9話目
どんよりとした空気が漂っていた。
フールの街に入る手続きを行うため、ルルアたちは列の中にはいった。
手続きの流れを見ていると、街の住人である証明書を見せて入っている、ということが解った。
もしかして、アレが無いと入れないのか!?知りませんよ!!とルルアとユナが話し合っていると
「おい、そこの、お前らの番だ。早くしろ」と兵士の声。
知らない間にルルアの前の列は消化されていたらしい。
「あ、すいません。自分たち、旅人なんですけど。そういう証明書は魔物に襲われてしまってそのときに・・・。」ルルアがそういうと、
「・・・。まあ、それは新たに発行できると思うが、そんな軽装備でここまで来たのか?」兵士が胡散臭げにみた。
ルルアは自分の服装に目をやった。
タダの長袖、長ズボン。ユナにいたってはマントの下はほとんど布切れだ。
・・・・。た、たしかに。
「え、とあの、魔法で、ちょいっと・・」
「そんな怪しげなやつ入れるわけにいかん!」
「あの、彼は高位の魔法使いなので、魔法で対処できるんです。ダメですか?」ユナが兵士をじっと見つめる。
「・・・・・・。そ、そうか。うむ、解った。こっちだ」そういいながら、兵士は頬を緩めてユナに視線を向けたままだ。
・・・・。何だろう。
この、不条理な・・。
「はやく、行きますよ。ルルアさん」
「・・・はい」ルルアはユナの後についていった。
結果的にいうと、かんたんに入ることが出来た。
恐るべし、ユナパワー。
しかし、城壁のなかも、あまり城壁外と変わらなかった。
変に活気が無いのだ。
商業も栄えているわけではないが、無い訳でもない。市場のようなものも在った。これだけあればもう少し活気が在ってもいいはずなのだが。
とはいってもユナは目を輝かせていたが。
そういえば、ユナは奴隷だったからな。自分と同じく、こういうところは初めてなのだろう。
「すごいですね、ルルアさん」無邪気に笑いかけてくる。
「そうだな」
「見るだけでも、楽しいです!」
「・・・。そうだな」あれ、なんかお金持ってないおれが悪いのか!?仕方ないだろ!!
そんな感じにだらだらと市場を一周し、本腰を入れて情報を仕入れることにした。
どこも店はすいているので、近場にあった武器屋にに入ることにした。
中はいろいろな武器が飾ってあった。中にはこれ、持てないだろ!!と突っ込みたくなるサイズの武器まである。
ルルアがその武器の前で立っていると「それ、重いし、でかいし、使えないぜ」と声が聞こえてきた。
声の方向を見ると、がたいの良い職人風の男がたっていた。
50歳位だろう。が、雰囲気が歳を感じさせない。
「いや、買おうとしてるわけじゃないんです」ルルアがそういうと
「遠慮せずにいいぜ。これ、かっこいいだろ」にやりとして
「オレの名前はザジ、だ」と握手を求めてくる。
「ルルアです、」とルルアがザジの手を握った瞬間だった。
ザジが手にものすごい力をかけてきた。お返しにルルアも本気で力を入れるとザジは驚いたように「お前、強いな。」と感嘆の声を上げた。
どうやら、自分はためされていたらしい。
ルルアが手を離すと「気に入った、タダ値同然にしてやる」と言う。
「いや、こんなごっつい武器は買うつもりは無いです。すいません。というよりもお金持ってませんから」
「?じゃあ、何のようだ。お前、よそからの人間だろ?」目を丸くさせるザジは少し愛嬌がある。
「ちょっと、ここら辺の情報が欲しくて」
「ああ、ー。お前、そういうやつか。ま、いいぜ。俺の気に入ったヤツだしな」短髪の頭をがしがしとかいてザジは、で、何が聞きたい?と店内の隅にあった椅子に座った。
「まず、フールの街ってどこら辺にあるんですか?」
「・・・・・。お前、どうやってここに来たんだ?」
デスヨネー。