馬の輸送力(輓曵)
つらつらとネットで資料をさばくっていたら興味深いものを見つけた。
(昭和26年5月岡山県畜産たより)
大型農馬:470〜530kg、牽引力59〜66㎏
中型農馬:330〜470kg、牽引力41〜59㎏
小型農馬:250〜330kg、牽引力31〜41㎏
大型輓馬:560〜657kg、牽引力70〜84㎏
小型輓馬:500〜560kg、牽引力63〜70㎏
馬の牽引能力である。
上の数値から、馬は体重の12.4%~12.7%ほどの牽引力を有すると見てよかろう。
では実際にはどのくらいの荷を引くことが出来るかというと、ここに摩擦係数を掛けねばならない。
実際は荷台と車軸の摩擦と、車輪と地面の摩擦を考えねばならぬのだが、考え出せばキリがないし、そもそもそこまで詳細な資料がみつからない。
よって、車輪・タイヤと地面の摩擦のみで考えよう。
色々と見繕ったのが下記である。
※Wiki
鉄輪とレール:0.0002~0.001
自転車用タイヤ:0.0055
自動車用タイヤ:0.0062~0.015
タイヤとコンクリート:0.01~0.015
タイヤと砂地:0.3
※自動車工学概論
良質なAS舗装:0.01
良質なCON舗装:0.011
一般的な舗装:0.015
手入れの良い未舗装:0.04
手入れの悪い未舗装:0.08
転圧不十分の未舗装:0.125
砂道:0.165
乾いた粘土質の自然道:0.25
上記よりゴムタイヤならば
舗装路0.015
未舗装路0.1
無舗装路0.2
辺りで見ておけば良かろう
しかし、ゴムタイヤ以外の場合はどうだろうか?
そこで過去の車両から逆算してみよう。
三九式輜重車:全備370㎏で車輪は鉄で覆われている。
輜重用の馬だからそこまで大柄で無かろうゆえに馬重350㎏と見ると
350×0.125÷370=0.118
当時のアジア地域で舗装路は多く無かろうゆえに、未舗装時0.118ならばゴムタイヤとそう変わりが無いと見える。
色々と書いてきたが結論的には
馬の輓曵時の輸送力は
舗装路:体重の2~3倍
未舗装路:体重と同じ
無舗装路:体重の半分
このくらいと見るのが妥当だろうか
さらに多頭曳きの場合は留意が必要である。
というのも多頭による輓曳の場合は、単純に頭数=倍数ではなく、頭数が増えるにしたがい総合牽引力は減少する。
以下多頭曳き時の実質曳き頭数
1頭:1.00
2頭:1.92
3頭:2.61
4頭:3.20
5頭:3.65
6頭:3.84
7頭:3.85
8頭:3.92
つまり350㎏を曳行できる馬で4頭曳きする場合の牽引力は、350㎏×4頭=1,400㎏では無く、350×3.20=1,120㎏となる。
ただし、馬格の違いや調教の仕方で前後するものと考えられる。