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第11話:癒しの勇者、弓魔法を教える

「弓では魔法が使えないって言ってたよな? でも、それは間違いだ。ちょっと貸してくれるか」


 俺はミーナから弓と矢を受け取り、誰もいない方向に向ける。


「よく見ておけ、これが弓魔法だ」


 弓と矢の両方に魔力を込める。すると、青白い輝きを発し始めた。

 剣以外の武器を使うのは久しぶりだ。

 リハビリがてら、軽くアレをやるか。


 矢を放つ。

 放たれた矢はそのまま直進する——と思いきや、急に方向を変えて、空高く飛んでいった。


「え、矢どこ!?」


「そこだ」


 飛翔した矢はグルグルと方向を変えて飛び続ける。


「そろそろ着弾させるか」


 【周辺探知】で、近くにまたウルフが近づいてきていることが分かった。

 矢はウルフの急所を正確に射抜き、爆散した。


 ドゴオオオオンッ!


 地響きが鳴り、砂煙が舞った。

 砂煙が晴れると、着弾した場所は大きなクレーターができていて、一部高熱でガラス化している部分もあった。


「え、ええええ!?」


「あれー、加減したつもりだったんだけどな。思ったよりここの地面もろいな」


「あれで加減してた!?」


 ミーナは、クレーターと俺を交互に何度も見る。


 無詠唱魔法で普通の『ファイヤーボール』の発動座標を地面の底からに変更して、矢の軌道を手動管理しただけのことなのだが。


「今のってもしかしてカイトが……? こんなの戦略魔法級よね!?」


 少し離れたところで強化魔法の練習をしていたレミリアが血相を変えて尋ねてきた。


「戦略魔法? 普通に弓でウルフを攻撃しただけだぞ」


 あまりに低レベルなこの時代だが、まともな魔法の使い手もいるってことか。


「何年か前に1000人の精鋭達が集まって今みたいな規模の魔法演習があったって聞いたことあるわ。弓ってレベルじゃないことは確かだけど……」


 え、1000人? しかも精鋭……?

 冗談だろ?


 前世の俺は3歳くらいでこの魔法を使ってたが。


「多分、わざと弱く見せなきゃいけない何らかの軍事的事情があったんだろうな」


 そうに違いない。そうであってほしい。


「当時の最高峰魔法……人類の頂点って言われたけど」


「……ま、よそはよそだ。俺たちは俺たちでまともな魔法を覚えていこう。多分その1000人の精鋭たちには深い理由があるんだ。まさか国の1000人の精鋭より俺一人の方が強いなんてことありえないしな。多分。知らんけど」


 深くため息をつく。

 暗に、練習に戻るよう促す。


「確かに、それはそうね。私も強化魔法が使えるように頑張る! 10回に1回くらいは成功できるようになったわ!」


「この短期間でその成功率なら大したもんだ。やっぱり俺の見立ては正しかった。レミリアには強化魔法の才能がある」


「本当!? てっきりこんなに練習してるのにまだできないから才能ないと思ってた。ちなみにカイトはどのくらいで使えるようになったの?」


「うん? 1回で完璧に成功させたぞ。まあ、あの時はオリジナルの強化魔法だったし、強化魔法って認識もなかったけどな」


なぜか俺の過去を聞いて、ショックを受けたレミリア。


「い、いっかい……私、練習してくる」


「うん、頑張れよ」


 俺が1回で成功させたからといってレミリアの才能は疑う余地がないのだがな。

 どうしてショックを受けているのだろうか?


「さて、ミーナ。こんな魔法だが、覚えてみるか?」


「こんなのミーナに使えるの……?」


「俺が見た感じはミーナには才能があるし、すぐに使えるようになる。っていうか基礎だしな」


「これで基礎……! ミーナがんばる……」


 よし、ミーナの決意が固まったようだ。


「じゃあ、レミリアの時みたいに魔力を介して情報を送る。これを受け取ったら、あとはミーナ次第だ」


 ミーナの手を握り、微量の魔力とともに術式を送信。


「……っ!」


 ミーナの身体が、少し震えた。

 どうやら、上手く行ったみたいだな。


「ちょっと練習する」


「おう」


 ミーナは、さっき俺が実演した魔法の練習を始めた。

 初めは失敗の連続だったが、10回くらい撃ってからは少し成功率が高くなり始めている。

 先に練習を始めていたレミリアよりも成功率が高いくらいだ。


 注意しておきたいのは、ミーナの方がレミリアより才能があるということではない。

 レミリアの強化魔法に比べれば、弓魔法の一撃は魔力消費量が少ない。

 つまり、ミーナの方が扱いやすい魔法の練習をしているので、成功率が高いのは当然の帰結だ。


 今のところ、進捗は五分五分といったところか。


 もう少し成功率が上がるまで、練習を見守ろう。

 その間に、ミーナが使う矢でも準備しておくか。


 俺は、武器の生産に使わなかった残りのウルフの骨をかき集めて、矢を量産した。

 あまり数は多くないので、適当にその辺のウルフを倒して材料を確保することも怠らない。


 1000本の矢が準備できたところで、生産は終わりだ。

 レミリアとミーナもそろそろいい感じになってきた。


「二人とも、練習はそのくらいでいい。そろそろ実戦に移るぞ」

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