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ソビエト軍少女兵戦記  作者: Kateryna Sheremska
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第3回・アジア系少女機関銃手の活躍・前編

今回は第3回目のソビエト少女戦兵戦記になります。


今回取り上げるのは、マキシム機関銃の射手として大活躍したカザフスタンのヒロイン、マンシューク・マメトワさんです。

彼女はカザフスタン・ウラル州ウルディンスキー地区ジェスクム村出身のカザフ女性です。

今回のシリーズ第8回目で取り上げる予定の女性スナイパーのアリーヤさんと並んで有名なカザフ女子戦士の一人なのです。

そして女子機関銃手としては後に取り上げる予定のニーナ・オニロワさんと並ぶ機関銃ヒロインなのです。

この機関銃手は専門的な技術の習得や訓練が必要な狙撃手と違い、比較的短期間での養成で実戦参加が可能な上に短時間で一度に大勢のドイツ兵を撃ち殺すことができるため、ナチスを大勢殺したい女子にとっては大人気でした。

当時、戦闘参加に志願した女子達はできるだけたくさんのナチスを殺してやりたい!

という執念深い願望を抱いている女子が大勢いました。

狙撃兵は自分の身を隠しつつ、たくさん殺せるというイメージがあったことから、こちらも希望者が多かったようです。

とはいえ、独ソ戦に参加した女子狙撃手は約2500名で戦果は確認数だけで12000名以上殺害。

実数は少なく見積もってもこの倍以上で、常識的には約3倍、

36000名以上のドイツ軍兵士を撃ち殺した事になり、実に14倍以上の敵を殲滅させた訳ですから、ソビエト女子達の実力も大したものなのです。

しかしながら、終戦まで生き残った狙撃女子は約500名ということで、

女子狙撃手の致死率は約80%に上り、常に死と隣り合わせの職務だったと思われます。

大戦を生き残った女子達も実は皆重傷を負って入院した経験を持っています。

あの309名殺害のパブリチェンコさんでさえも2度の負傷を経験しました。

そして致死率の極めて高い狙撃手なのですが、機関銃手は更に致死率が高く短命でした。

機関銃手は狙撃兵と違って殺した相手の人数やスコア順位などの記録がありませんので不明な部分も多いのですが、今日登場するマンシュークさんも後に取り上げるニーナさんも誠に短命でした。

また、機関銃手は狙撃手ほど人数が多くなかったようですので当ブログで取り上げる2大機関銃ヒロインは特に個人的な記録がいろいろな資料に残されていました。

   マンシューク・マメトワさんは1922年10月23日、ウラル州(現カザフスタン共和国)ウルダ地区で生まれました。

彼女は医学の勉強をしたり、政府機関で秘書をしたりしていました。

そして1942年8月13日に志願兵として赤軍に入隊し、第100カザフ独立歩兵旅団に配属されました。

最初の頃、彼女はは司令部の中で事務員として勤務していました。

そして医学の知識があった事からその後部隊の野戦病院で看護兵として従軍するようになったのです。

しかしながら、どうしても戦闘に参加して、大勢のドイツ兵を殺したいと思っていたマンシュークは、野戦病院での勤務の空き時間に機関銃「マキシム」の構造を研究し、正確な射撃技術を身につけていきます。

第100カザフ独立歩兵旅団は、兵士の86%がカザフ人であったため、「第100カザフライフル旅団」とも呼ばれていました。

戦時中、彼女は同じ機関銃手のヌルケン・フサイノフと恋に落ちました。

しかし、彼に告白することができず、その気持ちを友人にしか伝えていませんでした。

当時の彼女は誠に奥ゆかしい性格だったのです。

そして、機関銃の射撃を習得した彼女は、やっとのことで同旅団の機関銃手として配属されることとなりました。


1943年の初秋の頃の事です。

マンシュークが実戦を経験した初めての戦闘は1943年10月15日、ネヴェル郊外での戦闘でした。

彼女の部隊は当地の高台を占拠しようと攻撃を仕掛けていました。

小高い丘の上にはドイツ軍の機銃陣地があって、ソ連軍の攻撃が停滞していました。


「同志隊長殿!あの丘を取らなければなりません!」


遅々として丘を奪取できない状況にマンシュークは少しイライラして上官に進言します。

「あそこにわたし達のマキシム機関銃を据え付ければよいのですが・・。」


「敵の機関銃座を破壊しなければ・・。」

攻撃に慎重な上官でした。


「わたしにやらせて下さい!」

「わたしがあの機関銃座を破壊して見せます!」


そう言うと、マンシュークは単身で丘陵を腹ばいになって這って進みます。


「あの銃座、わたしが仕留めてやるわ!」


「待ってなさい!」


敵の機銃に狙われる急斜面は男性兵士でも尻込みするような場所です。

小柄な少女マンシュークは逆に敵に見つかりにくかったのです。

彼女は目立つので銃も持たず、腰に下げた袋に手榴弾を幾つか忍ばせていました。


「こうなったら、奴らが銃身を交換するタイミングまで待たなきゃ。」

こうして、敵の射撃が一旦止みます。


「今だわ!」


「それっ!」


彼女は渾身の力を振り絞ってドイツ軍機関銃座に手榴弾を投げ込みます。


“ヴォーン!”


「もう1つよ。」


「エイッ!」


“ヴォーン!”


少し間を開けて更にもう1つ手榴弾を投げ込む彼女。


「トドメよ!」


「エイッ!」


“ヴォーン!”


「やったね!」


「これで、奴らは全滅したかも・・。」


敵の機関銃座にはトーチカのような屋根は無く、銃眼の開いた壁だけだったのです。

彼女の投げ込んだ手榴弾は容易に機関銃座のドイツ兵を吹き飛ばし、あっと言う間に制圧することができました。

もくもくと煙の立ち上るドイツ軍の機銃陣地。


「生き残りを始末しなきゃ。」


マンシュークは一旦自軍陣地に戻るとサブマシンガンを手に再び丘陵を駆け上がります。

敵の銃眼の向こう側にはドイツ兵の死体が累々と横たわっていました。


「全部わたしがやったんだわ。」


彼女に手榴弾を3発投げ込まれた陣地内には6名のドイツ兵の死体が転がっていました。

そして壁から一番離れた場所に横たわる7人目のドイツ兵は負傷していて、傍らの銃に手を伸ばそうとしていました。


「アイツめ!」


この兵士の所に駆け寄るマンシューク。

銃を取ろうとした男の手をブーツで踏み付けます。


「コイツッ!」


「これでもかっ!」


“ババババッ!”


男の左腕をブーツで踏み付けたまま彼の胸部にマシンガンで容赦なく銃弾を撃ち込む彼女。


「これで全滅だわ!」


満足そうに笑いながら自軍の兵士たちに手を振って合図をする彼女でした。

味方の兵士達が丘の上に上がってきました。


「よくやった、マンシューク!」

上官が彼女を抱きしめて褒め称えます。


マキシム機関銃を3挺、全方向に向けて据え付けた彼ら。

すると間もなくドイツ軍が迫撃砲で反撃を開始します。

次々と着弾する迫撃砲弾に仲間の兵士が薙ぎ倒されていきます。

機関銃座を担当する隊員も爆発で吹き飛ばされて次々と戦死していきます。


「こんな事になるなんて・・。」


味方の戦死者を見つめながら唇を噛むマンシューク。

3つあった機関銃座の内2つに着弾し、それぞれの男性機銃手は戦死してしまいます。

マンシュークの機銃だけが生き残りました。


「わたしは絶対に負けないわ!」


ドイツ軍歩兵部隊の第1波が攻撃を開始しました。

迫撃砲で機銃を黙らせたと思い込んでいたドイツ軍。

100名以上のドイツ兵が彼女の陣地に迫ります。


「覚悟しなさい!」

「ソレ~ッ!」


“ドドドドドドドドッ!”


「エ~イ!」


“ドドドドドドドドドドドッ!”


彼女の正確な銃撃がドイツ兵を次々と薙ぎ倒していきます。

倒れ込んで負傷したドイツ兵にも容赦なく銃弾を浴びせ掛ける彼女。


「みんなの仇を取ってやるわ!」

「ホラッ、掛かってこい!」


“ドドドドドドドドドドドッ!”


後編に続く・・

(次回の更新は4月16日0:00です)

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