最終回・特別編・少女破壊工作員達の活躍・第2部
1942年5月、わたしの女子破壊工作員グループに3名が新たに加わり12名でミンスク地方のボリソフ地区のドイツ軍戦線の背後に派遣されることが決定されました。
しかしわたし達に準備期間は殆ど無く、空挺隊員として必須のパラシュート降下訓練すら受けていませんでした。そしてわたし達はパラシュートでの着地の経験も無いまま出撃しなければなりませんでした。
わたし達は不安を押し殺しての出発でした。
でも案の定、パラシュート降下の際に問題が発生しました。
暗闇の中、降下した12名の女子隊員の内タマラ・マカンコ、ターニャ・ヴァシュチュク、ターシャ・アレクシーワの3名がパラシュートを開くタイミングが遅れ墜落して死亡します。
更にジーナ・モロゾワが着地に失敗して背骨を骨折しました。
彼女は任務を続行できなくなった上に森の中の粗末な隠れ家の中で1ヶ月後に亡くなりました。
更に数日後、降下に成功した8名の内の2人ターニャ・ラピナとサーシャ・リシツィナがドイツ軍に拘束されました。
ターニャはドイツの強制収容所に移送され、あらゆる恐怖を経験し終戦後に帰国しましたが、サーシャの運命については未だ不明となっています。
これらの困難な状況下でわたしの分遣隊は半数の6名になりました。
実はしばらくの間赤軍本部ではわたし自身が着地に失敗して墜落死したものと思われていました。
でもわたしは生きていたのです。そして生き残りの女子隊員と共にドイツ軍への破壊活動を始めようとしていました。
ただ人数が半減したため、わたし達は補助要員を現地でスカウトすることにしました。
現地のコムソモールの誰かをスカウトできないかと思い、幾つかの村で秘かにリクルート活動をするわたし達。ちょうどドイツ軍の侵攻前にオソアビアヒムサークルで銃の扱い方などをひと通り学んだ15歳と16歳の少女達10名が参加を表明してくれました。
この頃はドイツ軍が駐留していたためにコムソモールは全く機能しておらず、武装できるような武器は全て接収されてありませんでした。
「この娘たちの服装、どうする?」(ニーナ)
「こんな格好じゃ戦えないよね。」(ジーナ)
「何かないかしら?」(わたし)
わたし達は少女達の案内で今は無人になっているコムソモールの建物の奥の倉庫に行きました。
すると武器はありませんでしたが、誰も使わない赤軍の軍装品がありました。
わたし達女子隊員は皆記章の無い赤軍の軍服を着ていました。
カーキ色のジャケットにカーキ色のパンツ、それに黒いブーツに赤い星の付いた帽子です。
倉庫には同じような軍服がたくさんありました。
どれも使い古しで使用感があって汚れていました。
それにブーツも履き込まれていて大分汚れていましたが十分に履ける状態でした。
それでも数は豊富にあって、少女達は皆自分達に合うサイズの服とブーツを選びました。
農民の娘たちは貧相な服装からカーキ色の軍服に着替え黒く光ったブーツを履きます。
まだ若い少女達でしたが赤軍の服を着ると凛々しい姿になりました。
「中々似合うわ、服装はこれでいいわね。」(わたし)
「あとはこの娘たちの武器をどうするかよね。」(ゾーヤ)
「わたしにいい考えがあるわ。」(わたし)
わたしは敵の倉庫から武器弾薬を奪い取ろうと考えていました。
地元住民からの情報で村はずれの森の入り口に小ぶりな小屋があって、そこに敵の武器弾薬が集積されているらしいとの事でした。
確かにこの小屋には随時2名の歩哨が立っていました。
わたし達は深夜に少女達10名を連れて全員でこの弾薬庫に向かいます。
薄明りの中でドイツ兵が2人小屋の前にいました。
この時のわたし達は3名の仲間が死亡し1名が重傷、2名が捕まって処刑された可能性が高く、もう失うものは何もありませんでした。
だから大胆な行動を平気でできるような心理状態だったのです。
女子隊員4名と少女達10名は森の中に隠れてわたしとニーナがドイツ兵の所に平然と歩いていきます。
記章類は付いていませんでしたが赤軍の軍服にブーツ姿そのままの格好でです。
わたしもニーナも右手に銃剣を握りしめて後ろ手に隠し持ち、左手を振りながら笑顔で彼らに近づいていきます。
ドイツ兵が若い女性に優しくすぐに気を許すのは分かっていました。
案の定、彼らはわたし達の姿を見ると一瞬銃を構えましたが、わたし達の笑顔に騙されてすぐに銃口を下ろします。
そして“こっちへ来い!”と手で合図を送ってきました。
“よし、チャンスだわ!”
わたし達はゆっくりと歩いて行き、彼らの目の前で立ち止まり、彼らが油断しているのを確認してから2人で同時に彼らに飛び掛かりました。
「コノヤロ~!」(ニーナ)
もちろん手にした銃剣を男の腹部に突き刺しながらです。
「くたばれ~!」(わたし)
わたしの突き刺した銃剣はみるみる内に彼のお腹に食い込み、男はそのまま倒れ込みました。
ニーナが襲い掛かった男も同様に腹部を抑えながら仰向けに崩れ落ちます。
わたしは男の傷口を、ニーナは男の顔面をブーツでシッカリと踏み付けて森の仲間に合図を送ります。
クスクスと笑いながら走ってきた少女達。
女子隊員の4名に連れられて倉庫の扉を開けて中に入り、有りったけのサブマシンガンを肩に掛けて、弾倉や手榴弾を袋に目いっぱい詰め込んで、更に爆破に使えそうな地雷も多数奪い取ります。
小屋の外に出てきた彼女達。
15歳の少女リーナがつぶやきます。
「そいつらどうするんですか?」(リーナ)
「もちろん始末するわ。」(わたし)
「じゃあ、わたしにやらせて下さい!」(リーナ)
彼女は両親をドイツ軍に殺されていたのです。
怒りと復讐心でいっぱいの彼女を制止することはできませんでした。
ジーナがサブマシンガンを彼女に渡すとわたしが踏み付けている男に銃口を向けます。
わたしが足を離した瞬間です。
“ババババババババッ!”
容赦なく無言で引き金を引くリーナ。
重傷の男はひとたまりも無く息絶えました。
そして今度はニーナが踏み抑えている男の方に向かいます。
ニーナがゆっくりと足を上げて男を見ました。
「コイツもう死んでるみたい。」(ニーナ)
「きっとあなたのブーツで窒息したのよ、アッハッハッ!」(ジーナ)
「コイツ~!」(リーナ)
“ババババババッ!”
それでも銃弾を浴びせるリーナ。
「フン、いい気味よ!」(リーナ)
憎いドイツ兵を撃ち殺して少し落ち着いたのかやっと笑顔に戻った彼女。
わたしは手榴弾を小屋の中に投げ入れます。
“ヴォヴォーン!!”
凄まじい爆発音と共に派手に燃え上がる弾薬庫。
わたし達は燃える小屋と無残に殺害された2人のドイツ兵の死体を残して足早に立ち去りました。
エレナと仲間の少女兵
森の中の隠れ家
休憩中の女子破壊工作員達
ドイツ軍を襲撃する女子破壊工作員
肉親を殺されて復讐心に駆られるパルチザン少女
第3部につづく・・。
次回の更新は2月18日(0:00)になります。




