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ソビエト軍少女兵戦記  作者: Kateryna Sheremska
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第7回・少女看護兵の活躍・第2部(後編)

生き残ったドイツ兵どもを全員始末しようと思ったわたし。


「死ね!」


“バババッ!”


うずくまる兵士を撃ち殺すと、仰向けに倒れ込んだ兵士の胸の辺りをブーツでしっかりと踏み付けるわたし。

片足で1人を踏み抑えながら、頭を押さえている兵士に向かって銃口を向けます。


「くたばれ!」


“ババババッ!”


数メートルの距離から銃撃された男はヘルメットごと頭を撃ち抜かれてそのまま倒れ込みました。

わたしに踏みつけられている仰向けの兵士は脇腹に破片を食らって出血していました。

わたしは周囲に他の敵がいない事を確認したのです。

そしてこの哀れなドイツ兵にわたしの怒りをぶつけてやろうと決心しました。

わたしは気づいていたのです。

わたしがさっき両手を挙げて立ち上がった時に、この男がニヤついていた事を。

わたしの怒りが沸々と込み上げてきました。

そしてわたしはこのドイツ兵に向かって微笑みかけます。


「わたしを見なさい!」


「わたしは看護兵よ。」


「アラッ、どこが痛むの?」


「ここかしら?」


そう言いながらわたしは彼の傷口をブーツでグリグリと踏みにじり回してやりました。


「ホラホラァ!」


“ウゥ~!”


男は激痛にうめき声をあげています。


「静かにしなさい!」


苦しむ男を睨み付けるわたし。

わたしのブーツは男の血でべっとりと汚れていました。


「わたし達の国から出ていきなさい!」


“ペッ!”


そういってわたしは男の顔にツバを吐き掛けてやりました。


「いい気味だわ。」

「こうしてやる!」


今度はツバで汚れた男の顔を泥まみれのブーツで踏み付けてやりました。

そして彼の胸に銃口を向けると、


「死ね!」


“バババッ!”


男を葬るのに必要な銃弾はわずか3発でした。

わたしは落ち着いて辺りを見渡しました。

わたしの周りには17人の死体が転がっていたのです。


「全部わたしが殺ったのね。」


怒りと憎しみで我を忘れて敵の負傷兵をいたぶり倒してから射殺したわたし。


「わたし、なんて事しちゃったんだろう。」

「ごめんなさい。」


たった今、わたしが惨殺したドイツ兵に向かって思わずつぶやいていました。

看護兵が本来持っている負傷者への優しい気持ちが本能的に蘇ってきたのかもしれません。


“バシュッ!”


「アッ!」


前方の岩陰からドイツ兵が撃って来ました。

背後の岩陰に向かって走り出すわたし。

そしてすかさずマシンガンを構えます。


「弾倉、これで最後だわ。」

「手榴弾もあと1つ。」


本来、赤軍の女性兵士は必ず自決用に最後の1発は取っておくのです。

しかし、わたしは最後の1発も敵を撃ち殺すために使いました。

わたしは追い詰められ、残ったドイツ軍兵士達が続々と集まってきました。

周囲を完全に包囲されてしまったわたし。


「かかって来なさい!」


「ホラッ!」


“バババババッ!”


「ソレッ!」


“ヴォーン!”


突撃を敢行するドイツ兵。

わたしは最後の銃弾と手榴弾で更に3名を殺害しました。


「これまでだわ。」


全弾使い果たし、手榴弾も無くなったわたしはもうどうする事もできませんでした。


ゼーニャのメモはここで終わっています。

(ここからの顛末は負傷して一部始終を目撃していた負傷兵の証言によるものです。)


弾薬の尽きた彼女に向かって手榴弾を投げ込むドイツ兵。


“ヴォーン!”


沈黙したままの状態がしばらく続き、ドイツ兵達は慎重に彼女を取り囲みました。

どうやらゼーニャは先ほどの爆発で負傷して意識を失っていたようです。

そしてドイツ兵士達に捕らえられたゼーニャ。

負傷したドイツ兵が先程彼女が味方の兵士をなぶり殺しにしたのを目撃していました。

彼はゼーニャに殺されるのを何とか免れたのです。

彼女を取り囲んだドイツ兵は総勢40名。

彼女の蛮行は味方兵士の遺体にその痕跡がはっきりと残っていました。

無残に胸を撃ち抜かれて殺害された兵士の腹部から脇腹に掛けて、更に彼の顔までもがブーツで踏みにじられた彼女の靴跡で泥々に汚れていたのです。

また彼女のブーツにも彼のどす黒い血がべっとりと付着していました。

まだあどけない18歳の少女の恐ろしい残虐行為に、怒りの表情で彼女を睨み付ける兵士達。


この後、ゼーニャは所属部隊の情報に関する尋問を受けますが完全無視を続けます。

彼女の完全黙秘はドイツ兵達をイラつかせ、大勢の味方兵士の殺害と面白がって戦友を惨殺した事に激高したドイツ兵達によって、ゼーニャは惨たらしく処刑されたのです。


翌日の10月2日、渓谷に戻ってきた彼女の所属する部隊がゼーニャの惨殺死体を発見しました。

目はえぐられ、鼻は切り落とされ、胸も切り落とされ、体は地面に釘付けにされていました。

彼女の勇敢な戦闘ぶりと惨殺された状況は現場に残されていた彼女のメモと生き残った複数の負傷兵達によって伝えられました。

ソ連軍がこの渓谷に戻ってきた時に現場で発見されたドイツ軍兵士の遺体は60名に上りました。

この日の戦闘でゼーニャが殺害したドイツ兵の総数60名(負傷者数名)は18歳の看護兵の少女の戦果としてはあまりにも大きく、そして彼女の支払った代償は彼女自身の惨たらし死だったのです。


クセーニャ・コンスタンチノワは、1943年10月3日にスモレンスク州ラスポピー村の共同墓地に他の242人の兵士と一緒に埋葬されました。

戦後彼女はソ連邦英雄の称号が与えられ、英雄広場の記念館には、彼女の肖像画がブロンズで飾られています。


挿絵(By みてみん)

味方負傷兵を守る為に機関銃でドイツ兵を撃ち殺すゼーニャ

挿絵(By みてみん)

ゼーニャによって撃ち殺されたドイツ兵達の遺体(当時のソ連軍の資料より)

挿絵(By みてみん)

ゼーニャが投げ付けた手榴弾によって壊滅したドイツ軍歩兵分隊(当時のソ連軍の資料より)

挿絵(By みてみん)

ゼーニャによって殺されたドイツ軍兵士のおびただしい数の遺体(当時のソ連軍の資料より)

挿絵(By みてみん)

偉業を成し遂げたゼーニャ

挿絵(By みてみん)

サブマシンガンを構えているゼーニャのブロンズ碑


第3部・前編に続く・・。

次回の更新は10月15日(0:00)になります。

まだあどけない18歳の女子看護兵だったゼーニャの功績と偉業は、戦後すぐに知られることはありませんでした。その後、彼女の英雄的な行動により多くの命が救われた事が知られるようになり、改めて彼女の事が調査されました。

当初、彼女が殺害したドイツ兵の数には複数の情報が錯綜していました。

12人、17人、20人、60人・・。

ゼーニャがドイツ兵達を襲撃し壊滅させた場所が複数あった為に、それぞれの遺体確認数が個別に伝えられていた事情があったようです。

本シリーズでは彼女が書き残したメモによる戦闘ログや、それぞれの戦闘場所に於ける彼女の戦果を合算した60名殺害という最終的な情報を元に構成しました。

また、ドイツ兵による彼女への拷問に関しては、18歳の少女看護兵が戦略的な情報を持っていたとは考えにくく、むしろ彼女によって殺された大勢の味方兵士達への復讐が目的だったと思われます。

その残虐な殺され方を見れば、彼女がいかに多くの敵を殺したかが自ずと証明されています。

因みに、ゼーニャを殺害したドイツ兵達はその数日後に彼女の所属していた赤軍歩兵大隊によって全員捕まり処刑されました。

実はこのドイツ国防軍の歩兵中隊は撤退中の分遣隊でした。

この渓谷を通らなければ彼らもゼーニャとの激しい戦闘になることはありませんでした。

結局、ゼーニャが守ろうとした赤軍将兵の重傷者達は死の淵から全員生還しました。

そして運命とは誠に皮肉な事に、彼女と闘い多くの戦死者を出したドイツ軍部隊の将兵全員とゼーニャは無残な死を遂げる事になったのです。


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