第8回・カザフの少女スナイパーは17歳・前編
本シリーズも第8回目となりました。
今回ご紹介するのは、カザフスタンの少女スナイパー、17歳のアリヤ・モルダグロワさんです。
カザフスタンのヒロインは当シリーズの第3回でご紹介しました機関銃手のマンシュークさんと並んでこのアリヤさんが有名です。
彼女の活躍ぶりは映画にもなっていてYouTubeでも見ることができます。(ロシア語)
アリヤ・モルダグロワは1925年10月25日、カザフスタンのアクトベ州ホブダ地区で生まれました。
彼女の両親は当局によって迫害されていたため、彼女は叔母によってアルマトイで育てられました。
そんな生い立ちからか、彼女は幼少期から目的意識と強い性格で際立っていました。
1941年6月、独ソ戦が始まると、リア(アリヤ)はレニングラードに留まる事を決意します。
1941年9月8日、レニングラード攻防戦が始まりました。
正義感の強かった彼女は、すぐにでもドイツ軍と闘いたかったのです。
しかし16歳の彼女は赤軍への入隊は許可されず、その後17歳になって狙撃学校に入学します。
彼女は最前線に志願兵として赴く事を強く望みましたが、それは認められませんでした。
その後リアは狙撃学校で技術を磨き、優秀な成績により個人用ライフルを授与されました。
そして1943年7月、17歳のリアはやっとのことで狙撃兵として第54歩兵旅団に配属されました。
ところが、まだあどけない17歳の少女だったリアは部隊に配属されるとすぐにその実力を発揮します。
ドイツ軍機甲師団が前進してくるレニングラード戦線でのことです。
彼女のいるソ連軍の塹壕陣地が砲撃に晒され、味方の死傷者が続出していました。
彼女にとっての最初の戦闘経験でした。
《以下はリアの残した日誌より》
“ヴォーン!”
“ヴォヴォーン!”
「リア、伏せろ!」(上官)
わたしの上官が叫びます。
“ヴォヴォーン!”
敵の砲弾はわたしのすぐそばに着弾し、わたしは土ぼこりと粉塵まみれになってしまいます。
「よくもやたったわね!ナチスめ。」(わたし)
「今に見てなさい!」
「わたしが、たっぷり思い知らせてやるわ!」
でも、わたしの塹壕の数十メートル前方にはドイツ軍戦車が迫っていました。
対戦車手榴弾を手に肉弾攻撃を敢行する味方の兵士達。
戦車の機銃でバタバタと倒されていきますが、死に際に1人の兵士が投げた手榴弾が戦車のエンジンルームに命中します。
“ジュヴォッ!”
ドイツ軍戦車はエンジンから出火し、中から戦車兵達が次々と出てきます。
「よ~し、わたしの出番だわ!」(わたし)
「覚悟しなさい!」
「それっ!」
“バシュン!”
「もう1人!」
“バシュン!”
「逃がさないわ!」
“バシュン!”
煙を噴きだしている戦車から黒い制服姿のドイツ軍戦車兵達が次々と這い出してきました。
わたしにとっては格好の獲物だったのです。
怒りに任せて容赦なく引き金を引いて撃ち殺すわたし。
1人、また1人と狙いを付けて仕留めていったのです。
いきなり狙撃され地面に伏せた兵士も逃さず撃ち殺します。
「隠れても無駄よ、ムダ!」(わたし)
“バシュン!”
「やったね!」
「4人仕留めたわ!」
まだ17歳のわたしは、いとも簡単に逃げ惑うドイツ兵4人を撃ち殺したのです。
アジア系の黒髪に、黒い瞳のきゃしゃな女の子のわたし。
そんなわたしがいきなり大胆な狙撃で戦果を挙げたのです。
わたしは仲間達から“恐るべき17歳の少女”と一目置かれる存在になりました。
その後もわたしはドイツ兵を求めて前線で狩りに出かけます。
「今日は少し練習しなくちゃ。」(わたし)
「2~3人片付けてやりたいな。」
「ドイツ兵の奴らいないかしら?」
「あらっ、ちょうどいいものがあったわ。」
わたしは破壊された戦車の影で待ち伏せする事にしたのです。
「いたいた、わたしの獲物だわ。」(わたし)
ドイツ兵2人がやって来るのが見えました。
彼らにとっては気の毒だけど、ちょうどわたしの練習台には格好の標的でした。
右側の兵士に狙いを付けるわたし。
「まずは、コイツから・・。」(わたし)
“バシュン!”
十数メートルの至近距離から撃ったわたし。
最初の犠牲者は額を撃ち抜かれて倒れます。
「やった!」(わたし)
「最高の気分!」
「もう1人はどうやって始末してやろうかしら。」
いきなり戦友が射殺されたドイツ兵は恐怖で錯乱状態になりました。
辺りにマシンガンを撃ちまくるこのドイツ兵。
見当はずれの方向に乱射しているこの男が、何だか可哀想に思えてきました。
「わたしを狙ってるのかしら?」(わたし)
「見当外れもいいとこだわ。」
「わたしが、教えてあげるわよ!」
「それっ!」
“バシュン!”
男の手元を狙って狙撃してみると、マシンガンを地面に落として右手を抑えるドイツ兵。
「お楽しみはこれからなんだから。」(わたし)
手を負傷して無抵抗になったドイツ兵の前に現れたのは“17歳のあどけない少女”、わたしでした。
わたしは狙撃銃を構えながらこのドイツ兵の所にゆっくりと歩いていきました。
無抵抗の人間を前に快感に酔いしれるわたし。
“この男、どうしてやろうかしら?”
今まで戦死していった仲間達の事を思い出すと、無性にこの男をいたぶりたい衝動に
駆られました。
わたしは落ち着いた口調で優しく話しかけてやりました。
「あなたの友達を撃ち殺したのは、このわたし!」(わたし)
「あなたもわたしに撃ち殺されるのよ。」
“バシュン!”
いきなり男の左足の太ももを撃ち抜いてやります。
「ふふっ!」(わたし)
「痛かった?」
「ごめんなさい!」
「簡単には死なせないわよ。」
「もっといたぶってあげるから。」
「それっ!」
“バシュン!”
今度は彼の右肩を2メートルの距離から撃ち抜いてやりました。
「アッハッハッ!」
「ゴメンね!」
「ウ~!」(ドイツ兵)
3発目の銃撃にひっくり返る男。
「あなたは、年下の女の子にやられてるのよ。」(わたし)
「わかってる?」
「ほらっ、何とか言いなさいよ!」
わたしはブーツのつま先で彼のお腹の辺りを踏み付けてやりました。
まだ20代の若い兵士でした。
仰向けの状態から銃を構えるわたしを見上げる彼。
左手で顔を隠しながら手の平を左右に振って命乞いをしています。
「そんな事してもムダよ。」(わたし)
「わたし、あなたに恨みは無いけど・・。」
「ホント、ごめんなさい。」
「わたし、ナチは許せないの!」
“バシュン!”
情け容赦なく引き金を引くわたし。
わたしの銃弾は男の左手を撃ち抜いて顔面を直撃しました。
「ごめんね。」(わたし)
「わたしに見つかったのが運の尽きだったわね。」
「わたしの事、悪く思わないでね・・。」
わたしは前線に配属された8月から10月までの間に32人のドイツ兵を撃ち殺していました。
わずか17歳のわたしは恐れを知らない大胆不敵な狙撃で次々と戦果を挙げていきます。
中編に続く・・。
幼少の頃のリア(写真右側)
狙撃兵として成長したリア
リアの自画像
次回の更新は11月12日(0:00)になります。




