8.始まり
クラスアップで手に入れた称号スキル【魔導師Lv1】にはどうやら周囲の魔力を感知する能力があるらしい。
さっきから学校の校庭から凄まじい大きさの魔力を感じる。
それとは別に屋上からも二つの魔力を感じるが、多分人間だろう。
魔力の質が違う。
校庭の方の魔力は、なんていうか……ドロっとしているような、なんか汚いんだよなぁ。
屋上から感じる魔力の片方は、大きさだともう片方に比べて量だけなら小さいが、力強さを感じる。
もう片方は……とりあえず得体が知れないとしか言いようのない、不思議な感じがする。
と、そんなことを考えていたら校門が見えてきた。
それと共に校庭から感じる巨大な魔力もはっきりとしてきた。
違う………あれは一つの魔力じゃない。
凄まじい量の魔力反応が重なって一つに見えていただけだ。
想定していた中でも最悪に近いパターンだ。
あれが個体だったら俺1人でどうにか他の人たちが逃げる隙を稼げたかもしれない。
だけど、大量の魔物に攻められたら流石に無理だ。
壊滅は免れない。
ただ、不幸中の幸いと言えるのは屋上にいる2人の存在だ。
彼らと協力出来ればどうにか倒し切れるかもしれない。
俺は校門の影に隠れ、いつでも校庭に魔法を撃てるように位置を調整した。
屋上の2人も何らかの方法で大量の魔物を感知したらしく、1人が屋上から飛び降りて玄関に入り、そこで止まった。
全ての意識を校庭の魔力に集中させると、自然と手に魔力が集まる。
クラスアップしたおかげか、魔法名を言わなくとも魔法が撃てる。
俺は両腕を校庭に向け、いつでも走り出せるように重心を少し前に傾け、その時を待った。
地中の魔力が動き出し、地面が盛り上がった。
そこから大量の、いわゆるゾンビたちが溢れ出てきている。
俺はありったけの魔力を使い、出来るだけ多くの【ダークバレット】と【ホーリーバレット】を撃ち、【ディメンション】からおなじみ鉄の棒を一本取り出し、走り出そうと姿勢を低くしたが、踏みとどまった。
屋上から一発のミサイルが降ってきた。
俺は急いで【ディメンション】から念の為に入れておいた鉄骨を数本取り出し、地面に突き刺して簡易的な壁を作った。
刹那大きな爆発音が鼓膜を揺らし、爆風が鉄骨を軋ませた。
【経験値を615得ました。称号スキル【魔王の片鱗】により、さらに経験値615を得ました。レベルが1から23まで上がりました。】
【通常スキル【ダークバレット】のレベルが1上がりました。】
【通常スキル【ホーリーバレット】のレベルが1上がりました。】
【称号スキル【虐殺Lv1】を得ました。】
【称号スキル【虐殺】のレベルが1上がりました。】
うおぉ、まさかの22レベアップかよ。
一気にステータスが上がったな。
ってか超物騒な称号貰ったんだけど?
なにこれ……
【『魔導書』との適合率が4%上昇しました。称号スキル【魔導書の主】により、一部ステータスが上昇しました。】
ぬ、ひっさしぶりに魔導書関連のを見たな。
ステータス上昇か、これは嬉しい。
っと爆風が止んだな。
俺は直ぐに鉄骨を乗り越え、未だ土煙が立ち上る校庭に向かって走り出した。
それと同時に玄関に潜んでいた1人も俺と同じ……いや、俺以上の速度で校庭に向かって移動し始めた。
とりあえずは誰なのか確認をと…………ん?
「って………!!王牙か?!!!」
「あの気配は慎護だったのか……。久しぶりだな」
王牙は振り向き、昔っからの無表情のままで迫ってきたゾンビの首を持っていた日本刀で斬っていた。
彼の名前は佐護王牙。
俺と王牙はいわゆる幼馴染だ。
元々父親同士が親友で、そこから家族ぐるみの付き合いになったらしい。
昔はよく一緒に遊んでいたが、俺の両親が事故で死んでからは余り遊ばなくなった。
別に仲が悪くなってもいない。
ただ単に遊ぶ回数が少なくなっただけだ。
それにしても、例の亀裂が街に出現してから会っていなかったな。
王牙がどれくらい強いのかは分からない。
だけど、複数体のゾンビを相手に獅子奮迅の戦いをする王牙を弱いとは思えなかった。
俺たちはあっという間に残りのゾンビを倒しきることが出来た。
俺のレベルも23から25に上がっていた。
ついでに【虐殺】の称号もレベルが1上がっていた。
「なぁ、王──」
俺が王牙に話しかけようとした瞬間、
「慎護っ!!!!」
王牙が俺を蹴り飛ばした。
俺は全く反応出来ず、そのまま校庭の端まで吹き飛んだ。
俺が顔を上げると、学校の屋上まで浮かび上がる王牙が見えた。
そして俺は気づいた。
あり得ないほど巨大な魔力の塊が校庭に立っていた。
それは一見人間の様であった。
しかし、それから感じる魔力は今まで感じてきたどの魔力よりも強く、そして大きな嫌悪感を覚えた。
それは黒いローブを身に纏い、手には宝石の様な石が埋め込まれた木の杖が握られていた。
顔はフードを被っており良く見えないが、フードの奥で光る赤い眼がそれが人間とはかけ離れた存在である事を示していた。
それは顔を動かし、校舎を見た。
『愚かなる人類よ、我が糧となるが良い。』
皺がれた老人の様な声だった。
俺は震える身体を抑え、なんとか立ち上がった。
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名称:アラン・グレート
種族:レッサー・リッチ
状態:潜伏(小)
装備:
【暗魔のローブ:Bー】
【深淵の杖:B】(レプリカ)
LV:31/70
HP:640/640
MP:855/855
攻撃力:379
防御力:247(217)
魔法力:631(521)
俊敏性:297
固有スキル:
【不老の身体Lvー】【眷属作成Lv3】
特殊スキル:
【魔力変貌Lv2】【魔力貯蔵Lv4】【闇の衣Lv3】
通常スキル:
【ダークバレットLv4】【カースLv3】【ダークジャベリンLv2】
【命令Lv6】【ドレインLv3】【アビスハンドLv1】
称号スキル:
【魔導師Lv3】【虐殺Lv8】【深淵の住人Lvー】
【リッチLvー】
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俺は、この現状を楽観視していたのかも知れない。
強い敵からは逃げれば良いと考えていた。
実際それは正しいと思っている。
だけど、逃げられない時はどうする?
相手はどう考えて俺の上位互換だ……
俺は、初めてこの世界を理解した気がした。




