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8月15日という不治の病

作者: 有坂総一郎

 昭和20年8月15日、昭和天皇の玉音放送により大日本帝国政府は”条件付き降伏”受諾する旨を国内外に明言し、3年半に及ぶ大東亜及び太平洋における戦争状態を終結させた。


 だが、国際社会という名のならず者たちはこの玉音放送による戦闘終結宣言にも関わらず戦争状態を継続した。


 満州、朝鮮、樺太、千島においてだ。


 満州においては後にシベリア抑留という悲劇を産み出し、樺太においても真岡郵便局における悲劇を産み出した。だが、千島では再武装した帝国陸海軍が必死の抵抗を試み、”敵”の侵攻を遅らせることで北海道侵攻を遅らせることに成功した。


 そして迎えた9月2日、帝都東京を眼前にする東京湾において戦艦ミズーリ上で降伏文書調印したが、”ソ連との戦争”は未だ収束していなかった。ソ連は”連合国”の占領下で帝国陸海軍が武装解除されたことを良いことに千島全島の占領、樺太の占領を行い、既成事実化を遂行していたのである。


 降伏文書調印によって正式に戦闘状態の終結が宣言され、日本占領が実施されると連合国は戦争犯罪人の逮捕に動いたのである。


 さて、ここで戦争犯罪人とは何か、考えてもらいたい。


 国際法上の戦争犯罪人とは何か? その根拠は何か?


 玉音放送を遡ること8月8日、英米仏ソの4国が「欧州枢軸諸国の重要戦争犯罪人の訴追及び処罰に関する協定」(ロンドン協定・戦犯協定)を締結。ここで「平和に対する罪」という新しい戦争犯罪の概念が登場した。


 だが、よく考えて欲しい。


 新しい概念が生まれて、それによって罪を罰するのは必要があれば現代でも行われていることだ。例えば、ネット社会での法整備がそれだ。


 だが、例で出したネット社会での法整備と罰則の整備は、法を施行した時点からの適用であり、遡って適用することはなかった。


 しかし、この戦争犯罪のそれは概念を作り出したのも国際社会という名目ではあっても、戦争勝者による自分たちの都合の押し付けでしかない。この時点で国際法というものの正当性に疑いの余地が生まれるのだが、まぁ、それを言い出したら過去の国際法も同様に不当なものになるから百歩譲って目を瞑ることとする。


 しかし、法の不遡及の原則は無視するわけにはいかない。


 何故法学的に法の不遡及の原則が厳守されるのか? そこは非常に重要であり、法の正当性を担保する用件であると言って良い。言い換えれば、でっち上げの罪で人を罰することが可能になるからだ。


 例えば、路上喫煙が問題だからと言って、路上喫煙を禁止する法律を制定して罰則を決めたとしよう、それに対して過去の分まで適用範囲となった場合、どうなるか? そう、恐らく全国民の3割くらいは逮捕され投獄されることとなるだろう。そんな恐怖世界を普通は許すだろうか?


 つまりは、そういうことである。


 昭和20年8月7日以前に存在しなかった法によって何人も裁かれることはない。


 だが、史実ではどうだろうか? このロンドン戦犯協定は東京裁判で多くに無実の人間を投獄、処罰した。A級戦犯と称された殉国七士をはじめとして東京で、マニラで、オーストラリアで、支那で多くの人間が”処理”されたのだ。


 そして、サンフランシスコ講和条約の調印によって連合国との正式な戦争状態終結を迎えた。


 当時の日本は今と違い、戦争犯罪人を殉国者、殉難者として捉えていた。


 サンフランシスコ講和条約発効直後の昭和27年5月1日、戦犯の国内法上の解釈についての変更が通達され、それによって、戦犯拘禁中の死者はすべて「公務死」、戦犯逮捕者は「抑留又は逮捕された者」とされた。


 A級戦犯の「名誉の回復」について、昭和28年7月9日の厚生委員会において、社会党の堤ツルヨが「戦犯で処刑されたところの遺族の問題であります。処刑されないで判決を受けて服役中の留守家族は、留守家族の対象になつて保護されておるのに、早く殺されたがために、獄死をされたがために、国家の補償を留守家族が受けられない。しかもその英霊は靖国神社の中にさえも入れてもらえないというようなことを今日遺族は非常に嘆いておられます。」「当然戦犯処刑、獄死された方々の遺族が扱われるのは当然であると思います。」と答弁した。


 そして少し時が経ち、昭和53年に「法務死」とされた昭和殉難者を”事実上の戦死者”として靖国神社に合祀することとなったのである。


 だが、現代に戻るとどうだろうか?


 名誉回復され戦死扱いとなっている彼らを犯罪者扱いし極悪人が如く扱う所業、そしてそれを当然のことと考える無知にして無恥な輩の跳梁跋扈することには閉口する。


 そして、彼らの苦悩や苦闘を考慮もせず、ただ敗戦、ただ無能と論議するその様にはあまりにも礼を失し、死者への配慮も足りぬそれではないだろうか?


 まして、平和が大切だなどとどの口で言うのであろうか? 今、安全な所で駄弁っている連中に戦前戦中の指導者たちの同じものを背負わせてどう結果が変わるのか、非常に興味深いことと思わないだろうか?


 後出しじゃんけんでモノを言うのは簡単だ。だが、何のために後悔先に立たずという言葉があるのだろうか? そして、彼らは過去の経験から何を学び語っているのか?


 時系列も理解しておらぬ上に、戦後史において行われたことさえ理解せず、ただそこにあるのは平和思想、反戦思想、戦前否定、それだけだ。


 そんな浅薄な輩が8月15日という日を前にしてボウフラが如く涌き、そしてそれに負けず劣らず無知にして無恥な輩が群がるという毎年恒例のおぞましい光景にこの国の未来を見る様だ……。

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令和のクソガキはツイッターとかで都合のいい情報しか聞かない上に、昔のことをろくに調べようとしない。 なぜなら歴史は過去の記録としか考えてないから。 理解しようとしないから。 現代価値観そのままで考える…
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