第9話:続・魔法つくっちゃいます
この次で終わります。
長かった!
けれども楽しいですね。
後はもっとダメ出しとかしてくれる人が増えてくれれば言うことなしです。(笑)
――結局、響也が勝手に言っていた約束の一か月を少し過ぎた。
まぁ、初めから固有魔法については教えるつもりはなかった訳なのだが…
しかし、俺から見て響也は天才だった。すでにファイアボールは完成していた。昨日の夕方、いつもの練習場所で何気なく放って見せた。
「約束の1か月は過ぎちまったけど、なんとかできたわ!」
「すごいな、ほぼ一か月で"ファイアボール"を使えるようになるとは……」
正直、ファイアボールは簡単だといったのは戦闘用魔法の中でという意味だ。これくらい余裕だという見栄を張って俺は響也に言ったつもりだった。基本的に元居た世界で戦闘用魔法を使えるような者はすでに固有魔法を創造できるレベルに到達している。そもそも、戦闘用の魔法はすべて3工程以上は必要である。3つの工程をしっかりと魔力操作できるのであればすでに魔法の扱いは完璧だと言えるだろう。
「固有魔法の作り方も教わりたいんだが……」
「ダメだ!結局、お前が勝手した約束だった一か月という期間での習得も出来なかっただろう」
俺は案の定、固有魔法の作り方を聞いてきた響也に釘を刺した。
「チッ、約束だし仕方無いか。」
正直、こんなにあっさり引き下がったのには驚いた。
「とりあえず、後は同じような感覚で他の魔法も出来るようになる。基礎魔法は誰でも使えてしかも応用が利くので非常に便利だ。イメージ次第で新しい魔法も出来るかもな」
そう言って魔法の訓練は終わりを告げた。
帰宅後、風呂に入ってこれからどうするかを考える。すでに、響也に世話になり始めて半年ほど経っている。帰る事は無理だろうと答えを出していた。その為、こちらで一生を過ごしていくことになるだろうが、とはいえ、いつまでもこの家で世話になるわけにもいかない。俺は近いうちここを出ていくことを伝えることにした。夕食後、響也にここを出ていくことを話す。響也は気にしなくていいと言っていたが、半年も世話になっていてそんな図々しいことは言えない。いずれ、世話になった恩を返せるようにこちらの世界を見て回りながら何かできないかを考えていく事を伝えた。
響也は「残念だな」と一言だけ述べて、それ以上は何も言わなかった。
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西園寺響也は今日、大勝負をすることを決めていた。1か月近い魔法の練習で分かった事とに加え、実はカイトには見せていなかった文献を見たことでその賭けをすることを決めたのだ。なぜ、文献を彼に見せなかったのか。それは、固有魔法の創造に関する文献だと思ったからだ。これを見せればカイトは秘密裏に文献を処理するだろう。
彼を半年見てきたが、自身の為に友人がリスクを冒すことを良しとしない人間だと分かった。例え、重要な書物を処分してこの家から追い出されることになろうとも、俺に危険が降りかかるならその実行を躊躇わない人物であると。
「例の石はもう一つ回収出来きたか?」
電話で確認を取る。
「はい。あれから3つほど回収できました。値打ちがあるようなものでもないそうなので、言い値で売ってくれと頼むと快く返事を頂けました」
「どのくらいの値で買ったんだ?」
「10万程です。しかし、響也様の言う通りの代物であれば数千万の価値を見出せるのではと思います」
「だろうな。そちらに伺うので用意しておいてくれ」
使用人に電話でそう言うと、急いで石を取りに行った。そして、その場で固有魔法の創造をするつもりだ。
カイトにも見せていない文献には、術の細かなやり方が書いてあった。そこには『汝の願う力を与えん』という記述まであり、最初に彼に聞いた話とこの文献の一文とが一致する。そしてその方法とは呪術的な印を地面に描き、その中心に代価を与える。そして自らの魂に望む力と戒めを刻んでいく。それが固有魔法の作成方法のようだ。
「とりあえず触媒は3つだ。内一つは魔法の使用に使うから使えない。ノーリスクで挑戦できるのは2回か……」
響也は訓練を続けていくうちにこの石が魔法触媒として使えると気が付いていた。恐らく、カイトも気が付いているだろう。だからこそこのことを黙っていたともいえる。というのも石がなくなったら俺が寿命を使って成功するまで固有魔法を創り続けると分かっているからだ。だが、響也も譲れない。友人の為に何とかしてやりたいという気持ちが強いのもあるが、根底にはこんなに面白そうなことをやらずにはいられないという気持ちも同じくらい強かった。
「さて、やるか!」
響也は固有魔法の創造を始めたのだった――。
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昨日の今日で早いかもしれないが、サクッと今日で旅立とうと決めていた。正直、行き当たりばったり感は強いが、この世界には魔物がいるわけでもない。ルールを破らなければ、余程危険な事はないだろうし、生きていく上での様々な困難は元の世界で痛いほど経験済みだ。お世話になった人たちに一人一人挨拶していく。後は、響也だけだ。しかし、昨日の夜は彼の姿を一切見なかった。少し嫌な予感がした……
荷物をまとめて出ていく準備を整え、響也を待つ。すると大きな声で帰宅を知らせてきた。
「ただいま!」
俺は、響也の元へ訪れて、今日中に出ていくことを告げた。
すると恐ろしい返事が返ってきた。
「固有魔法できたぞー!」
カイトはその一言で、すぅーっと意識が遠のきかけたのだった――。
これが終わったら長編を書きます。
しばらくは一日一話できるように書き溜めておこうかと




