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第17話:癒しの勇者、魔力量を計測する

 予想していなかった臨時収入をもらった後は、普通に授業を受ける。

 卒業間近ということで、基礎練習などはカットされている。


 あと教わるのは科目別の大魔法くらいのものだ。


「今日は最後の魔力テストをやる。魔力量ってのは日々の積み重ねと才能によるもんだから、前回より大幅に増えることはないが、成長を定量的に確かめられる貴重な機会だ。心してかかるように」


 担任のアレス先生の恒例の言葉。

 説明に一つ付け加えるとすれば、一定量の積み重ねをこなすとその後は指数関数的に増えるし、才能による魔力量の差はあまり出ない。


 ま、多少は出るのでそれが強者同士の戦いになると決定打になることもあるのだが。


 学院の西端にある魔力計量室にぞろぞろと生徒たちが入っていく。

 中は全員が入っても余裕があるほどの広い造りになっている。

 最奥に透明の水晶と隣に計測器がある以外は何も置かれていない。


「よし、いつも通り名簿順に計測していくぞ。やることは変わらん。水晶に手を触れるだけだ。水晶の色が変化したら、計測器で数値を確認する。じゃあ一人目!」


「はい!」


 一人目の生徒が、水晶に手を触れる。

 透明だった水晶がほんのり白い輝きを帯びる。


「魔力量412……前回よりも5増えてるな! いい感じだ」


「ありがとうございます!」


 二人目の生徒が、水晶に手を触れる。

 透明だった水晶がほんのり白い輝きを帯びる。

 気持ちさっきよりも光が強い印象だ。


「魔力量613……素晴らしい! 成長したな……同世代ではかなり上位に入るぞ!」


「嬉しいです! かなりトレーニングを頑張りました!」


 みんな優秀だなぁ。

 俺が触っても何も反応しないんだよな。見えないレベルで反応はあるらしいけど、前回は50だっけ。魔法が使えなさすぎて、魔法学院なのに剣しか使ってなかったっけ。


「次、カイトだ」


「はい」


 呼ばれたので、同じ流れで計測する。

 俺が水晶に触れると、他の生徒は白い輝きだったのが、蒼く染まっていく。

 計測器はその時点で上限を示していた。


「な、何だこれは!?」


 その後水晶は青黒く変化し、最後はルビーのような赤色になった。

 そして——


 パリィンンンン!


 音を立てて壊れてしまった。

 触っただけなんだが……。


「な、な、な、な……!?」


 アレス先生もタジタジだ。


「こ、これはこの水晶で含有できる魔力量の限界を超えたということだろう……ものすごい成長だ」


 そういえば、2000年前は魔力量を計測する装置なんてなかったんだよな。

 正確に言えば、計画はあったそうだが、人間が持つ魔力量を正確に計測できるだけの耐久性を持たせることができなかったとかなんとか。


 決して俺の魔力量が桁違いに多いとかそういうことではない。2000年前では、この歳では平均よりやや多いくらいのものだったはず。


 最初から無理があったということだな。


「カイト……悪いが、すぐにこれより大きな水晶を用意するのは難しい。だがとんでもない魔力量を保持していることは確かだ。こんなところで勘弁してくれ。評価はもちろん満点だ」


「いえ大丈夫です。俺の魔力量が多すぎたのが原因ですから」


 水晶をぶっ壊したのは俺なのに謝られてしまうとはな。


「カイトって落ちこぼれだったはずじゃ……」


「めちゃくちゃ努力はしてたけど……こんなことがあるのか」


「こんなに強いならカース先生をボコボコにできたのも頷けるな」


 周りの生徒からはなぜか一目置かれていた。


 その後、交換用の水晶が運ばれてきて、続きが始まった。


「次は……ミーナだ」


 おお。と注目が集まる。

 学年次席で超絶美少女ともなれば、この反応が自然だろう。


 ミーナの前回の魔力量は確か1530くらいだったかな。めちゃくちゃ褒めちぎられていたな。

 でも魔力の正しい使い方を覚え、短いスパンで大量の魔力を使った今のミーナならもう少し増えているはずだ。


 魔力というのは、魔力経路を通過するたび——つまり、魔力を消費すればするほどに肉体にダメージが蓄積する。

 しかし人間には自然治癒というものがある。回復のついでに魔力量も少しずつ増えていくのだ。

 魔力を使うこと自体でも魔力は少しずつ増えていく。


 【魔力回復速度上昇】と【魔力消費量軽減】で魔力量アップには最適な環境だったが、さて。


 ミーナが触れると、水晶が俺の時と同じように蒼く輝いた。

 しかし赤くなるわけではなく、そこまでだった。


「97682……計測器の上限ギリギリじゃないか!」


 だいぶ伸びたな。

 やはり本物の魔物を使った実戦経験は急速な成長に繋がる。


「すげえ……前回とは格が違う!」


「そんなこと言ったらカイトはどうなるの!?」


「そうだ、この水晶をぶっ壊すってミーナの何倍もすごいってことだもんな!」


 なんか勝手に俺が褒められているようだった。

 やれやれ、魔力量なんて他人から称賛を受けるものじゃないはずなんだがな。


 ちなみに、その後レミリアの計測結果も出た。

 94986。ミーナには一歩及ばなかったが、ほぼ互角なくらい増えている。


 魔力は他人から称賛を受けるものではないが、量が増えればできることも増えてくる。

 これから楽しくなりそうだ。

 

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