三者面談(その4)
明けて翌日。5人組で昨日の三者面談の報告をし合った。
「三者面談、どうだった?」
というよくありがちな脇坂さんの問いかけから。
僕は前述のとおり。大学、という意味では県立大のことを。
脇坂さん、遠藤さんは、それぞれが進みたい分野の学部がある近県の大学についての相談をした旨。
太一は、弁護士ならば法科大学院のことも考え、隣県の国立大の法学部の相談を。
そして、さつきちゃんは。
「関城大学の家政学科の推薦入学を目指したらどうか、って言われたよ・・・・」
「関城大って、大阪だよね・・・」
遠藤さんが言う。・・・・大阪?僕らの県からはかなり遠い。しかも、大阪って言ったら僕らの県のような地方都市とは違い、大都会だ。さつきちゃんは遠藤さんの問いに続けて答える。
「うん・・・おばあちゃんの母校なんだけど・・・・
家庭科部の顧問の平岡先生からもその気なら推薦するよ、って何度か言われたことはあったけど、熊野先生も同じ意見だって・・・わたしがやりたいと思ってることに一番近い学校だって・・・おばあちゃんの母校でもあるから、絶対一生懸命勉強しようっていう気持ちになるから、って・・・」
「大阪かあ・・・」
太一はそう言いながら、僕の表情を少し気にしてくれている。
気にならない、と言えば嘘になる。お互いの物理的距離が離れれば、縁も薄れるような気は正直する。けれども、ここへきて、僕の口がまた自分の意思ではない何かによって動き始める。
「そうだよね、みんなそれぞれ離れてた方が、浮かれずに勉強に集中できる、ってことだよね」
僕の発言に皆、驚く。さつきちゃんも驚いている。一斉に、僕を見る。
「これは、仮に、の話だけど。男女が結婚する場合の話と思って聞いて。結婚するためには男子でも女子でも、人生の志や経済基盤といった、これからの人生を歩むための土台が必要だよね。それがないと、どんなに好き合ってたって、‘惚れた腫れた’だけの絵空事だよね。縁ある2人が学業を終えて仕事も得た年齢で初めて出会ったんならいいけれども、まだもっと若い時に出会う、ってこともあるよね。
その若い2人が中途半端に大人な時期・・・具体的に言うと、大学時代がそうだと思うんだけど、その時期に近くでべったり一緒にいて浮かれてしまって、将来生きていくための基盤づくりに失敗したら・・・せっかく若くして頂いた縁を無駄にしちゃうよね」
みんな、シーンとして聞いている。
「だから、将来に備える期間、離れて頑張る、っていうのはありなんだと思う」
さつきちゃんが、静かな笑顔で僕の‘自動的演説’に答える。
「うん・・・・みんなと離れ離れになるのはちょっと寂しい気もするけど、今かおるくんが言ったことがほんとなんだって、わたしも思う」
そして、体育会モードでない状態なのに、さつきちゃんが可愛らしく右拳を振り上げ、ボリュームを落とした声で‘檄’を飛ばす。
「受験までみんなで、がんばろっ!」
おっ、やってるな、っていう感じで5人組の周囲の生徒も、ほんわかした雰囲気で笑っていた。




