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第1話 復讐を誓った日

 俺は、10歳のころに魔女に家族を殺された。俺を産み愛情を注いで育ててくれた母と父を俺の目の前で殺された。


 それまで、俺たち家族は決して裕福な暮らしとは言えなかったが、それでも十分幸せな暮らしをしていた。だが、その幸せはあまりにも一瞬で崩れ去ることになる。俺たちが楽しく食卓を囲んでいた時だった、その魔女が現れたのは。


 魔女はまず父の喉元を切り裂いた。突然吹き出した血に、テーブルに並んでいたご飯は真っ赤に染められた。そして、俺をかばうために俺の前に立った母の心臓を魔女の腕が貫く。あまりにも一瞬のことで、いつの間にか母の血で俺の顔が覆われていた。


「レオ、お前だけでも…早く逃げなさい…」

「私たちは大丈夫だから…」


 それが俺が最後に聞いた両親の言葉だった。残された最後の力を振り絞り俺にそう声をかけた。


 両親の最後の言葉を聞いた俺は、なんとか魔女の隙をつきそこから逃げ出すことが出来た。最後に見た魔女の顔。血のように赤いその目は一生忘れないだろう。


 俺は走った。どこかを目的にするでもなく、ただ、ひたすら走り続けた。そして、無心に走り続けたせいで力尽きたのだろう、俺はその場で倒れていたらしい。


 目が覚めるとそこは見知らぬ病院だった。そこで、俺は倒れていたところを近隣の住民に発見され、ここまで運ばれたということを教えてもらった。どこか心の中ではあの事件は夢で、目が覚めたら両親がいつものように接してくれるのではないかと思っていたのだがその幻想はあっけなく砕け散ったことになる。


「殺してください、お願いですから」


 俺は担当の医者にそう言った。生きている意味がないと思ったからだ。家族は死んだのに俺だけ生き残るなんてあっていいはずがない。


「それはできない。君は亡くなったご両親のためにも生きるべきだ」


 それが医者の主張だった。当然のことだ。人の命を救うのが仕事である医者が人の命を奪うなんてことが出来るわけないのだ。だったら、自殺するしかないのだろうか。そう思い、何度を自殺を試みた。看護師の目を盗み、ナイフで首を切ろうとしたことも、ロープで首を吊ろうとしたこともある。だが、どれも最後には勇気が出ず、結局死ぬことはできなかった。どうしても、その前に医者の言葉が頭の中に浮かんでしまうのだ。


『死んだご両親のためにも生きるべきだ』


 その言葉は呪文となり俺を縛るものとなっていたのだ。


 結局、死ぬのはやめた。かといって生きる意味や目的、希望が見つかったわけではない。死ぬことが出来ない、だから生きてしまっている。それだけのことだ。


 特に大きなけがをしていたわけではなかった俺はすぐに病院を退院することができ、その後はある孤児院に引き取られることになった。その孤児院は町から少し離れた場所にあり、俺と同じように身寄りのない子供たちが何人も引き取られて暮らしているらしい。


 退院する日、その孤児院の院長が病院まで俺を迎えに来てくれた。想像よりも若く、30代くらいの若い女だった。


「これから、君と暮らすことになるハリスだ。よろしくレオ君」


 俺よりかなり背の高いハリスと名乗る男は、俺の前に来ると、しゃがみ、俺の目線の高さに合わせるとそう言い、俺の頭を撫でた。


「…はい、よろしくお願いします」


 俺は、ハリスにぎりぎり聞こえるくらいの声でそう返した。


「うん、いい目だ。まるで世界を憎んでいるような目だ。これは、有能な子になりそうだ」


 ハリスは俺の目を見るとそう言った。どういう意味かは分からなかったが、特に聞き返すことはしなかった。今の俺にはなにもかもがどうでも良かったからだ。


 孤児院につくまでハリスは俺に話しかけることはなかった。


 孤児院につくと、ハリスは俺にあるものを手渡した。


「これは…銃ですか?」


 ハリスが俺に渡した黒い物体はまさしく、銃だった。今まで映画やドラマの中では見たことがあったが本物を見るのは初めてだ。


「ああ。これが君の武器だ」

「武器…?」

「私が君に与えるのは、住む場所、食事、共に暮らす仲間だけではない。復讐するための力だ」

「力…」

「君は両親を殺した魔女が憎いだろう?だったら魔女に復讐し、殺すための力を身につけろ」


 ハリスがめちゃくちゃなことを言っていることはわかっていた。それでも俺はハリスに従うことにした。それは、魔女への復讐というなくなったはずの生きる意味を与えてくれたからだ。

読んでいただきありがとうございました。

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