する。すると白雪が、両手を広げて近寄ってきた。
「玲奈!迎えに来たよ!さあ!俺と行こう?」
「近寄らないで!」
私はビシッと言った。すると白雪は不機嫌になった。
「はぁ!?俺が折角迎えに来たのになんだよ!その態度!」
「心配してくれたのはありがとう。けど私はあんたのさっきの自分勝手な主張?あれ聞いて更にあんたと関わりたくなくなったよ!」
もううんざりだ。私はもう一人じゃない!これまでの鬱憤ぶつけてやる!
「いい?幼馴染には拘束力なんてないの!唯の他人なの!確かに昔はあんたがいてくれて嬉しかった。けどやり過ぎだよ!私言ったよね?もう大丈夫だよって!距離も置いてみようって!なんで私の意見も聞いてくれないの?」
「…五月蝿い!お前は俺がいないと一人なんだ!そうじゃなきゃ駄目なんだよ!なんで自立しようとするんだよ!なんで、俺以外の男と付き合おうとすんだよ!
お前は俺と居るのが一番幸せなのに!」
「それはレナが決める事だ。レナの幸せはレナの物。お前のものじゃない。」
「黙れ!魔王の癖に!お前が玲奈を洗脳したんだろ!」
するとメビウスがため息をつき何やら野球ボールサイズの白い玉を取り出した。
「言っても分からない様だな。仕方ない。お前には元の世界に帰ってもらう。」
するとパァと私たちが来た時に見た白い光が現れた。
「"渡りの光"…本来はレナを元の世界に帰すために作っておったが…」
すると白い光が私と白雪を吸い込もうとする。しかしメビウスが私をしっかり抱きしめる。
「待て!俺を帰すなら玲奈も!玲奈!俺と帰ろう?」
白雪が手を差し伸べる。けど
「ごめん私は帰らないよ…。帰りたくない。もうあんな日常に戻りたくない。」
私はポロポロと涙を溢した。また白雪に支配される。下手すれば親によって白雪と結婚させられて一生…。
するとメビウスが私を更に強い力で抱きしめた。
「…レナ?もしもレナが望むならこの世界に残ってほしい」
優しい声で囁く。
「そして…俺の伴侶になってくれないか?」
真剣な表情で見つめてくるメビウス。今、プロポーズされてる?…答えは決まってる。
「私…私はメビウスが好き。メビウスのお嫁さんになりたい。ずっとここにいたい!」
そう告げてメビウスを抱きしめ返した。
「そんな…嫌だ…玲奈がいない世界なんて…玲奈…玲奈!」
白雪は悲痛な顔で光に飲み込まれた。
「ごめんね…誠…」
私は何年かぶりに彼の下の名を呼んだ。
そして数年後
正に怒涛の日々だった。花嫁修行や王妃教育、かなり時間がかかった。けれどメビウスは待っていてくれた。私も彼に恥をかかせないように頑張った。
時間は掛かったけど、彼とめでたく結婚する事ができ、幸せの絶頂を満喫した。
「メビウス!これからも末永くよろしくお願いします!」
「あぁ…シラユキが束縛したがるの…分かる気がするな…」
何やらメビウスがボソッと呟いた。
「何かおっしゃいました?」
「いや…気にするな。それよりもまた異世界の話聞かせてくれ。今日は飛行機とやらの話を聞きたい。」
私たちはこの魔界でこれからも幸せに暮らしていきます。
ここまで読んで下さりありがとございます!