第6回・女子飛行連隊の少女達・第3部
女子戦闘機隊の活躍ぶりはむしろドイツ軍地上部隊に対する大きな戦果でした。
戦闘機からの機銃掃射は絶対有利な位置からの攻撃ですから、相手に与える損害も甚大でした。
対空機関砲などの装備の無い当時の機甲部隊でしたから、上空から攻撃してくる敵機への地上からの反撃はもっぱらライフルや軽機関銃で撃ち返すくらいでした。
射撃精度がよほど正確でなければその威力は本当に貧弱なものだったのです。
この頃、女子エースパイロットの21歳のリリア・リトヴァクもJu88爆撃機を初撃墜しました。
リリアはその後も活躍し合計で12機のドイツ軍機を撃墜しました。
世界的にも有名な女子エースのリリー、スターリングラードの白ユリと呼ばれ彼女の乗機には白いユリの花が描かれていたそうです。
彼女によって撃墜されたドイツ空軍機はメッサーシュミット109戦闘機が7機、ユンカースJu88爆撃機が3機、ユンカースJu87急降下爆撃機が1機、観測気球が1機となっています。
彼女はその後、消息不明になり戦死したと思われていました。
ところが、その後の調査で大戦を生き抜いて生存していた、という説も浮上しています。
今も彼女の真実に関しては謎に包まれているパイロットなのです。
12機撃墜の女性エースパイロットのリリア・リトヴァクさん
11機撃墜のエカテリーナ・ブダノワさん
1943年3月19日、クルスク近郊でのこと。
女子戦闘機連隊のタマラ・マニャトニクとリサ・スルナチェフスカヤの2人がドイツ空軍爆撃機隊ドルニエDo-17とユンカースJu-88合計42機の大編隊と遭遇します。
(タマラの回想より)
「タマラ、あれって鳥の群れかしら?」(リサ)
「凄い数だわ!」(わたし)
「あれって、飛行機の編隊じゃないかしら?」
わたし達はその黒い群れに接近していきました。
「ほんと、すごい数だわ。」(リサ)
「リサ、見てあれっ!」(わたし)
「あの十字のマーク。」
「あれってドイツ軍じゃない!」(リサ)
「そうだわ、あれは爆撃機の大編隊よ!」(わたし)
わたし達にとっては初体験の上空での敵との遭遇でした。
しかも相手は数十機の爆撃機の大編隊なのです。
わたし達はたったの2人でしたが、まずは敵の編隊を崩してやろうと果敢に襲い掛かったのです。
「よ~し、やってやろうじゃないよ!」(わたし)
「いくわよリサ!」
わたし達は敵の数を気にすることなく、いきなり奴等の上空から銃弾を浴びせました。
「ソレ~!」(わたし)
“ドドドドドドドドドッ!”
“ドドドドドドドドドドドッ!”
“シュヴォッ!”
“ヴォ~~ン!”
「やった、当たったわ!」(わたし)
更に、
“プシュプシュプシュッ!”
“シュヴァッ!”
「やったね~!」(リサ)
「わたしもっ!」
わたしとリサの最初の一撃で1機づつ火を噴かせました。
エンジンから炎を噴き出しながら墜落していく敵機。
“ヴォヴォーン!”
“ヴォーン!”
わたし達が撃ち込んだ銃弾を喰らった彼らは、2機とも地上に激突して爆発しました。
パラシュートで脱出する間も無かったから、敵の搭乗員は全員戦死したんだと思います。
「やったね!」(リサ)
無線越しに叫び声をあげるリサ。
既に他の敵機は編隊を崩して搭載していた爆弾を一斉に投棄し始めました。
この時点でわたし達の目的は達成されていたのです。
それでも1機づつ撃墜して気を良くしたわたし達は、更に攻撃の手を緩めることなく銃撃を浴びせ続けたのです。
「次よ、次!」(リサ)
「もっと撃ち落としてやるんだから。」
わたし達は急上昇してから2回目の攻撃態勢に入りました。
とりあえずわたし達の目に飛び込んできた敵機に向かって発砲するわたし達。
「エ~イ!」(わたし)
“ドドドドドドドドッ!”
敵の機銃手の表情がはっきりと見える位置でした。
わたしに向かって反撃しようとする敵の機銃手。
「そうはさせるもんですか!」(わたし)
わたしは敵機の胴体に向かって短い銃撃を浴びせます。
“ドドドドドッ!”
敵機の後部銃座のガラスが割れて一瞬赤く染まり、機銃手が見えなくなりました。
「やった、わたし仕留めたんだわ!」
「こうなったら、こうしてやる!」
“ドドドドドドドドッ!”
“ズドドドドドドドドッ!”
機銃弾と機関砲弾を同時に徹底的に浴びせ続けるわたし。
わたしの容赦の無い連射でまた1機炎に包まれました。
“シュヴォッ!”
“ヴイ~~ン!”
「やるじゃん、わたし!」
気持ちよく2機目を撃墜したわたし。
リサも更に1機火だるまにしてやるのが見えました。
「やったね、リサ!」
その瞬間・・、
"ババババッ!"
「やられた!」
どの方向からかはよく覚えていません。
別の敵機の機銃がわたしの機を狙って銃撃してきたんです。
わたしの機は被弾して降下し始めました。
「仕方ないわ、脱出しなくちゃ。」
わたしは躊躇することなくパラシュートで脱出しました。
先程わたしが撃墜した敵の爆撃機が地表で爆発したすぐ後に、わたしの機も墜落していきました。
自分の機が墜落していくのを見送るのは何だか不思議な心境でした。
(リサの回想より)
わたしが更に1機火だるまにしてやると、タマラの機が墜落するのが見えました。
そんな光景に頭の中が真っ白になり、次なる敵機に狙いを付けて襲い掛かるわたし。
わたしは悲しみと怒りが入り混じって湧きあがり、敵機に銃弾を浴びせ続けました。
「コノヤロ~!」
"ドドドドドドドッ!"
“プシュプシュプシュプシュッ!”
わたしの銃撃は敵の機銃手や乗員を次々と撃ち抜きました。
それでも、撃墜はできず・・。
「しぶとい奴らっ!」
「コノ~!」
“ドドドドドドドドッ!”
わたしの怒りの銃弾が敵の搭乗員を何人も撃ち殺したのは確かです。
でも黒煙を噴きながら敵機はそのまま飛行を続けて逃げていったのです。
激しい襲撃にわたしの機もオーバーヒートしてしまい不時着することになりました。
「残念だわ!」
不時着すると地元の農民達が手に手に武器を持って集まってきました。
でも、味方の飛行機でしかも降りてきたのが若い女の子だと分かると、皆わたしの事を優しく抱きしめてくれました。
その日の内に“女子戦闘機パイロット2人でドイツ軍爆撃機隊42機に殴り込み、4機撃墜!”というニュースが世界に流れました。
3月24日、わたし達の勇敢な行動に防空軍司令官より赤旗勲章が授与されました。
この2人の勇敢な女子パイロットは大戦を生き抜いて戦後も航空機関係の仕事に従事しました。
ドイツ爆撃機2機撃墜のタマラ・パミャトニクさん(当時24歳)
同じく2機撃墜のリサ・スルナチェフスカヤさん(当時21歳)
第4部につづく・・。
(次回の更新は8月6日0:00になります。)
尚、本日、手違いにより更新時間が遅れまして申し訳ございませんでした。




