第10回(最終シリーズ)・257名を葬った17歳の少女 第1部
いよいよこのソビエト軍少女兵戦記シリーズも最終回を迎えました。
第10回は257名のドイツ兵を殺害した17歳の狙撃兵の少女カルギナ・クラヴディヤ・エフレモヴナさんの回顧録とインタビュー記事を元に構成しました。
257名殺害は309名を殺害した“レディーデス”ことリュドミラ・パブリチェンコさんに次ぐ2番目の成績保持者です。
致死率80%以上という狙撃手の中にあって前述の2人は大戦を生き抜きました。
公式記録上は309名射殺となっているパブリチェンコさんも実際は500名以上殺したと言われています。今回ご紹介するカルギナさんも実際には300名以上のドイツ兵を殺したようです。
元々狙撃手としての才能を開花させた27歳のパブリチェンコさんと狙撃の才能がゼロだった普通の女の子で17歳のカルギナさん。経験者ならではの実際の狙撃手としての体験を生々しく語ったインタビューが残されていました。そんなインタビューの内容と彼女の回顧録から色々な場面を再現致しました。
カルギナ・クラヴディヤの回想より。
わたしの名前はカルギナ・クラヴディヤ・エフレモヴナです。
わたしは1926年にオレホヴォ・ズエヴォ市で生まれました。
そしてわたしが15歳のときに戦争が始まりました。
戦争が始まると、わたしは市の軍需工場で働きに行きました。わたしが17歳の時です。
そして週末はコムソモールに参加し、1943年6月22日に赤軍の一員となって中央女子狙撃兵訓練学校に入校しました。
狙撃学校では他の女子達は皆18歳でしたが、わたしだけ17歳でした。
そして狙撃訓練が始まりましたが、わたしには全く才能が無く、他の訓練生よりも遅れる有様でした。わたしは毎日ミルクの空き缶を撃つだけだったのです。
わたしの事を心配したジナイダ・アンドレヴナ・バランツェワが個人的に射撃を教えてくれました。徐々に射撃の腕が上達していったわたし。
わたしのスナイパーペアはマルシャ・チベンツェワでした。
彼女はわたしの親友だったのです。
そしてわたし達は1944年3月1日に最前線に派遣されました。
レニングラード戦線での初日の事です。
わたし達の部隊には12人の女子狙撃兵がいました。
みんな16~18歳の女の子でした。
前線に向かう前にわたし達全員に迷彩服が配られ、狙撃銃に包帯を巻きました。
数日間歩いた後、わたし達は塹壕陣地に入ったのです。
ナディアがドイツ軍の方角に向かって這って行きました。そこは無人地帯で地雷原になっていたのです。その時は夜で辺り一面が雪に覆われていてとても怖かった。
ナディアが戻ってくるとわたし達は塹壕内でジッとしていました。
翌朝、ナディアの指さす方向に敵の塹壕陣地が見えました。
彼らはわたし達が配置に付いている事を知らないのか、自分達の陣地の外で呑気に掃除をしていました。20名近いドイツ兵が丸見えの状態だったのです。
わたし達の格好の標的が間近にいたのです。
彼らを殺す事はたやすかった。
でも実際に人に向かって撃つのは初めてでした。
「わ、わたし、撃たなきゃ。」(わたし)
「人を殺すのよ・・わたし達。」(マルシャ)
わたしとマルシャは引き金に指を掛けた状態で凍り付いてしまったのです。
そう、人を殺すのは簡単ではありません。
その瞬間です。
“バシュン!”
“バシュン!”
“バシュン!”
辺りに銃声が響き渡ります。
他の女子達が狙撃を始めたのです。
パルチザンのジーナ・ガブリロワ、コムソモールの書記ターニャ・フェドロワなどみんな一斉に撃ち始め次々と撃ち殺していきます。慌てたドイツ兵達は一斉に塹壕内に身を隠します。
わたし達2人以外の女子達はそれぞれ1~2人づつ撃ち殺したから、敵の壕の前には12名の遺体が転がっていました。
その日の夕方になると敵を仕留めた女子達が集まって来て興奮気味に話を始めます。
「わたし、2人仕留めたわ!」(ジーナ)
パルチザン所属のジーナはまだ16歳の少女でした。
制服の無いパルチザンは私服姿で迷彩服の上衣を羽織った彼女でしたが、紺色のパンツに白いフェルトのロングブーツを履いていました。平和な街でならお洒落な格好も戦場では本当に不釣り合いな服装で少しヒールの高い婦人用のブーツは泥と埃ですっかりどす黒く汚れて台無しになっていました。
そんな事はお構いなしに、今日の戦果を自慢げに話す彼女。
「1人目は、初老の男だったわ、そして2人目は結構若い男だった。」(ジーナ)
「わたしが頭を狙って撃ってやったらァ、」
「そのままヘルメットから血しぶきが噴き上がって倒れたみたい。」
「その後すぐに、逃げようとした若い男の背中にも撃ち込んでやったわ。」
「あ~あ、もっと殺せたかも・・。」
「明日は何人殺せるかなあ?」
わたし達よりも年下の彼女は屈託なく人を殺した事を笑いながら話していました。
そんな彼女の話をニコニコしながら聞き入る他の女子達。
「それで、それで?}(カティヤ)
「わたしは1人だけだった。」(ナディア)
「わたしもよ。」(リーナ)
「わたしは2人殺ったわ。」(ターニャ)
「え~、わたしももっと殺したかったァ!」(エレナ)
「わたしも、わたしも!」(リーナ)
パルチザンから実戦経験を積むためにやって来たジーナは、鉄道や橋や倉庫を破壊する遊撃隊所属でした。わたし達狙撃兵よりも危険な任務に就く彼女でしたから、人を殺す事に躊躇なんて無かったのかもしれません。
わたしとマルシャはみんなに一言も言葉を発する事さえできませんでした。
その夜、わたし達は自分自身に怒りを爆発させます。
「わたしの馬鹿!」(わたし)
「臆病者!卑怯者!」
「なんでわたしったら、こんなに馬鹿なの?」
その時です、わたしのそばで少女のすすり泣く声が聞こえてきました。
目を凝らすとさっきまで笑顔で話していたリーナがすすり泣いています。
「リーナ、どうしたの?」(わたし)
「わたし、今日男を殺しちゃった・・。」(リーナ)
「彼は若くなかったわ。」
「もし彼に小さな子供がいたら、どうしよう・・。」
「あの人はもっと生きるべきだったかも・・。」
「でも、わたしが殺しちゃったから・・。」
そう言ってまたすすり泣く彼女。
その後は言葉になりませんでした。
狙撃を成功させた時は喜びと興奮で舞い上がっていた彼女。
でも時間が経って落ち着いてくると、自分のした事の重大さに気付いて怖くなったのです。
わたしは複雑な心境でしたが少しホッとした気分でした。
第2部につづく・・。
次回の更新は12月31日(0:00)になります。




