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こんにちは世界  作者: 偽蚊医隆壱
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0.異変

それは、唐突に始まった。

教室の窓から見える景色は、さながら阿鼻叫喚の地獄絵図。

神話や本の中にしか存在しないはずの化け物たちが人間を襲い、殺している。

中には黒い狼やいわゆるゴブリンの様な見た目の化け物もいる。

だが、俺はその光景を見てもなぜか焦らなかった。

もちろんこれが異常事態だと認識はしている。

もし、今朝のあの出来事がなければ俺はこの現状を理解出来なかったらだろう。




<><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><>



俺の名前は高嶺慎護たかみね しんご、大体普通の高校一年生だ。

勉強の成績は中の上。

一幼い頃両親を事故で亡くし、今は安いアパートに一人暮らしの身だ。

一応の保護者である叔父には無理を言って今の家に住んでいる。

バイトが肉体労働だということもあり、身体能力は高い方だと自負している。

もちろん寝る前の柔軟もしっかりしている。

中学の頃は陸上部のエースだったこともあり、足は未だに学年トップの速さを誇る。

今は立派な帰宅部だ。

顔もまぁまぁ良いらいし。

そんなちょっも訳ありの高スペック(自称)な俺だが、未だに彼女はいない。なんなら友達もほぼいない。

小学校の頃からの親友に聞いたら、


「お前の歯に布着せぬ物言いが原因に決まっているだろ」


とか言われた。

俺はそれを自分の魅力だと思っているから直す気はもちろん無い。

そんな俺はいつも通りに、いつも通っている道を通り、登校していた。


すると一つの建物が気になった。

本屋だ。

いつも通っているはずなのに、その本屋は今まで一度も見た事がなかった。

俺はつい、その本屋に足を伸ばした。


いかにも古本屋といった様なレトロな雰囲気が漂う本屋だ。

古本特有の匂いが鼻をくすぐってくる。

なんとなしに店内を歩いているとある一冊の本が目に入った。

気になって手に取り開こうとすると、いきなり手をガシッと掴まれた。

いつからいたのか、俺のすぐ隣にこの本屋の店主だろうか、お婆さんが俺の腕を掴んでいた。


「読みたかったら、買ってからにしなさい」


お婆さんの力はその見た目とは裏腹にとても強く、全く腕を動かせなかった。

その時の俺は何かがおかしいとは思いつつもその好奇心に抗えなかった。

以外と本は安く、常に財布と睨めっこしている俺は本の高そうな装束と不釣り合いな安い値段に違和感を覚えつつもウキウキで買い、その本屋を後にした。


俺は今までその本屋の存在を知らなかった事にその時は気付かなかった。

その後は何事もなく時間が過ぎていった。

俺があの本屋で感じた違和感は既に忘れさられていた。


授業中、俺は不意に揺れを感じた。

クラスの誰かが言った。


「なぁ、なんか揺れてね?」


それはほんとに小さな揺れだった

地震大国である日本に住む俺たちにとっては大したことないレベルの揺れだ。

しかし、揺れはどんどん大きくなり、あっという間に危険を感じるレベルにまで大きくなった。

教室内は半ばパニック状態に陥った。

俺は避難訓練通りに机の下にでも隠れようかと呑気に考えていた。

何故かは知らんが冷静でいられた。

すると揺れはピタリと止まった。

あまりにも不自然。

俺は窓側の席だったこともあり、なんとなく外を見た。


俺は一瞬夢を見ているのかと思った。

地面が裂けていた。

まるで天変地異でも起こったのかという様な大きく底の見えない巨大な亀裂が街を分断していた。


俺はふと、本屋で買った謎の本のことを思い出した。

俺は亀裂を見て騒然とするクラスメイトを尻目にカバンを漁り、本を取り出した。

本屋で本を買ったのはいいものの、時計を見て遅刻寸前だと気づいた俺はダッシュで学校に向かったためまだ本を読んでいなかったのだ。


本は黒を基調として、金色の装飾が施されている。

表紙には作者名も題名もなく、表紙の中央には円を描く様にマークの様なものが晒してあった。

そして今、その本の中の一つのマークが光を放っていた。


すると俺の頭の中にいきなり文字が浮かんできた。

【『魔導書』の封印解除を確認しました。】

【所有者を『高嶺慎護』に設定完了。】

【適正率13%を確認。第一の魔法を解放します。】


頭の中に浮かぶ文字の羅列に、さすがの俺も狼狽えた。

しかし、なんとなくわかることがある。

頭に浮かんだ『魔導書』や所有者。

つまり俺は、このファンタジーな魔導書の持ち主となったってことだ。


唐突だが、俺はラノベをよく読む。

基本的に物が少ない俺の家には100を超える異世界ものや超能力もののラノベが眠っている。

別にそんなに読まなくても分かるとは思うが。

これは……あれだよな。

魔物とかがこっちの世界に来るやつだよな。


俺はふと、意識を外の景色に向け、亀裂から這い出してくる化け物こと魔物を見て、確信した。


はい、さようなら俺の家、さようなら俺のゲームたち。

そして、さようなら俺の平和な学生生活


そして、こんにちは






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