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第18話:癒しの勇者、大魔法の欠陥を指摘する

「次はカース先生の大魔法か……どんなのを教わるんだろう」


「そりゃとんでもない大火力じゃね?」


「でもカイトにボロ負けしてたのにそんなすごい隠し技あるのかな?」


「さすがに手加減してたんじゃない?」


「えーでも本気に見えたよ?」


 校庭に集められたクラスメイトたちが次のカースの授業を前にしてソワソワしているようだった。


 俺も戦った時はカースの強さがいまいちよく分からなかった。

 それにもかかわらず、一定の評価を得ている。


 ということは、大魔法にカースの真の強さが秘められているのだろうと俺は睨んでいる。


「よし、では授業を始める。今日は卒業するお前らにとっておきの大魔法を伝授しよう。これは現存する魔法で最高難易度にして、最恐の攻撃魔法だ。発動に時間がかかるのだけが欠点だが、そんな些細なことはどうでも良くなる超火力だ」


 おお、と歓声が上がる。

 俺も期待していた。


 カースが俺をギロッと睨む。


「小手先の技術ではない、真の魔法を見せてやろう。ふっ、漏らすなよ」


 そんなに凄いのか。

 言われた通り漏らさないように注意しておこう。


「いくぞ——はあああああああああああ!」


 カースは両手を天に伸ばし、呻き声を上げた。

 空中に火球を生成しているらしい。魔力にモノを言わせた強引な魔法だが、まあ問題はこれでどのくらいの攻撃力があるかということだ。


「おお……カース先生はさすがだな!」


「こんな魔法私たちに再現できるのかな?」


「簡易版でもいいから使ってみたい!」


 三分ほど魔力を充填し続け、カースはカッと目を見開く。

 そして、


「いまだ、いくぞ! はあ!」


 両手を振り下ろし、直径1メートルの火球が飛んでいく。

 地面に直撃し、爆散する——ことはなく地面が焦げただけだった。


 パチパチパチパチ……。


 自然と拍手が起こる。

 俺には何が凄いのか分からなかった。

 レミリアとミーナも同じようだった。


「カイト! どうだ、一度俺にマグレでも勝ったんならこれくらいできるよな? みんなの前でやってみせろ」


 カース先生がなぜかそんなことを言ってきた。

 確かにできるが、こんなつまらない魔法をお披露目するのは恥ずかしいんだが。


「カース先生またカイトをいじめてる……」


「できるわけないと思ってやらせるなんて酷い」


「まだ何も教えてないのに……」


「魔法使いとしての実力は一級品だけど人間性は終わってるよな」


「品性がないよね」


 なんか散々な評価だった。まあ、俺も同感なのだが。

 俺を落第させるために同僚に攻撃魔法を撃って大怪我させるやつだし。


「カイト、あんなに言ってるんだからやってあげなよ」


「ミーナもカイトが目にもの言わせるところ見たい」


「え、やった方がいいのか?」


 レミリアとミーナはカースを遠い目で見ながらそんな提案をしてきたのだった。


「じゃあカース先生、ちょっと条件をつけたいんだが」


「その条件次第だな」


「校庭がボロボロになってもいいか?」


「バカなことを言うんじゃない。人間にそんなことができるわけないだろ」


「許可をもらえるか?」


「あーあーいいだろう。好きにしろ。そうやって時間稼ぎしようとしても無駄だからな!」


「なら受けよう」


 言質は取れた。これで俺の責任にはならない。


 俺は、右手だけをを天に挙げた。


「言い忘れてたけど、カース先生の魔法は不完全だ。……と言うより、簡易版だな。自分の魔力だけを使っていては限界がある。この魔法は、こうやって使うもんだ」


 カースがやった時と同じように火球が生成される。

 その火球には、俺の魔力はほとんど注ぎ込まれていない。


 天と、大地の魔力を集めているのだ。これをさらに進化させたのが、2000年前に世界を滅ぼした『ワールド・エンド』だったりする。


 自分の魔力は、外界魔力のコントロールをするためだけに使うのだ。人間が含有する魔力量なんて大したもんじゃない。


「ま、さすがに加減はするけどな……村ごと吹き飛ばしかねないし」


 3秒ほどで火球は十分な大きさになった。

 ここから火力を上げるために、さらに温度を上げる。

 赤い球が、蒼く変化した。


 そして——


「このくらいでいいだろ」


 火球を俺たちがいる場所から100メートルほど離れた場所に落下させる。

 着弾すると、物凄い轟音を立てて爆散した。

 砂埃が激しいので、結界魔法で軽く障壁を作っておく。


 砂埃が俺たちから逃げるように吹き飛んでいき、視界が開ける。


「な、な、な、なんじゃこれはあああああ!?」


 カースは、愕然とてその場にへたり込んだ。

 地面は深さ10メートルほどの大きなクレーターができ、その周りは高熱でガラス化してしまっている。


「どこの戦争の跡地って感じ……」


「もしかしてカース先生って本当に大したことなかった……?」


「いやいや、カイトが異常なだけだって……」


 やってほしいと言うからやったというのに、また変な空気になってしまったな。

 それに、やっぱり地面に大穴が空いた。

 校庭なんだから簡単に壊れないようにミスリル加工していればちょっと穴が空く位で済んだろうに。


 でも俺の責任じゃないしな。


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