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幼い頃からの日常

作者: GONJI

大阪府の西側の北半分はかつての摂津国

大阪府の東から南東はかつての河内国

大阪府の西側の南半分はかつての和泉国


私の現在は河内国に住まいを構える


生まれは摂津国だった

ついこの間まで和泉国生まれだと信じていた

ふつう大阪ではその地名を聞けば多くの人は和泉国だと思うはず

車のナンバーも和泉ナンバー(現在はご当地ナンバー)なのだから


まさかその生家のすぐ近くにかつての摂津国と和泉国の国境があるとは夢にも思わなかった

私の生家の一本南側の筋がそうだったとは・・・

当時生家には家風呂はあった

しかし近所の銭湯によく行っていた

その銭湯はその一本南側の筋を渡ったところにあった

だからその銭湯は和泉国にあることになる


私は風呂屋へいつも国境を越えて行っていたのだ

パスポートもいらない、入国審査場もない、税関もない

いとも簡単に国境を越えていた

もちろん亡命の意志もなかった


風呂屋では一度も異国人という目で見られたことはなかった

外国人価格の料金設定も無かったし双方とも同じ通貨を使用していた

言葉も何不自由なく普通に通じた

それも方言まで同じだったように記憶している

着ている衣服にも双方で異国人としての特徴は感じられなかった

履いていた履物にも違いは感じられなかった

同じような洗面器を持ち、その中には同じような石鹸箱とシャンプーが入っていた

首からぶら下げられているタオルにも何ら違いは認められなかった

ただ、着替えを入れる入れ物だけは、異国人というより双方とも年齢層で共通の違いがあったのを覚えている

服の脱ぎ方にも、大人たちがタオルで例の前を隠すマナー、湯船に浸かる前にかかり湯をするマナー、タオルは湯船につけてはいけないこと、もちろん浴室内は走ってはいけないルールも共通だった

体を洗ってお湯をかける時に横にかからないようにするという暗黙のルールも通用していた


そうまったくこの風呂屋では自分は異国人であることを感じなかった

ただ、ごく普通に接してもらってくれたのは、訪問先のこの異国の人々の温かい配慮だったのかどうかはもう知るすべもない


風呂上がりに腰に片手を当てながらフルーツ牛乳を飲み干す幸せまでこの異国の風呂屋は提供してくれた


やはり風呂屋は昔からコミュニケーションをとる社交場だったから、どんな人でも受け入れてくれるんだと毎回染み染み噛み締めながら風呂屋を後にし自分の国へ帰るため国境の筋を渡った


風呂上がりの清々しさはさっきまでの異国と全然変わらずに生まれ故郷の国でも感じた


私の異国への旅は幼い頃にはすでに日常化していたことが妙に感慨深い


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