第3話:異世界いっちゃいます
話数ためてたんです。
地面に円を描きその中心に魔法銀を置いて魔法を起動させる。
魔法銀から魔力が噴き出して囲っている円に注がれていき七色に光始める。
さらに円の内側には見たこともない文字列が浮かび上がっていく。
異世界間次元移動門を展開中...
座標軸を調整中...調整完了しました。
座標軸:日本
続いて時間軸を調整中...調整完了しました。
時間軸:20xx年 8月31日 午前0時00分
対象者を選別します...選別完了しました。
対象者:10代少年
言語認識及び発声言語変換式を構築中...
警告!!
魔力の大幅な減少を確認
術式の安定率が大幅低下中
工程を幾つか省略して召喚を強制実行します。
「師匠!なんかヤバい気がします。失敗したかも…」
「どういう事だ!」
カイトは事情を説明した。
「魔力が足りないのに発動するのか? いったいどうなって――」
マリクがそう言いかけた瞬間に真っ白な閃光があたりを包んだ――。
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その日、西園寺響也は深夜の学校に来ていた。同じクラスの友人が帰ってきていないという連絡をその友人の母から受けたからだ。深夜の校舎内にいることなど普通はありえないが、響也にはここにいるのではという直感があった。
その友人はクラス内では浮いているようで、いつも影で虐めを受けていた。響也も虐めの現場に遭遇するたびに助けており、クラスメイト達も響也や担任に注意されるとその場では虐めをやめたが、彼らの預かり知らぬところでは依然として虐めは続いていた。彼もこれ以上は改善が見込めないと判断し、友人に学校へ無理してくるのをやめるか転校した方がいのではとアドバイスしていたりもした。もちろん、しかるべき所に訴えることも考えており、その証拠集めも同時に行っていたが、あまり証拠に残らないような手口が多くそれは難航していた。
友人が帰ってこないという連絡はそんなアドバイスを行った日の出来事だった。響也は飛び降りや首つりでもするのではと気が気でなかった。そして校舎に入ると同時にそれは聞こえてきた。
「うわぁああああああ"あ"あ"あ”あ”」
友人の叫び声が自分の教室から聞こえてきた。急いで駆けつけると謎の円陣を前におびえる友人。
「〇▽□×◎πεΣ☆」
更に円陣の中に意味不明な言語を話す青年が立っていた。
「大丈夫か!」
響也は友人に近づいて事情を聴く。彼が言うには悪魔召喚を行って自分を虐めていたクラスメイト達に復讐するつもりだったそうだ。何とも斜め上の方向にぶっ飛んだ思考だと頭が痛くなったが、実際に召喚できてしまったらしい。今のところ悪魔に動き出す様子は無いが、周りをぐるぐると見回して意味不明な言葉を発して首をかしげている。響也は恐怖に駆られながらこの後どうすればいいか何度も何度も思考を重ねた――。
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カイトは強烈な光に包まれた。直後、自身の目を疑った。見たこともない風景と変わった格好の少年がそこにいた。どうやら自分が別の世界に召喚されてしまったらしい。魔力が足りなくても中途半端な形で発動するのだろうか? だとすればなんとデタラメな魔法なのだろう。
「け、契約をしたい!」
変わった格好の少年がいきなりそんな事を言っている。契約といきなり言われても非常に困る。
というか初めて聞く言葉なのになぜかすんなりと意味が分かる。言語認識がしっかりと効いている証拠だろう。これなら意思疎通が図れるはず……
「ここはどこだ?」
と少年に尋ねるも、なぜか少年がひきつった顔でおびえ始めた。
「きこえてるか?」
反応がないので再び声をかけると
「うわぁああああああ"あ"あ"あ”あ”」
と突然、悲鳴を上げられた。
驚いて何度も声をかける。
「おーい!聞こえてないのか?」
「もしもーし!」
「ねぇー」
そのうちに少年はうずくまってブルブルと震えだしてしまった。
「困ったことになった」
思わず口走ってしまった。何か怯えられているらしい。色々と悩んでいると奥の扉が開いてもう一人少年が現れた。もう一人の少年はこちらに慎重に近づくとうずくまっている少年の襟元をつかみ、急いで引きずり俺から距離をとった。そして俺をじっと観察しつつ少年から事情を聴き始めた。
「大丈夫か!いったい何をしたんだ?」
「あ、悪魔を召喚しちゃった…」
「どういう事だ」
「あいつらに、仕返ししたくて…本を読んでやってみたんだ。正直できるなんて思わなかった。でも藁にでも縋りたくって」
「で、召喚できたと」
「うん。だけど言葉が通じないんだ…ど、どうしよう取り返しのつかない事をしちゃった。」
カイトは彼らの話を聞いて状況をある程度理解した。
あー、そういう事ね。向こうの言葉はうまく変換して認識できてるようだけどこっちの言葉は変換されてないのか…。しかも俺のことを悪魔だとおもっているようだ。これ、どうやって誤解を解けばいいんだろうか。
悩んでいると少年たちは立ち上がって後ずさりを始めた。
「とりあえず向こうも状況を探っているのか動く気配はない。今のうちに逃げるぞ」
「わ、わかった」
や、やばい。
この状況で取り残されるのはかなりまずい。俺はボディランゲージで敵意がない事を伝えようとするも慌てていて意味不明なジェスチャーをしてしまう。
「不味いぞ、何かやろうとし始めている。二手に分かれて一気に走り抜けるぞ」
「う、うん」
ちょちょちょちょっと待ってください。本当に!あせって色々口走ったが余計恐怖を与えている。そして二人はバラバラに走り去っていった。このままじゃマズいと片方の少年を急いで追いかける。見慣れない建物など見たこともないものがたくさんあった。初めて来た世界で危険がどれ程あるか分からないが、慎重に行動できるような状況ではなかった。悪魔と勘違いされている以上、討伐される可能性があったからだ。かれこれ10分ほど走った。かなり疲れ始めている。というかこの世界に来てから少し身体が重い気がする。相手も全速力で走っている為、少しずつ疲労の色が見えた。その時、運よく相手が足を窪みに取られて躓いて転んだ。なりふり構わず追いかけていたせいでよくわからなかったが、後から駆け付けた少年のようだった。
ラッキーだ。
カイトは近づいて慎重に意思疎通を図る為に接触しようと試みた。