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序章~呼び出された学生達~

 それは鋼の司る神なり。

 時に暴雨を司り、時に大蛇を打ち倒し、時に太陽すらも隠す。

 その暴虐さゆえに高天原を追放された神であり、八岐大蛇を打ち倒した英雄である。

 その神の名は建速須佐之男命たけはやすさのおのみことなり。


 「痛っ……なんだこの頭痛は……それにここはどこだ!?」


 激しい頭痛に高校生の少年、鋼神こうがみれんが目を覚ます。

 痛みに耐えながら周囲を見渡すと、自分の周りにたくさんの制服を着た中学、高校生の子供達が寝かされている。

 そして、練が今いるこの場も普通ではなかった。

 どれだけ見渡そうにも果てのない白い空間。

 地面だけは認識できるが、それ以外の壁も天井もなく、奥行きは際限なくただただ空間が広がっていた。


 「なんなんだよここは……俺はさっきまで家にいたはずじゃ……」

 

 「……うぅ」


 練が自分がここに来る前の事を思い出そうとすると、隣で寝ていた少女が練と同じように頭を押さえて、苦しみながら体を起こす。


 「君、大丈夫?」


 「は、はい……あれ?ここは?それにあなたは?」


 「俺は鋼神こうがみれん。……悪い、俺もさっき目が覚めたばかりでここがどこかわからないんだ」


 「そうですか……申し遅れました。私は天鳥あまとり智花ともか。天上ヶ丘学園の二年生です」


 座っていた体を練の方に向け、自分より目線が上の練の目を見ながら智花が話しかける。


 「俺は高天原高校の二年だ。同い年なんだな」


 「そうですね。鋼神さん……私たちこれからどうなるんでしょうか?」


 智花が不安そうな表情で質問する。

 その表情に練は少し見とれてしまう。

 智花を一言で言ってしまえば、深窓の令嬢をイメージさせる美少女である。

 腰まで伸びた艶やかな黒髪は黒檀のように美しくあり、きめ細かい綺麗な肌はとても白く、それでいて不健康そうには見えない。

 ぱっちりした目はまるで見るものを吸い込んでしまうようであった。

 練がそんな智花への第一印象は人形のような少女だ。

 整った顔や凹凸のはっきりしたスタイルはまるで美術品のように見え、もしこのまま話をすることなく見つめ合うだけなら、練は智花を近寄りがたい人形のような存在と認識し話すことはなかっただろう。


 「わからない。少なくともこのまますんなり帰れるとは思わない方がいいかもしれないな」


 「そんな……」


 智花の眼に涙が溜まる。

 第一印象とは真逆の智花に練は狼狽える。


 「わ、悪い。配慮が足りなかった……な、泣かないでくれ」


 「す、すいません。鋼神さんは悪くないですよ。ただ帰れないと思ったら勝手に涙が……」


 そうして二人が話していると周りで寝ていた人が続々と目を覚まして頭を抑えながら上半身を起こす。

 そして、全員の目が完全に覚めると、なにもないこの空間にとても大きな声が響く。

 

 「やぁ!皆さんこんにちは!僕はアンノウン。君達の世界で言うところの神にあたる存在さ!」


 全員が声のする所をみると一人の少年が立っていた。

 きらきらの輝く金髪にサファイアのような青い瞳、見た目は十から十三才程の少年に見えるがその姿は既に完成した美術品のようであり、もはや人間とは別の存在であると練達は認識してしまうほどだった。


 「うんうん!皆いるみたいだね。さて、多分皆はここがどこか、なぜ呼ばれたのか気になるよね?それはね。君達にあるゲームに参加してもらいたくてここに呼んだのさ!」


 「ゲ、ゲーム?」


 呼び出された一人がアンノウンの言葉に反応する。


 「そう!ゲーム!内容は僕が出す試練を君達合計百人が何人まで残れるかのデスゲーム!そうだね……ファーストゲームは君達の人数が一定まで減るまで殺しあってもらおうかな?」


 アンノウンの言葉に一同からざわめきが起きる。


 「ふ、ふざけるな!俺たちがなんでそんなことしなくちゃいけないんだよ!」


 先程とは別の男子生徒が声を荒げて発言する。


 「うーん。そんなこと言われてもここに来た以上戦ってもらわないと困るんだよね?」


 「そんなこと知るか!俺達をとっとと元の世界に返せ!」


 男子生徒の乱暴な言い方にアンノウンは浅くため息を吐く。

 男子生徒の言い分はもっともである。

 いきなり知らないところに連れていかれ、殺し合いを言い渡されて納得出るものなどいない。


 「神だかなんだが知らねぇが、とっとと解放しろ!このクソガキがぁ!」


 男子生徒が着ていた制服の上着を脱いでアンノウンに投げつける。

 対するアンノウンは投げつけられた上着を受け止め残念そうな視線を男に向ける。


 「……なるほど、どれ程君に言葉を尽くしても君には届かないってことかな?」


 「だからなんだよ!!」


 「はぁ……もったいないからあまりしたくないんだよなぁ。でもこのままじゃ他の子も便乗しかねないし見せしめは必要かな……」


 「おい!なにいって……」


 次の瞬間、男子生徒はそこからいなくなった。

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