11.目前
俺たちは示し合わせたかの様に走り出した。
俺と美鶴技は骸骨を取り囲む様に左右に、王牙はスキルを使ったのだろう。
一瞬で骸骨の目の前に移動し、攻撃した。
俺は骸骨の周囲を走りながら、【ディメンション】で地面を削り取った。
俺と美鶴技はそのまま骸骨の背後にまで移動した。
美鶴技は俺とすれ違う瞬間、【ディメンション】を発動した。
美鶴技の【ディメンション】から出てきたのは、金属製の槍だった。
しかも槍の穂先には斧の様なものが付いている。
いわゆるハルバードだ。
「うおっと」
俺は咄嗟にそれをキャッチしたが、予想より重く、バランスを崩しかけた。
俺が美鶴技の方を向くと、美鶴技は骸骨を指差した。
なるほどな。
戦い始める前に美鶴技が言っていた。
『短期決戦で行こう。佐護君は骸骨の注意を引いてくれ。その後は高嶺君がどんな方法でも良いからヤツの視界を遮って欲しい。そうしたら後は各々の最大の攻撃で一気に削り切る。単純だが仕方ない。私たちの連携だとこれが限界だ』
俺はハルバードを右手で、本を左手で持った。
なんとも妙な絵面だな。
俺は骸骨の真上に【ディメンション】を展開し、さっき削り取った地面を一気に出した。
大きな土の塊は、骸骨の頭に当たり、崩れ、大きな土煙が立った。
美鶴技が手榴弾を取り出し、骸骨に投げた。
おそらく俺たちの足音を遮るためだ。
王牙はいつの間にか距離を取っている。
目に魔力をこめる、土煙の中に骸骨の魔力を確かに感じる。
俺たちは一斉に骸骨に向けて走り出した。
王牙が最初に辿り着きそうだな。
だったら、本を装備したことで使えるようになった俺の新しい能力。
早速使うか。
「【ホーリーバレット】、エンチャント【散弾】!【追尾】!」
俺の目の前に一つの大きな魔法陣と二つの小さな魔法陣が描かれ、数十個の光の弾丸が骸骨に向かって放たれた。
大きさは通常の【ホーリーバレット】よりかなり小さいがその分数は多い。
消費魔力は増えるけどな。
光の弾丸は王牙を追い抜き、煙の中に吸い込まれていった。
一見当たったかわからないが、骸骨の禍々しい魔力が乱れ、少し弱くなったのを感じた。
間髪入れず、王牙が煙の中に飛び込んだ。
美鶴技も槍の穂先にチェーンソーを付けたような武器を二本取り出し、陸上部も真っ青な速度で後に続いた。
っと、見てる場合じゃねぇや。
俺も準備を始めるか。
「エンチャント、【浮遊】」
ハルバードは俺の手から離れ、その場に滞空した。
俺も随分とおかしな事ができるようになったもんだな。
どんどんやろうか。
「エンチャント、【分身】、【追尾】、【回転】———
この能力、どんな能力なのかはいまいち分からんが、物や魔法にいろんな効果を付与できる。
つまりは、
【貫通】、【加速】、【加速】、【加速】!!」
俺の魔力が続く限り、いくらでも付けられるってことだ。
「行くぞ!!」
俺がハルバードを放つと同時に、骸骨が収まりつつある土の中から上空に吹き飛んだ。
骸骨のローブはボロボロで、さらに残りの腕も無かった。
土煙が晴れた先には巨大なハンマーを持った美鶴技が倒れていた。
王牙は肩で息をしているが、大丈夫そうだ。
美鶴技は倒れたまま骸骨を指差し叫んだ。
「さぁ、フィナーレだよ!」
俺は残りの魔力を集めた。
「エンチャント、【ホーリーバレット】」
骸骨に向かって凄まじい速度で光り輝く無数のハルバードが放たれた。
骸骨は苦悶に満ちた表情?で俺を睨んだ。
骸骨の目が強く光る。
『人間如キガ、ヨクゾココマデ。褒美トシテ、我ガ秘奥ヲ持ッテ殺シテヤロウ!!』
瞬間、骸骨から凄まじい魔力が放出された。
その魔力の奔流は実体を持ったかのように吹き荒れる。
「止めるんだ!!」
美鶴技が必死の形相で叫んだ。
俺は魔法を放とうと魔力を込めたが、【ディメンション】を開く程度の魔力しか残ってなかった。
骸骨の胸の部分が黒く光り、どす黒い煙の塊が表れた。
煙は手の形を型取り、次々とハルバードを握り潰した。
おそらく、骸骨のスキル【ダークハンド】だろう。
「これは、非常にまずいね」
美鶴技は顔を顰めた。
俺もほとんどの魔力を使ってしまったせいで動けない。
【ダークハンド】がハルバードを砕き一向に骸骨にたどり着かない。
「ここまでしても、届かないのか?」
俺はもう、限界だった。
MPを主軸として戦う俺にもう打てる手はない。
何か、何か方法はないのか。
「まだだ」
【ダークハンド】が最後のハルバードを破壊しようとした瞬間だった。
王牙が美鶴技の持っていたハンマーを持ち、【ダークハンド】に叩きつけた。
「よせ!死ぬぞ!」
俺は力を振り絞り魔法を放とうとしたが、魔力を消費する感覚はあったものの【ホーリーバレット】はおろか、【ディメンション】すら発動しない。
「うっ、ぐぅ」
【ダークハンド】は巨大なハンマーをガリガリと削り取り、少しずつ王牙へと近づいている。
ついにはハンマーが砕け散り、悪魔の手が王牙に迫る。
俺は、なにもできない。
それでいいのか?
このままでは。唯一の友達を見殺しにしてしまう。
そんなの——
「良いわけねぇだろうが!!」
俺は走り出そうとしたが、踏みとどまった。
王牙が【ダークハンド】の前からいなくなっている。
「よくやった、次は僕の出番だ」
それと入れ替わるようにして、一人の男が【ダークハンド】の前に躍り出た。
あれは確か……俺のクラスのイケメン君じゃんか。
「消え去れ…『消滅』!」
彼が手をかざすと、【ダークハンド】が手の形を崩し始めた。
「うおおぉぉぉぉぉぉ!!!」
それと共に【ダークハンド】の禍々しい魔力も薄まり、やがて霧散していった。
「随分と、クセのありそうな…スキルだねぇ」
いつの間にか美鶴技が俺の側に居た。
目立った傷は無さそうだが少し違和感がある。
息が荒く、額には汗が浮かんでいる。
「大丈夫です———っ!!!」
美鶴技の左足の三分の一が…無くなっていた。
断面からは血が流れ、直ぐに小さな血溜まりをつくった。
「っ!!おい!!!」
俺は制服の袖を引きちぎり、美鶴技の足にキツく巻き付けた。
俺は医療の知識はないが、少しは止血できるとは思う。
「ははは、すまないね……」
美鶴技は困った様に笑った。
「そんな顔をしなくても、すぐには死なないさ」
そんな顔と言われても、今はそれどころじゃ無い。
とにかく美鶴技はもう戦えない。
俺は強引に美鶴技を抱きかかえた。
「うわっ、まったく…美少女はもう少し丁重に扱って欲しいね」
足が無くなってるって言うのによくもまぁこんな軽口を叩けるもんだな。
それでも血葉なかなか止まらない。
校舎に向けて走ろうとしたら、誰かにぶつかった。
「うっ」
「きゃっ」
声の主は尻もちをつき、痛そうに起き上がった。
そして俺と目が合った。
そこには俺のクラスの委員長、宇津美 空がいた。
「え〜っと…助けに来たよ」
彼女はそう言いながら微笑んだ。




