第3回・アジア系少女機関銃手の活躍・後編
マキシム機関銃が彼女の唸るような叫び声と共に火を噴きドイツ兵どもを仕留めていきます。
彼女の最初の掃射で20名程が撃ち殺されてドイツ軍は一時撤退します。
その後、ドイツ軍は再び迫撃砲で彼女の機関銃座を破壊しようとしました。
“ヴォヴォーン!”
「ウゥッ!」
彼女は頭に破片が当たり気絶してしまいます。しかし意識を取り戻した彼女は再び射撃を開始します。
「上がってくるナチスどもめ、1人残らず撃ち殺してやるわ!」
“ドドドドドドドッ!”
第2波の攻撃を開始したドイツ軍に迎撃掃射を開始する彼女。
砲弾の雨に味方のライフル歩兵も次々と戦死し、隊長は一旦の撤退を決断します。
「全員撤退するぞ!」
上官の命令下達に顔をしかめるマンシューク。
「同志上官殿!わたしが残って援護します!」
あくまでも死守する覚悟のマンシュークでした。
連隊の兵士アクメツァノフは、一緒に退却するよう何度も求めます。
しかし彼女は
「わたしが撃つのをやめたら、ドイツ軍はもっと前進してきて、みんな殺されてしまいます!」と拒否。
更なる砲撃と迫撃砲の連射で、一時助けに来た残りの機関銃隊員も戦死してしまいます。
「こうなったら、わたし1人でやるしかないわ!」
彼女は3つの機関銃の位置を移動しながら、前進してくるドイツ軍部隊に1人で撃ち続けました。
「かかって来なさいよ!」
「わたしが相手よ!」
“ドドドドドドドッ!”
彼女のマキシム機関銃が再び火を噴きます。
他の兵士は戦死するか退却してしまいました。
“ヴォーン!”
「アッ!」
マンシュークの男性装填手も被弾し息絶えてしまいます。
「コノヤロ~!!」
“ドドドドドドドドッ!”
絶叫しながら迫りくるドイツ軍兵士を狙い撃ちにする彼女。
敵が前進してくる様子を見ながら3挺の機関銃を移動しながら交互に撃ちまくる彼女でした。
全方向の敵を制圧しなければならなかったのです。
「まとめて撃ち殺してやるわ!」
「ソレソレ~!」
“ドドドドドドドドッ!”
バタバタと薙ぎ倒されるドイツ軍兵士達。
ドイツ軍もまさか実戦初体験の21歳の少女が1人で応戦しているとは考えていませんでした。
彼女の銃撃によってすでに30名以上の損害を出していたドイツ軍は、再び彼女の陣地に迫撃砲を撃ち込み始めました。
“ヴォーン!”
“ヴォーン!”
“ヴォーン!”
「あぁ~!!」
マンシュークは頭部に重傷を負い、意識を失いました。
機関銃による射撃が止んだのを見て前進を開始するドイツ軍部隊。
彼女が意識を取り戻して目を覚ますと、ドイツ軍兵士の一団が彼女の陣地のすぐ近くまで来ていました。
「ここは渡さないわ!」
「喰らいなさい!」
“ドドドドドドドドドドッ!”
マンシュークは、近づいてくるドイツ軍兵士に至近距離から掃射しました。
「クタバレ~!」
「ケダモノどもめ!」
“ドドドドドドドドドドッ!”
彼女の浴びせる銃弾の雨に次々と打ち倒されるドイツ兵達。
あっという間に20名近いドイツ兵が彼女に撃ち殺されました。
そして1人のドイツ兵の投げた手榴弾により彼女は絶命します。
“ヴォーン!”
「ウッ!」
ドイツ軍はやっとの事でこの高台を占領しました。
その代償は大きく、彼女に撃ち殺されて戦死したドイツ軍兵士は72名に上りました。
占領したドイツ軍兵士達は抵抗していたのが、まだほんの若い少女たった1人だった事に大変驚きました。
その後、すぐにソ連軍も再度攻勢を開始し、この丘を再度占領します。
戦友達は頭部に重傷を負って戦死した彼女の遺体と陣地の周りに累々と散らばるドイツ軍兵士の多くの死体を発見しました。
この功績により、1944年3月1日、上級軍曹マンシューク・ジエンガリエヴナ・マメトワにソビエト連邦英雄の地位が与えられました。
彼女の遺骨は、このネヴェルの地に埋葬され、彼女の勇気を称える記念碑が建立されました。
機関銃手が誠に短命なのは宿命だったのです。