1.情報
そんなこんなあり、今俺は光を放つ本を抱えて、じっとその時を待っていた。
もちろん他のみんなはパニック状態。
何人かは落ち着いて場の収束を図ろうとするやつもいたが、大多数は泣いたり、怒ったりと大騒ぎだ。
俺はそんな奴らを無視して、そのタイミングが来るのを祈っている。
俺もみんなを落ち着かせようかと思い、一回話しかけようとしたが、
「はぁ?!こんな時に落ち着けるわけないでしょ?!!」
と、怒鳴られる未来が見えたので辞めた。
とかなんとかバカなことを考えていると。
黒板の上のスピーカーから妙に甘ったるい男の声が聞こえた。
『静かに』
その声が聞こえた瞬間、教室内に響いていた叫び声や話し声がピタリとやんだ。
みんな驚いた顔をして辺りを見回しているが、誰も一言も喋らない。
俺は不思議に思い話しかけようとするが、声が出せない。
どうやらスピーカーから出ている男の声の主が何かをしたらしい。
だがまぁ、ここまでは想定内。
大事なのはこの先だ。
男の声はみんなが落ち着いてくると、話し出した。
『初めまして、皆さん。今回は皆さんに一つ頼みがあり、やって参りました』
男の声はゆっくりと妙に気持ち悪い声色で話している。
『まず、最初にこの世界に起きている異常事態について、皆さんに謝らなければいけませんね』
さっきまで声を出そうともがいていたみんながすっかり落ち着いて、男の声の話を聞いている。
誰も違和感を感じていないのだろうか?
俺はふと本を見ると、本の光は淡く、俺の身体を照らしていた。
この様子を見るに、本が男の声の力からある程度俺を守ってくれている様だ。
……多分。
『私はこの世界とは違う世界からやってきました。私がいる世界では今皆さんの世界に現れた『魔物』という存在が跋扈している世界なのです』
『しかしとある事件により異常なほど魔物が増え続け、ついに世界の境界を超えて、こちらの世界にまで侵攻してしまったのです』
みんなその男の声の話す内容に驚き、喋ろうとするが、もちろん声は出ない。
男の声は何かを考えるようにふむ、と言い
『あまり私のみ話すのもつまらないでしょう。1人だけ私に質問する許可を与えましょうか』
俺は少し驚いた。
この手の神様系は一方的に話してバイバイかと思っていたが、質問出来るとはな。
それでも許可とか言ってる時点でだいぶ尊大だけどな。
全員が顔を見合わせて、俺………ではもちろんなく、1人の男を見た。
そいつはいわゆるクラスの一軍。
成績優秀、容姿端麗、運動神経抜群の三拍子が揃った男だ。
時期生徒会長とも噂されているらしい。
んま、そんなんただの噂だけどな。
それに現生徒会長は歴代でも一番の化け物らしいしな。
生徒の間ではリアル二次元とか言われているそうな。
っとそんなことは今はどうでもいい。
彼は声が出ることを確認してから立ち上がり、緊張した顔で口を開いた。
「わ、私が聞きたいことは3つあります。一つ目は、その魔物たちはこの世界のどこから出現して現在、どれだけの数がいるのか、です。二つ目はその魔物たちはどうやったらこの世界に来れなくさせられるかです。三つ目は、私たちが身を守る術を教えていただきたいです」
彼は少し、息切れを起こしながらも一度に言い切った。
急いで内容をまとめたらしく、若干拙い文章のようになっているが今の俺たちに一番重要そうな質問だな。
男の声は楽しそうに答え始めた。
『そうだねぇ、一つ目の答えは簡単だよ。今君たちの教室から見える亀裂。それが魔物がこっちの世界に移動できる場所の一つだ』
男は急に口調を変えて、サラッと言い放った。
それを聞いた瞬間、教室内にいたみんなが一気に窓の近くに集まってきた。
俺も一緒に窓の外の亀裂、そしてそこから出てくる魔物を見た。
確かに魔物たちはあそこあら出てきている。
嘘をつくメリットもないだろうし、本当らしいな。
男の声は続けて、
『ちなみに魔物が出てくる場所は世界中に存在しているよ。
例えばこの国に限っても既に百箇所は下らないねぇ』
これには俺含め、クラスにいた全員が恐怖を感じた。
あのレベルが一国につき百個……全て攻略するのに何百年かかることやら。
『ああ、ごめんごめん、ちょっと違うんだ。君たちが見ている亀裂、向こうの世界ではダンジョンって呼ばれてるんだけどね。そのダンジョンにも大小があるんだ。今君たちが見ているダンジョンはその中でも特に大きいダンジョンなんだ。その亀裂と同じレベルのダンジョンはこの国には後3つくらいしかないから大丈夫だよ』
なるほどそれなら納得がいくわけ……ねぇだろ!
後3つもこのレベルのがあんのかよ……
このままだとこの国滅ぶぞ。
『さて、次の質問だね。これはみんなも薄々気づいているんじゃないかな?』
男の声は勿体ぶった様に溜めてきた
『そう!ダンジョンさ!ダンジョンの奥にはコアと呼ばれるダンジョンの要があるのさ。それを破壊、もしくはダンジョンから奪い取ればダンジョンはその機能を失うのさ』
これはまぁ、分かりやすいな。
すると例の彼が、
「っ……しかし、あの魔物たちの間をくぐり抜けて、コアを破壊するのは無謀だと思います。どう考えても銃では倒せなさそうな怪物も見かけました!そんなのは不可能ですよ!」
いつも落ち着いている彼らしくない感情的な発言だった。
男の声は待ってましたと言わんばかりに、話し始めた。




