序章~開戦直前~
練達が目を開けるとそこは地上から数百メートルの位置の魔方陣の上だった。
下には山や川、町等様々なものが見える。
その高度ゆえにか何人か腰を抜かしているものもいた。
「ここが君達の戦場となる場所さ!山、川、都市、草原等の様々な地形があるから頑張って自分の得意エリア見つけて戦ってね!」
アンノウンが声高らかに語る。
してやったりの顔が少し何人かを苛立たせるが、なにかして殺されるのは嫌なので誰もなにも言わなかった。
「さて、ここからのゲーム進行は僕の眷属にでも任せようかな」
そういいアンノウンが指を軽く鳴らすと新たな魔方陣が現れ、なにかが現れる。
それは人間ではない。
体は細身の執事服を着た男性であったが、頭は黒色の毛を持つ山羊のものである。
獣と人との合わさったそのアンバランスさは参加者達の不安を煽るには充分だった。
「こんにちは、私はアンノウン様の眷属が一つ、ゴートと申します。ここからは主様に変わりましては私がこのファーストゲームのルールを説明いたしましょう」
ゴートは鮮やかな一礼をする。
「じゃあ、あとよろしくね!」
そう言いアンノウンはどこかに転移したのか消えていった。
「ファーストゲームのクリア条件は総人数現在九十九人が七十七人まで減らすこと。手段は問いません。主様にいただいた能力を使うのもよし、使わずに自らの肉体や頭脳を使い殺すのもよし。あなた方の自由です。この広大なマップで戦ってもらうのですが、まずあなた達には能力の確認をしていただきましょう。皆様のポケットに一枚のプレートを入れさせてもらいました。まずはそのプレートを取り出し、能力と念じください」
ゴートにそういわれ、練達はプレートを取り出し念じる。
「うわっ!?」
念じた事で出現した情報がプレートに表示される。
『名前・鋼神 練 性別・男 年齢・十七歳 権能・須佐之男』
「ご覧いただけたでしょうか?あぁ、ちなみに情報は念じた本人しか見えないのでご安心ください」
ゴートの言葉に警戒していた参加者はホッとした顔をする。
「どのような能力かは主様に力を与えられたときに夢という形で見ているので大丈夫だと思いますが、火の神なら火を扱い、戦いの神なら武芸に優れた力が与えられる恩恵を受けることが出来ます。……あぁ、そうそう。その異能は所有者が使いこなすことで進化、技能も増やすことが出来ますので是非頑張って下さい。さて、以上で説明は終わりますが質問はありますでしょうか?」
「あ、あの……技能っていうのは?」
「簡単にいうなら能力から派生したもの……その時が来ればわかりますのでご安心を。他に質問のある方は?」
ゴートが周りを見渡す。
今度は先程のように質問を入れてくるものはいなかった。
「無さそうですね。それでは今からあなた方を戦場にバラバラに転移させます。それではご武運を」
ゴートがアンノウンがやったのと同様に指を鳴らすと練達の意識はブラックアウトし、体も転移していった。
「さてはて、私もここから退散し主様の元に馳せ参じなければ」
そういうとゴートは練達と同じようにその場から消え、空中に展開されていた魔方陣は消えていった。