契約成立
「追いかけなさい。その娘は必ず生け捕りにしなさい。殺したらだめですよ。」
複数の警備兵に追われながら、ブルーアイの小柄な黒髪ボブの美少女が路地裏を走る。
「はあはあ、しつこいな。報酬通りに働いたのにお家にかえしてくれないなんて。契約違反だわ。」
土地勘なく、闇雲に走ったせいか少女がたどり着いた先は行き止まりだった。
警備兵のリーダー格の狐顔をしたいじわるそうな面の青年がムチをふるいながら言った。
「足の速いお嬢ちゃんでしたが、ここまでのようですね。貧民街出身に人権なんてないのです。痛い目あいたくなかったら、諦めてダルナモ様の奴隷になりなさい。」
「ひっひどい、私の転生前の国では人類皆平等だったのに。」
「ふう、お嬢ちゃんも貧民街ありがちな異世界転生者ですか。めざわりなんですよね、生まれた時から何かしらの能力持ちでチートなんて。でも運が悪かったようですね。この国では異世界転生者に乗っ取られないように、力を弱体化させて植物が一切育たない貧民街に落とすか、奴隷化するかで対策済みなんですよ。」
「力の均等を考えたらある意味平等では?覚悟をお決めなさい。」
リーダー格の男の合図と共に一斉に警備兵達が少女を捕まえようと襲いかかる。
「くっ、これまでかしら。」
「やめろ!?婦女暴漢は好かん。」
屋根の上から人が降ってきて、警備兵達を見事な肉弾戦で無双した。
「馬鹿な、銃が効かないだと!!バケモノか。」
「その通り、俺は痛みを一切感じないバケモノさ。」
銀髪の長身の青年は自嘲気味に笑いながら言った。
「お兄さん、かっこいい!」
少女はキラキラしたおめめで青年を尊敬の眼差しで見つめた。
「かっ、、かっこいい!?」
青年は照れてしまった。
「助けてくれて、ありがとう。私はリシェ。あなたは?」
「俺はスー。バケモノと言われたが賞金稼ぎで生計を立てている。こうみえて賞金稼ぎ歴10年、安定した職持ちだ。そして、彼女募集中だ。」
スーの謎の彼女欲しいアピールをリシェは軽くスルーして
「そうなんだ!お兄さん強いんだ。良かったら私と契約しない?私のボディーガードとして。」
「そうか、強いか!?いいよ!報酬は?俺のかの、、」
「報酬はこれ!」
リシェがスーの胸に手を当てると弾丸痕の傷がみるみる塞がっていった。
「大胆だな!ん?キズが塞がってく。」
「あなた、いくら痛みを感じないチートでもこのままだと出血多量で死ぬところだったわよ。」
「こんな傷、寝てたら治るよ。」
「今までどうやって生き延びてきたのか謎だわ。
うーん、あなた無茶しすぎて心配だわ。そうだ!私、あなたの賞金の稼ぎの手伝いをするわ。
もちろん、報酬は半分ずつちょうだい!」
「お嬢ちゃんの助けを借りなくても俺はやっていけるけど、俺の彼女になりたいのかな?美少女だし、まあ
嫁は中身も大事って言うから、しかと見届けよう。いいよ!俺のことはスーって呼んでね。」
いきなり彼女候補から嫁候補へとスーの怖い思惑をリシェは聞かなかったことにして2人は握手した。
「契約完了だね。よろしくね。スー!」