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10話目

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ザジによると、やはりフールの街は首都からかなり離れた場所だそうだ。

年中この寒さ、生活の厳しさから最果ての街とも呼ばれる。

ルルアが妙に活気がない理由を問うと

「この辺境で物資が上手く行き届かない、というのもあるんだがな」

そこでザジは周囲をなぜか、確認すると声を潜めて

「実はな・・。」と話し始めた。

と、店の外で馬の走る音が聞こえてきた。大きな声が聞こえた。

「A区に住む者は作業を直ちに作業をやめ、広場に集合せよ!!」

「っと」ザジは話を切り上げ、椅子から立ち上がった。「説明するより、実際に見たほうが早いだろ」とザジはルルアたちを見ると、

「これだけは言っとく、この街はヤバイ。目立つな。広場に行けば解る」

そういい残すとザジは店から出て行った。

ユナは心配そうにルルアを見つめた。


広場にはたぶん、ここの住人が全てあつまっているのだろう。大賑わいだった。

この分だと目立つことはなさそうだ。

ユナにはフードをしっかり被っておくことを伝える。ユナがうなづいて答えた。

ルルアは身体強化をして視力を強め、前方に目を向けた。

そこには悲惨な光景が広がっていた。

そこには2,3人の人が公開拷問というのだろうか、鞭で打たれていた。

体からはいたるところから血が流れ、苦悶の声を上げる。

兵士が無表情に鞭を振るう。

側では別格に高級そうな服をした男がいた。腹はでっぷりと太り、欲の塊といった感じだ。鞭を打たれる人をみて、ニヤニヤとしている。

ルルアはふと、自分が暗い何かに包まれる気がした。

驚くほどそれはルルアに馴染む。

それは心地よくてルルアは身を任せたくなる。

こういう欲にまみれたものが居るから魔王は作り出されるのだ。

オレの力を使えば・・・。

「ルルアさん!!」ユナが必死にルルアをゆすっていた。

暗い何かがすっと消えていく。

蒼穹の瞳がこちらを見つめる。「大丈夫ですか」

ルルアは何のことかわからず「何かあった?」と問いかけるとユナはその場で唖然としていた。

そして、言おうか迷ったようだが決心したらしく「ルルアさん、怖かったです」とだけ言った。

「そ、そうか」たしか暗い何かが自分を覆ったような気がする。

周り見ると自分を中心に円がぽっかりと空間が出来ていた。

「目立ってますよ、いったん離れましょう」ユナがルルアにささやく。

仕方なくルルアはそこから離れることにした。

が、

さっきの欲にまみれたでっぷりとした男がこちらを見ていた気がした。

(見られたか・・)

ルルアは無意識とはいえ、自分の失敗に思わず舌打ちしたい気分だった。

行く当てもなくザジの武器屋で待機させてもらうことにした。少し経つとザジが帰ってきた。

ルルアが居るのを見ると「お前な!!」と掴みかかってきた。

「目立つなって、言ったろ!!!」ルルアがされるままになっているのを見て、反省を見たのだろう。

ルルアを放すと重くため息をつく。「お前らはここから、でていった方がいい。出来るだけ早く」

ここで、あいつに目をつけられたら、タダじゃすまない。

ザジは憎憎しげにはき捨てた。

「あいつって誰ですか」ユナが聞く。

ザジはユナを優しげな表情でみると「嬢ちゃん、見たか。鞭打ちされヤツの側にいた、太ったやつの事だ」

「あいつはここの領主様だ。さっき話し途中で止めたろ。たしかにここは物資が届きにくい辺境の地ではある。だが、ここの住人に活気が無いのはあいつのせいだ。

例えば、あいつが高い税金をかける。どんなに稼いでもすべてとられる。それに、だ。あいつはとんだ変態やろうでな、街で良いやつを見つけたら問答無用で自分の城にお持ち帰りだ。でも、逆らえない。あいつに逆らったら、自分だけじゃねぇ、近い人間諸共、虐殺だ。

助けもない、周りに他の街はない。他の街に行くためには雪山を超えるしかねえ。でも、その装備を整える事すらままならない。その日、生きるために精一杯だ。だから雪山を越えれるのは、領主様に味方する金持ちどもだけってことだ」

ま、そういうことだ。ザジは話を突然切り上げた

。どこか、無理やりな気もしたがそこには触れなかった。

「解りました、ありがとうございます。もう、ここからでます」

そういうと、ほっとしたようにザジは「そうしたほうが良い」と棚をごそごそし始めた。

「ほら、やるよ」ルルアに肩下げ袋を渡してきた。

「?これは」ルルアが受け取り、尋ねると少し自慢げに「マジックボックスだ」ザジは言ってくる。

マジックボックスとは魔法道具の事だ。

中には空間魔法がかけられており、外見の何倍入れる事ができるのだ。

ルルアも空間魔法は使えるがその空間魔法を定着させる事がかなりの難易度でルルアも出来ない。

ルルアも魔王時代、あれが欲しいと何度も思ったものだった。

つまり、魔王であったルルアもできないのだから、この袋がどんなに貴重で高価なものか、解るというモノだ。

「いや、でも」ルルアが返そうとすると

「もう、オレにはここからでる気概がない。いつか見つかって没収されるよりもお前らに託したほうが良い。いらないなら、売ればいい。良い金になる」そういうとザジはそれを受け取らず、椅子に座って武器を調整し始めた。

「・・。ありがとうございます」ルルアは頭を下げた。見るとユナも下げていた。

こんなに良い人も居るのだ。ルルアは哀しくなった。

なぜ、こんなにも人には違いが出てきてしまうのだろうか。

ふと、ユナがドアのほうを振り返った。

「どうした」ルルアが聞いてもユナは「何か、嫌な感じが・・」と言ってルルアに隠れ、ドアの方を見た。

ガチャリ、とドアが開いた。

入ってきたのは兵士。

部屋の中に数人の兵士が威圧するようにルルアたちを囲む。

最後に入ってきたのは先程のでっぷりと太った、領主だ。

兵士が無慈悲に告げる。

「これはユイマールさまのご命令だ。ここにユイマール様の買われた獣人の奴隷がいる、こちらに渡せ!破れば死刑だ!」



 

次回は九月十日(水曜日)投稿予定です。

今後ともよろしくお願いします!

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