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第14話:癒しの勇者、素材を売る

「く、【空間収納】って……伝説の古代魔法じゃないですか!? そ、それを中等魔法学院生が!?」


「まあ、もうすぐ卒業だけどな」


「そういう問題じゃないです! ……王国内でも使える人を聞いたことがない。それを、15歳の少年が……ありえない。はっ! これは何かの夢なんですね。……ああ、夢でまで仕事するなんて。私も立派な社畜ですね……」


「社畜は正解かもしれんが夢ではないから安心してくれ。……そんなことより、買取してほしいんだが」


 放っておくといつまでもこんな感じになりそうなので、ちょっと急かしてみた。


「わ、わかりました! スライムが1匹と、ウルフが1匹、おやっこれは珍しいですね……ホワイトラビットが1匹。なるほど、では金貨11枚と金貨5枚ですね」


 なぜか、ワンセットでの買取金額を付けられてしまった。

 それはいいとしても、妙に買取金額が高いな。

 金貨1枚あれば普通の村人が家族で1日暮らせることを考えると、瞬殺できる魔物でこれは高すぎる。


 ちなみに銀貨は10枚で金貨1枚の価値だ。


「内訳はどうなってるんだ?」


「スライムが銀貨5枚。ウルフが金貨1枚。ホワイトラビットは貴重なので金貨10枚です。いやぁ本当に凄いですね……。まさか一度の冒険で3体も倒してくるなんて。状態もいいですし素材が全部揃っているので、文句なしの満額査定ですね」


 なるほど、素材が全部揃っているから高いというわけか。それとホワイトラビットは確かにウルフ、スライムと比べると少なかった。


 だとしても時給計算すると凄そうだな。


「ではお金を用意してきますので、しばらくお待ちを……」


「え? 3体しか買い取ってくれないのか?」


「……? ……も、もしかして、まだあるんですか……?」


 こくん。


 俺は静かに頷いた。


「何体くらいですか? ……だんだん聞くのが怖くなってきたんですが」


「うーん、何体だっけな」


「わ、忘れるほど!?」


 【空間収納】に収納している魔物の数を、一体ずつ数えていく。

 かなり面倒な作業だったが、受付台の上にはどうせ乗せきれないので普通に数えた。


「全部で452体だな。内訳はスライムが259体、ウルフが183体、ホワイトラビットが10体……って、どうした?」


 俺が真剣に数を発表していたのに、途中から受付嬢が失神してしまった。


「あ、あうううう……」


 数を聞いただけでなんでこうなるんだ?

 俺が不思議に思っていると、


「普通こうなるよね……私たちもおかしくなったよね」


「レミリアの言うとおり。これが常識ある普通の人の感覚」


 なんだか、まるで俺に常識がないみたいな言い方だな……。



 三分後。

 まだ受付嬢は起きない。泡を吹いて倒れているのをそのままにしておくのはギルドの治安的にも良くないだろうし、俺たちもさっさと売って帰りたい。


 しばらく起きそうにないので、魔法で強制的に起こした。


「はっ……私はなんて失態を! 職務中に寝てしまうなんて。夢で変な冒険者が来たけどあれは夢だったのね! そうです、あんな規格外の冒険者がいてたまるもんですか!」


 なんか独り言を言っているので、


「その変な冒険者が俺たちだとしたら夢じゃないぞ」


「はっ、夢じゃなかった!? じゃ、じゃなくて失礼しました!」


 ぺこぺこ頭を下げる受付嬢。


「そんなことよりも、買い取ってもらえるか?」


「はい、それはもちろん。ただ……これだけ高額となるとすぐにお支払いすることはできないはずです。明日までお待ちいただければ準備できます」


「ならそれで頼む。それで、魔物はどこに持っていけばいい? ここに置いても邪魔だろうしな」


「あー……そうですね。では、この奥に保管庫があるのでついてきていただけますか?」


「分かった」


 受付嬢の案内に従ってついていく。

 この間に受付に誰か来たらどうするんだ? と思いつつも緩そうな雰囲気なので多分大丈夫なのだろう。


 二千年前も平和な村はこんな感じだったからな。


「ここです。この貯蔵庫にまとめて置いてもらえれば、あとは他の職員がなんとかしてくれるはずです」


「なるほど」


 案内された場所は、大きな冷蔵庫だった。

 【空間収納】を使えないせいで冷蔵保管しているらしい。


 大量の氷が使われているが、これも非効率な詠唱魔法で作っているんだろうな……。


 ギルドの事情を俺が気にしても仕方ないので、【空間収納】から次々と魔物を取り出す。


「ちゃんと数えておいてくれ」


「はい!」


 万が一、数を間違えられても面倒なので、受付嬢が把握できるように、1体ずつ保管庫に突っ込んでいく。

 それなりに数はあったので、452体の魔物を全て集計するのには10分くらいかかった。


「それで、合計金額はどのくらいになりそうだ?」


「さっきと同じ単価で買い取るので、金貨412枚と銀貨5枚……って、私の年収より高いじゃないですか!? ええええええええ!?」


「こんなに数があるのに同じ単価なのか?」


「申し訳ないのですが、たくさん持ってきてもらっても規定の金額以上には……」


「あ、いやなんかすまん。全然問題ないんだ」


 数が多いと下げられるかもしれないと思ったのだが、この時代は逆に値上げ交渉ができるのか。

 良いことを知ったな。

本日ラスト1話は22時頃になります。

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