第1回・ソ連軍ナンバー3女子スナイパー、オリガ・ヴァシリエワ 前編
今回は、第二次世界大戦中のソ連軍女性狙撃手ナンバー3の戦績を残したオリガ・ヴァシリエワさんをご紹介致します。戦争中は2ヶ月弱の間に公認記録として185名のドイツ兵を殺害しました。致死率80%だった女子狙撃兵の中で大戦を行き抜き、戦後は医師として命を救う側に転身しその生涯を終えた方です。
第二次世界大戦中のソ連軍女性狙撃手ナンバー3の記録を持つオリガ・ヴァシリエワ。
ボロネジ出身の彼女は医学専門学校を卒業して戦地に赴いたのは1943年8月、彼女が22歳の時でした。場所は北コーカサス戦線です。
第322大隊に所属していた彼女は狙撃兵として志願しました。
しかし彼女がこの部隊に着任した時、彼女の上官は狙撃兵としての任務があまりにも危険なことから、彼女に衛生兵として勤務するように命じました。
その後この上官は彼女の強い信念と狙撃手としての適性を確認し、彼女を狙撃兵として認める決断を下しました。
ノボロシスク・タマン作戦に参加した彼女は上官から狙撃任務を命じられます。
初日、2日目と良いポジションを見つけられなかった彼女。
3日目の朝、良い場所を見つけたのです。
「夜が明け始めると、わたしは土を捨てるシャベルのリズミカルな動きに気がつきました。」
「敵は腰をかがめて掘っていたの。」
「わたしは初めてだったので、胸がドキドキして、手が震えました。」
「でも脱力感は一瞬だけだったわ。」
「落ち着いて!ドイツ兵が立ち上がるのを待つわたし・・。」
「ほんの一瞬だったわ、彼は背筋を伸ばして直立したの。」
「いまだっ!」
“バシュン!”
「わたしは躊躇なく引き金を引きました。」
「彼はスコップを置いたまま、地面に倒れ込んだわ。」
「たった今、わたしが撃ち殺したドイツ兵が、わたしの最初の犠牲者なのよ!」
「この狙撃の過程で、他に姿を見せた敵はいませんでした・・。」
こうして少女スナイパーオリガの戦記が始まりました。
8月15日、いつものように狩り(狙撃任務)に出発した彼女は初めての白兵戦を経験します。
「わたしは、いつものように夜明け前に狩りに出発しました。」
「わたしは、中立地帯の道を半壊した花崗岩の記念碑に向かって歩き始めました。」
「石の間のくぼみには、ヒナギクや背の高いゴボウが生えていました。」
「わたしは静かに進みました。」
「モニュメントから2メートルほど離れたところで、ガサガサと音がして、前方にかすかに草が揺れるのが見えたの。」
「何かしら?」
「誰かがわたしの方に這ってくる・・!」
「その思いは、わたしを瞬時に緊張させました。」
「わたしは、より速く、でもより慎重に動き始めたの。」
「記念碑まで急がないといけない、もう引き返せない!」
「わたしはライフルを構えて、ピストルと手榴弾を横に置いて、その左側で寝転んで待ちました。」
「ドイツ兵が這っているのが見えたわ。」
「彼はとても注意深く、モニュメントの右側の後ろで射撃姿勢をとったの。」
「この兵士、ドイツ軍の狙撃兵だわ!」
「その時、わたしは何を思い、どう行動したのかよく覚えていません。」
「でも、なぜかわたしの手は、わたしのブーツの筒口に差し込んであったフィンランドナイフを掴んでいました。」
「わたしは右手のナイフを突き立てたまま、わたしの体を彼の体に覆い被せたの!」
「・・・・。」
「わたしの手のナイフは、音も無く一瞬にして柔らかいものの中に沈み込んでいった・・。」
「あとは何も覚えていなくて・・、わたしは意識を失ってしまった・・。」
「どれくらいの時間が経ったのかわからないわ。」
「目が覚めると、わたしの傍らに、わたしが刺し殺したドイツ兵の遺体が横たわっていたました。」
「わたしは、背筋が凍るような思いだったわ。」
「仕方なかったの・・。」
「やらなければならなかった・・。」
「わたしは虚脱感で、力が出ませんでした。」
「でもわたしは勇気を出して狩りを続けました。」
「しばらくすると、3名のドイツ兵がやってきました。」
「わたしの獲物だわ!」
「わたしの位置は良好で、ドイツ兵からはよく見えなかったみたいなの。」
「そして、彼らは味方の狙撃手(彼は記念碑の近くに陣取りたかったみたい)がすでに死んでいることをまだ知らなかったんだわ。」
「だから3人の哀れなドイツ兵どもは、全く無防備な状態でわたしの前に現れたの。」
「わたしは完璧なポジションから彼らを1人づつ、いとも簡単に撃ち殺すことができました。」
「まずは、1人目よ」
“バシュン!”
「やったわ!」
「やつら、慌てちゃって!」
“バシュン!”
「2人目もダウン!」
“バシュン!”
「フゥ~!」
「3人ともやっつけたわ。」
「次々に倒れる彼らを見て、ホッとするわたし。」
「今日のわたしの戦果は4名!」
「でも刺し殺したドイツ兵はスコアには入りません。」
「少し、気の毒な殺し方だったけど・・。」
「狙撃スコアにはカウントされませんでした。」
こうしてわたしは日々スコアを重ねて大勢のドイツ兵どもを仕留めていきました。
中編に続く