第6回・女子飛行連隊の少女達・第5部
この第587女子急降下爆撃機連隊には忘れてはいけない2人のヒロインがいます。
パイロットのマリア・イワドブナ・ドリーナとナビゲーター兼機銃手のガリーナ・イワノブナ・ジェンコフスカヤです。
マリアは1941年7月から通信パイロットとして軍務を始めました。彼女が21歳の時です。
その後女子飛行連隊が結成されると、この第587女子急降下爆撃機連隊に配属されPe-2爆撃機のパイロットとして終戦までドイツ軍と闘いました。
当時この爆撃機は操縦が男性でも難しく、そんな機体を彼女は自在に乗りこなしドイツ軍への地上攻撃を行い、ナビゲーターのガリーナと共に多くの敵を撃破しました。
1943年6月、北コーカサス戦線でのことです。
マリアの回想より
わたし達の爆撃機隊は9機でキエフスコエ村付近のドイツ軍陣地と弾薬庫を爆撃するために出撃しました。
「今日も戦闘機隊の護衛が付いているから安心だわ。」(わたし)
「でも、敵機が襲ってきたらわたしが叩き落してやりますよ!」(ガリーナ)
まだ21歳のガリーナはとても勇気のある女の子でした。
わたしはそんな彼女がいてくれると不思議と安心感がありました。
出撃して間もなく、わたし達は敵の地上軍陣地に到達しました。
「ドイツ軍の陣地だわ!」(わたし)
「よ~し、徹底的に破壊してやるんだから。」(ガリーナ)
わたし達の標的は敵の弾薬庫でした。
目標の建物を発見したガリーナは慎重に獲物に狙いを付けます。
「よし、投下!」(ガリーナ)
“ズッヴォーン!”
“ズッドーン!”
“ヴォヴォヴォーン!”
「やったァ!!」(ガリーナ)
「やったね~!」(わたし)
気持ちいいくらい派手に爆発炎上する敵の弾薬庫。
周囲にいた敵の車両や兵士達も大勢吹き飛ばされていました。
わたし達はガリーナの正確な爆撃で甚大な損害を与えてやったのです。
「よ~し、今度は機銃掃射を掛けるわよ!」(わたし)
「わたしに任せて下さい!」(ガリーナ)
炎上する弾薬庫の周囲に陣取る敵の迫撃砲陣地に向かって照準を合わせるガリーナ。
「全滅させてやるわ!」(ガリーナ)
「それっ!」
“ズヴォヴォヴォヴォヴォヴォッ!”
彼女の機関砲が火を噴き、正面の迫撃砲陣地に居た大勢のドイツ兵達は迫撃砲もろとも次々と撃ち抜かれていきました。
“プシュプシュプシュプシュ!”
“ズッヴォーン!”
「やった、やったァ!」(ガリーナ)
「もう、最高だわ!」
「わたし、何人くらい殺したかしら?」
「20人位だと思うわ。」(わたし)
「やったね、ガーリャ!」
その時です、わたし達の上方から突然メッサーシュミットが襲ってきたのです。
“ドドドドドドドドッ!”
わたしは旋回し難を逃れました。
「わたしがやっつけてやります!」(ガリーナ)
後部機銃座に座ったガリーナが敵機の襲撃に備えます。
予想通り敵戦闘機が上空から再び襲ってきました。
“ドドドドドドドドッ!”
“プシュ~!”
「何なのよっ!」(ガリーナ)
「この野郎!」
“ズドドドドドドッ!”
敵機の銃撃で左エンジンに被弾しました。
それでも果敢に撃ち返すガリーナ。
“シュヴォッ!”
“ブイ~~ン!”
「やったね、わたし!」(ガリーナ)
彼女が放った銃弾が敵のメッサーシュミットを直撃したのです。
エンジン部分から炎と黒煙を噴き出しながら墜落していく敵機。
「ガーリャ、ナイス!」(わたし)
わたしは乗機を何とか水平に保ちながら飛行を続けることができました。
「味方の戦闘機はどこかしら?」(ガリーナ)
「きっとわたし達の上方で敵機とやり合っているんだわ。」(わたし)
わたし達の護衛戦闘機隊は少し離れた場所で敵と交戦中でした。
護衛無しの丸裸のわたし達。
ガリーナの機銃が頼りでした。
「また来たわ!」(ガリーナ)
“ドドドドドドドッ!”
別のメッサーシュミットがわたし達を襲って来ました。
わたしは必死になって旋回を続け何とか敵の銃撃をかわし続けました。
「今度はわたしの番よ!」(ガリーナ)
「それ~!」
“ズヴォヴォヴォヴォヴォヴォヴォヴォッ!”
後部銃座からわたしの隣に移って来て機首の機関砲で敵機を狙い撃ちする彼女。
“ズヴォッ!”
“ヒュ~~ン!”
“パコーン!”
メッサーシュミットの左翼からエンジン部分に渡って彼女の撃ち込んだ機関砲弾が見事に命中しました。
左翼が千切れて火だるまになった敵機はすぐに爆発して空中分解してしまいました。
「やったねっ!」(ガリーナ)
「イェ~イ!」
右手の親指を突き上げて喜びを爆発させるガーリャ。
「イェ~イ!」(わたし)
「ざまァみろ!」
わたしも思わず右手の親指を突き上げて彼女を祝福します。
「あれ見てよ!」(ガリーナ)
わたし達の右側で敵機が火に包まれて墜落していくのが見えました。
「あれはクラウディアの機だわ。」(わたし)
「きっと砲手のエレナが撃ち落としたんだわ。」
「やったね、わたし達!」(ガリーナ)
「これで3機目よ!」
“ズドドドドドドドッ!”
その時です、機内下部の機銃が火を噴き、アントニーナ・スコブリコワが撃ちまくっていました。
「やったわ、わたしっ!」(スコブリコワ)
わたし達の後方から追尾してきたメッサーシュミット。
敵機に気付いたアントニーナの即座の銃撃で敵のパイロットが撃ち殺された瞬間でした。
真っ赤に染まった敵機の風防ガラスが全てを物語っていました。
制御されることも無く、フラフラと墜落していく敵機。
「アラッ、もう1機追加ね!」(ガリーナ)
アントニーナが黒い革製のロング手袋を嵌めた手で、親指を突き立てて微笑んでいます。
それに応えてわたし達も親指を突き立てました。
「今日のわたし達、凄くない!」(わたし)
「ホントだわ!」(ガリーナ)
「最高にいい気分かも。」
わたし達は被弾したものの、敵の弾薬庫や迫撃砲陣地、兵員輸送トラックを多数破壊し更に襲ってきた敵戦闘機を4機返り討ちにしたやったのです。
わたし達の損害は戦死者も負傷者もゼロでした。
こうしてわたし達はドイツ軍の陣地を毎回徹底的に破壊し大勢の敵を撃ち殺してやったのです。
当時21歳で戦闘に参加したマリア・イワドブナ・ドリーナさん。
愛機Pe-2の前での記念写真。
マリアは大戦中に63回出撃しドイツ軍の駅、弾薬庫、対空陣地、地上部隊を破壊し甚大な損害を与え続けました。
マリアは大戦中に3機のドイツ軍機を撃墜しています。
大戦を生き抜いた彼女はその後も空軍に残り副司令官を務めました。
マリアと共にナビゲーター・機関銃手として活躍したガリーナ・イワノブナ・ジェンコフスカヤさん。彼女は大戦中62回出撃し5回の空戦を経験し2機のドイツ空軍戦闘機を撃墜しました。
爆撃任務では正確な爆撃で多くのドイツ軍施設を破壊し、機銃掃射ではドイツ軍部隊に大勢の人的損害を与え続けました。
大戦を生き抜いた彼女はその後モスクワで英語の教師になりました。
敵機を撃墜したアントニーナ・スコブリコワ中尉。
当時23歳の彼女はウイングコマンダーとして大戦を生き抜き、その後ソ連空軍で勤務を続けました。
第587女子爆撃機連隊で使用されていたPe-2急降下爆撃機
第6部につづく・・。
(次回の更新は8月20日0:00になります。)




