ルナベレッタの日常②
頑張れルナベレッタ
『Mobius Cross_メビウスクロス徒然:ルナベレッタの日常②』
夏。
強い日差しとカラリとした空気、青空と
色とりどりの露店がまぶしい活気ある帝都の夏の昼。
…形とりどりの動物の頭が並ぶお肉屋さんに気力を奪われつつ…
普段より少しだけ夏仕様なルナベレッタは、ランスに持たされた“展開式の小さな傘”を揺らして歩いていた。この時代、傘と言えば、小屋のように大きくて重い物を召使い数人に持たせてさすもの。傘を個人でさして歩いている人など居ないのだが…ルナベレッタは向けられる好奇の目にも気づかず街景を楽しんでいるようだった。
ほどなく目的地に到着。市民街で有名な医療所だ。
さっそく医者に師事したい所だが…甘かった。人気の医者は忙しそうで、小一時間言い出せずにウロウロ医療所の様子を窺った後、とても自分なんかに時間を割く暇など無いだろう…と勝手に納得し、結局一言も発せずにその場を去るルナベレッタ…。ギルトは怒ったが、こういう時のルナベレッタは軽い食感の罪悪感をポンポン出しててくれるので内心ホクホクだった。ジャンクな味が堪らない止まらない。
次は、もう少し患者の少ない医療所をあたった。しかし医者の反応は芳しくなかった。
「うーむ。。突然そんなことを言われてもねぇ…。」
がんばって食い下がるルナベレッタ。
「ご、ご無理言ってすみません…!
な、なんでもお手伝いします!どうか、医療の知識を少しでもわけて頂きたいのです…。」
「うーむ…またどうしてそんなことを?」
「…もっと人が救えるようになりたくて…。
医療知識を持った人が増えれば皆幸せにならないでしょうか…」
「あーそういう…。うーむ…;」
空気を叩くようなやり取りが続き、呆れたギルトが割って入ろうとした時、患者が一人訪ねてきた。
その患者はどうやら腹痛に苦しんでいるようだ。患者はすぐに寝かされ、医者による触診と治療が始まった。
ルナベレッタは何かできないかとあたふたしたが、医者に邪魔だと追い払われ、しょんぼりして遠巻きに見守るしかなかった。
医者は、慣れた手付きで患者の腹全体を一周り擦りながら、所々確かめるように押す。痛がる反応を見て「よし」と頷くと、患者に葉っぱ?を咀嚼させ、腹に粉?を振りかけ、水?を吹きかけて祈祷文を唱える。暫くすると患者は腹部に熱を感じたらしく、それを合図に医者は患者の額を小さな銀の十字架でコツコツと叩き始めた。額には次第に赤紫の薄い瘤ができ、体を起こされ瘤の先端をピッと針で刺されると血が滴った。医者はそれを、油を敷いた皿で受け、最後に薬水?を1杯飲ませた。
すると患者は「楽になった」と言って、銀貨を支払いその場を去った。
疑問に思うだろうか?
そう。この時代、多くの医療は“まじない”なのだ。
当時の人々に疑問は無い。当然ルナベレッタも。
むしろ彼女は、目を輝かせて再びその医者に懇願した。紙とペンを抱き、触診で容態がどのようにわかるのか、さっきの粉は何か、水は何か、と珍しく早口になって教えを乞うた。
しかし医者からは、やはり奥歯に物が挟まったような返答しかなく、終いには怒られてしまった。ルナベレッタは怒られると弱かった…。
とぼとぼルナベレッタ。
我欲の為に、崇高なる御医者様の手を煩わせようという自分の罪深さが胸を締め付ける。
それをつまみ食いしながらギルトは慰める。
「「ルナベレッタ。バカだなぁお前は。
あの医者にとって医療は商売道具なんだ。易易と教えたくないんだ。そんな当たり前の心理もわからないのか?罪深い女だな。」」
「うにゅぅ(´;ω;`)」
ぐぐぅ〜…ルナベレッタの腹の虫が鳴る。
「「…腹が減ったな。折角だから飯屋にでも行こう?」」
「…そうですね…」
「「さっき旨そうな肉屋を見つけたんだ。そこ行こう?」」
「…そうですね…」
うわの空で返事をしつつルナベレッタが買いに行ったのは、
昔よくお世話になった評判のパン屋。看板娘の姿が見えなかったが元気にしているたろうか…。
あと豆と野菜のスープが美味そうなお店だった。ギルトの希望はついえた。
「「たまにはお肉食べたい…」」
「そうですね…お野菜のスープ美味しいですね…」
「「ハァァ…。さて、帰るか。ルナベレッタ。」」
「…そうですね…諦めちゃだめですよね…もう少し、探してみます!」
「「…ぇ…?」」
ルナベレッタは意外と諦めの悪い女だった。
to be continued
話を聞けルナベレッタ