第7回・少女看護兵の活躍・第1部(前編)
シリーズ第7回は独ソ戦で従軍し、戦場で活躍した女子看護兵の物語です。
本シリーズで登場する女子看護兵は3名です。
第1部前編・後編でご紹介する女子看護兵はエカテリーナ・デミナさんです。
独ソ戦で兵役に招集された女性は合計で490235人でした。
その中で衛生部隊に配属されたのが41224名でした。
衛生部隊の中でも最前線で戦闘部隊の兵士達と行動を共にする女子看護兵達は常に戦死する危険性と場合によっては銃を手にドイツ兵と闘わなければならない危険な職務だったのです。
最初にご紹介するエカテリーナ・デミナは1925年12月22日にレニングラード市で生まれました。
父親は軍人で母親は医師でしたが、彼女が幼いころに両親を亡くし孤児院で育ちました。その後医師だった姉と暮らすようになりロシア赤十字の看護コースを卒業しました。
1941年にドイツ軍による侵攻が始まると彼女はすぐに軍の入隊登録事務所に行き、前線への勤務を志願しましたが、当時まだ15歳だった彼女は拒否され地元の軍病院でボランティア看護師として働き始めました。
やがてレニングラード近郊でもドイツ軍の砲撃や爆撃が始まると彼女はスモレンスク近郊の歩兵師団にやって来て赤軍に入隊することになりました。この頃彼女はまだ15歳だった訳ですが、ドイツ軍部隊が迫る中、彼女の身元と年齢を証明する書類にはなぜか3歳年齢が加算されていて18歳の看護兵として前線に送られる事になったのです。
恐らく最前線では医療の知識のある者が絶対的に不足していましたから、年齢が加算されたのではないかと推察されます。
1941年の9月、スモレンスクでの戦闘で脚に重傷を負った彼女はバクーの病院で治療を受けました。回復後、彼女は幼少の頃から夢見ていた海への思いを実現させるために、バクーの登録事務所でソビエト海軍への勤務を希望します。
そして彼女は軍の病院船での看護をしながら、多くの負傷兵をスターリングラードから輸送したのです。
その後、スターリングラード防衛戦が終わると彼女は1943年2月に新しく編成されたソビエト海軍第369予備大隊に志願兵として派遣されることになります。
まだ若干17歳の少女だった彼女、これまでの医療従事の功績が認められて海軍空挺降下兵として戦闘部隊と共に作戦に参加することになりました。
エカテリーナの回想より
1943年11月
わたしはテムリュクの上陸作戦に参加しました。
この闘いでわたし達の部隊は約1000名の内半数以上の死傷者を出しました。
わたし達が上陸したのは湿地で足場が悪く胸まで冷たい水に浸かった状態でした。
そこにドイツ軍の砲撃が始まったのです。
“ヴォヴォーン!”
“ズッヴォーン!”
「みんな、前進するのよ!」(わたし)
“ズドドドドドドッ!”
その時です、海岸線の防御陣地からドイツ兵がやって来てわたし達に銃撃を加えてきたのです。
瞬く間に10名以上が殺されました。
「コノヤロ~!」(わたし)
“ババババババババッ!”
わたしは背中に背負っていたサブマシンガンを手にしてドイツ兵達に向かって撃ち返してやりました。
「あそこだわ!」
“ババババババババッ!”
正規軍の兵士に比べて戦闘訓練は基礎的なものだけでした。
でも、前線での経験が長かったわたしは敵兵の影を見分けることが上手く的確に射撃が出来ました。
わたしの銃撃で3名のドイツ兵が倒れるのが見えました。
「よし!」(わたし)
「これで少しは時間が稼げるわ。」
「負傷者はわたしの指示に従って下さい!」
わたしは負傷者をボートに引きずり上げてそのまま海岸まで引っ張って行きました。
途中、またドイツ兵がしつこく銃撃してきました。
「しつこいのよ!」(わたし)
「これでも喰らいなさい!」
“バババババババババッ!”
わたしの最初の連射で2人倒れるのが見えました。
「邪魔しないでよ!」
「それっ!」
“ババババババババッ!”
更に2人のドイツ兵が水にぷかぷか浮いているのが分かりました。
「今のが当たったんだわ。」(わたし)
「よしっ!」
「もういないみたいだわ。」
「これでひと安心かも・・。」
わたしは負傷した17名を安全地帯まで搬送し手当をしました。
水にぬれた軍服を着た彼らを連れて行くのは容易ではありませんでした。
それに時折やって来るドイツ軍守備隊の兵士とも銃撃戦になりました。
わたしはボートの影から何度も撃ち返し敵の攻撃を撃退しました。
この時わたしは7名のドイツ兵を短機関銃で撃ち殺しました。
実はわたしには“カチューシャ”というニックネームがあります。
1944年1月、わたし達はケルチ近郊の人気のない海岸に上陸しました。
近郊のグレイカ村で橋頭保を築いたわたし達はそこで40日間防御しなければなりませんでした。
食料や弾薬は空から供給されました。
しかし飲料水は近くの中立地帯の井戸に行かなければならなかったのです。
静まり返った深夜に単身で井戸に向かったわたし。
井戸の前でバッタリとドイツ兵と出くわしてしまいます。
まだ若い端正な顔立ちの兵士でした。
でも彼は銃を構える仕草も無く、わたしに微笑みかけてきたのです。
きっとわたしがまだあどけない少女だったからでしょう。
でも17歳のわたしが、すでに何人も機関銃で撃ち殺しているだなんて、彼は知る由も無かったのです。
看護兵としてまだ当時15歳だった頃のエカテリーナさん
まだまだあどけない16歳の頃のカチューシャ
第1部後編につづく・・。
次回の更新は9月17日(0:00)になります。




