9.希望
ステータスを見れることは、良くも悪くも戦闘に大きな影響を及ぼす。
大した戦いを経験していない俺でも分かる。
力の差が分かり易すぎるんだ。
この骸骨のステータスを見ていなかった方が動けた。
相手の能力が見えることは、時として絶対に勝てないと確信を持たせてしまう。
立ち上がったはいいものの、俺は一向に動かなかった。
『どうした?人間。せめてもの抵抗すらできないと言うのか?やはり臆病な下等種、貴様たちには死が似合う』
骸骨は恐怖を煽るようにゆっくりと俺に近づいてくる。
【危険】
【撤退を推奨】
【逃げて】
頭に言葉が浮かんできた。
レベルアップの時とは違う、何かの意思を感じる。
その瞬間、俺は真上に大きくジャンプしていた。
すると、さっきまで俺が立ち竦んでいた場所を黒い弾丸ダークバレットが恐ろしい速度で通過し、俺の背後にあった木に当たった。
ダークバレットが当たった部分は綺麗に消し飛んでおり、木は大きな音を立てて倒れた。
俺は地面に着地すると共に骸骨の上空にディメンションから鉄骨をありったけ取り出し、落とした。
俺は骸骨の魔法攻撃を喰らわないよう、走り出した。
俺と骸骨は同じ魔法タイプ、しかも骸骨は俺の上位互換だ。
まともに撃ち合ったら確実に負ける。
かと言って肉弾戦でも部が悪い。
俺があの骸骨に勝っている部分なんてほぼない。
強いて言うなら、俺は骸骨のスキルを知っている。
しかし、骸骨は俺をスキルを知らない。
これを利用すれば倒せなくても撤退させることは可能なのかもしれん。
よし、情報を整理してたら勝機が見えてきたぞ。
俺のアドバンテージはこの情報と、二つのスキル、【ディメンション】と【ホーリーバレット】だ。
骸骨は見た目の通り、アンデット系のモンスターの筈だ。
だったら光魔法の【ホーリーバレット】はかなり効くはず。
俺はそのまま大回りに走り、ちょうど骸骨の真後ろまで走った。
そのまま右手をかざし、魔力を込めた。
「【ホーリーバレット】ぉぉ!!」
光の弾丸は煙の中に入り、弾けるような音が聞こえた。
煙が晴れると、そこにはローブを盾の様に構えている無傷の骸骨がいた。
ローブからは少し煙が上がっている。
これは完全に予想外すぎた。
俺が持つ最大の攻撃が、まさかあんなボロボロのローブに防がれるなんて思いもしなかった。
このローブの能力は見れないのか?
俺は目に魔力を込めて、ローブを睨んだ。
【『暗魔のローブ』ランクB−】
【闇の力が込められた丈夫なローブ】
【闇属性の攻撃を強化することができる】
【光属性の攻撃を防ぐ盾にもなる】
なるほどねぇ。
このローブで骸骨の弱点らしい、光属性の攻撃を防げるのか。
だったら俺の残りの攻撃手段は……【ダークバレット】しかないのか……
【特殊スキル【ステータス閲覧】のレベルが1上がりました】
今このタイミングじゃなけりゃ喜んだだろうな。
骸骨が杖を振ると、杖の先から大量の【ダークバレット】が発射された。
俺は咄嗟に【ディメンション】に隠れ、回避する。
すぐに【ディメンション】から出ると、俺は両手に鉄の棒を持ち、骸骨を向かって走り出した。
もちろん無策じゃない。
この戦いが始まってからずっと感じている。
王牙の魔力が高まってきている。
俺じゃこの骸骨を倒せない。
今の俺がするべき事、それは時間と骸骨のヘイトを稼ぐことだ。
俺は加速を止めず、そのままの勢いで左手に持っていた棒を骸骨の顔に向かって投げる。
『血迷ッタカ。人間』
骸骨は杖で俺が全力で投げた棒をいとも容易く塞いだ。
だがこれで一瞬だけだが、骸骨の視界は遮れた。
俺
空いた手を魔力を溜めながら、骸骨のガードした手に全力で棒を叩きつけた。
『無駄ナコトヲ』
骸骨は俺を嘲るように、もう片方の腕を伸ばしてくる。
俺は限界まで魔力が溜まった左手を棒にかざした。
「左手もらうぞぉ!!」
俺はありったけの魔力で棒に大量の【ダークバレット】を当てた。
そのまま渾身の力で棒を押し込む。
「うおぉぉぁぉぉぁぁあああああ!!!!」
何か硬いものが折れる感覚と頭に凄まじい激痛が走った。
俺は気付くと、宙に浮かんでいた。
脳震盪を起こしているらしい。
頭がズキズキと痛み、平衡感覚がはっきりしない。
必死に受身を取ろうとするが、俺はそのまま地面に叩きつけられた。
俺は地面を転がり、壁にぶつかりそうになった。
しかし、誰かが俺を受け止めた。
「よくやってくれた。これで私たちにも勝機が生まれた。君のおかげだ、ありがとう」
朦朧とする意識の中、俺を受け止めた人物は優しい声で俺を誉めた。
俺はしばらく意識が完全に戻らず動けなかったが、段々と意識がはっきりしてきた。
俺が起き上がると、目の前にはこの学校の生徒会長、美鶴技優衣がいた。
屋上から感じた魔力の持ち主、彼女ならば納得だ。
「ここから先は私たちがやつのあいてをしよう。君は休んていてくれ」
そう言って彼女は宙に手を入れた。
俺の【ディメンション】と全く同じだ。
そして何かを探すように手を動かし、いわゆるバズーカを取り出した。
彼女は振り返り、腰に手を当て、ポーズをとった。
「どうだい?これが私のスキル【ディメンション】と【想造】さ!」




